第14章-6 初心(ウブ)と少女とチェーンソー
正造はトランクに今まで出した武器を丁寧に仕舞いながら、黒のスーツに付いた泥を払いながら立ち上がる。
「あの……これ受け取れません」
ジュリは胸に抱いた深紅のチェーンソー抱いてぽつりとつぶやく。そして、胸に抱いたたまま、ジュリはそのチェーンソーを正造に向かって返そうとする。
「私、チェーンソーの使ったことないですし、あとこれ重たすぎます……」
ジュリはそのチェーンソーの重さのあまり、両手で支えてやっとであった。
中型程度の大きさのチェーンソーとはいえ、正造が様々な改造を施しているためにその重さは20キロを越していた。
「……それに、私には母さんか残した武器がありますから」
ジュリは先ほど地面に叩きつけられたせいで落としてしまった自身の武器を指さしながら答える。
ジュリから少し離れた場所に落ちた白銀のクロスボウを、正造は拾い上げて残念そうにため息を吐く。
「……残念だが、このクロスボウはもう使えんよ。さっきあの化け物に掴まれただろう? 軸は曲がってるし、弦も切れかかっちょる」
「え!?」
ジュリはチェーンソーを一端地面に置くと、正造からもぎ取るようにクロスボウを受け取る。
正造が言ったとおりクロスボウの軸は大きく曲がり、弦もギリギリ切れていない状態であった。
「これ、母さんの形見なのに……」
「まあ、だから護身用にわしからbのプレゼントを持っておけ。拳銃程度じゃ、さっきのやつの足止め程度しか使えんからな」
「……ありがとうございます」
ジュリは母の形見のクロスボウが壊れたことに気落ちしながらも、正造に礼を述べる。
正造はそのジュリの言葉を聞いて、二カッと笑うと頭を再度くしゃくしゃに撫でる。
「まあ、これはこれで良し、と」
ジュリの頭を撫でるのを止めると正造はファリスが去っていた藪に目線を送る。
地面や藪の一部に、黒に近い緑色の体液が点々と標のように続いていた。
「じゃあ、今度はこちらが化け物どもを追う番だな。 ……と、その前に」
正造は頭蓋を失っても、助けを乞いながら未だに動き続ける女性を見つめる。
少しの間、同情を込めた視線を送ると、雪江に向かって合図を送る。
「罠に使われた成れの果てだな、いつ見ても気分が悪くなるわ。 ……ばあさん、あの子を眠らせてやれ」
正造吐き捨てる様に言うと、先へと歩き出す。
雪江は黙って頷くとまた女性の体に向けて数発、バレットM82A1の弾丸を撃ち込む。
3発の重い音が響いた後、そこには頭がなくなり、胸から血が吹き出た、人であった何かが残された。
そして先ほどまで勢いよく振られていた右手はゆっくりと動きをなくし、助けを乞う声も止むのであった。