2. 囚人番号003
今回は説明が多くなってしまい、ほぼ八尾氏の話になってしまいました。すみません。次回も説明が主になってしまうと思います。
目を覚ましてから自分の状況を理解するまで、かなりの時間が掛かった……。
気がつくと洸輔は独房の中に入っていた。コンクリートで囲まれた部屋に鉄格子、一体なぜ自分がこんなところにいるのかと洸輔は激しく混乱する。
空調設備など整っておらず、鉄格子から冷たい空気が入り込み、コンクリートがそれを逃がさない。そんな環境の中、着ている服が変わっている事に気がつく。迷彩服だった。動きやすさを重視した為か、布は非常に薄く、これが一層寒さを感じさせた。右腕辺りに縛り付けられた布には『003』と刺繍されている。一体何の番号だろうか。その疑問はすぐにハッキリとした。
「おい、003番。目覚めたなら早く牢から出るんだ」
鉄格子の先から一人の男が声を掛けてくる。自分が呼ばれていると自覚するまでそう時間はいらなかった。洸輔は慌てて鉄格子に近づき、小さな扉に手をかけた。男の手によって鍵は既に開錠されており、重い格子がゆっくりと開く。錆びれた金属の音が耳障りだった。
洸輔の横にはもう既に人が並んでいた。その人数は洸輔を含め十人。みな同じ迷彩服を身につけているが、腕に縛り付けられた布には『001』から『010』までの番号が順に刺繍されていた。
取り付けられたドアが開き、一人の男性が中へと入ってきた。呆然と立ち尽くす洸輔たち十名の前で立ち止まり、こう告げる。
「皆さん、イマジナリティへようこそ。わたくしはこの監獄の看守長を務めさせて頂いております、八尾 銀河と申します。以後お見知りおきを」
イマジナリティという意味の分からない言葉と監獄という言葉の二つが引っ掛かる。十人は首を傾げたり舌打ちしたりと反応は様々ながら気にはなっているようだった。洸輔が問う。
「イマジナリティってのは一体なんだ? それに監獄? 俺は罪を犯した覚えはないしどういうわけか説明してくれ」
「おっしゃるとおり、あなた方は今どういう状況か理解できていないと思われます。ので、簡単な説明をしたいと思います。
まず、あなた方は『こころの大樹』の監視下に置かれており、常に行動を監視する為にしばらくはこの監獄で過ごしていただきます。監獄とは言ってもかなり厳しい生活をしろと言っている訳ではありません。BPを使えば優雅な食事を行なう事も出来ますし、大浴場もございます。大きな庭もありその庭でスポーツをするなり日光浴をするなり自由に行動していただいて結構です。
ただ、そう言った行動全てにBPが必要となります。BPをどのようにして手に入れるか、と言うのは後ほど、時が来たれば伝えたいと思います。
次に、イマジナリティについてお話したいと思います。わたくしはこの監獄の看守長だと先ほど伝えましたが、それは少し間違いです。この監獄、いや、この空間を創り出した創造主こそが私なのです。いわばイマジナリティは私が現実世界とは別に作ったもうひとつの世界。あなた方が生きていた世界とは違う別の空間なのです。理解できましたでしょうか?」
十人は口を開け、呆然としていた。全くもって意味が分からない。唯一分かるキーワード、『こころの大樹』。この言葉には十人全員が反応を示したが、他は全く理解出来なかった。
「おや? 理解出来ない、といった表情ですね。まぁ無理もない。ではまずは、“ゼウス”について説明していきましょうかね」
八尾は口角を上げ、ふふっ……と笑みを浮かべた。