序章
序章
白い壁に囲まれた四角い部屋の中央に二人の男が立っていた。
白い部屋の壁は外部からは透けて見えるようになっており、部屋を囲む様にして何万と言う観客が中央の二人に視線を集中させていた。
中央の二人の男。一人はまだ幼さの残る二十歳にも満たないであろう少年、もう一方は筋肉が膨れ上がり、四肢がまるで木の幹の如く太い屈強な身体の男である。
今日もまたこの空間で武道会が行われようとしていた。と言っても殺し合う訳ではなく、一方が戦闘不能になった時点で勝負は決まる。
だが、殺してしまってもルール上は問題ない為、稀に死者が出るがそこまで問題視はされていなかった。
そしてこの筋肉質な男性は四度出場し、四度の戦闘全てで相手を死亡させていた。また今日も人が死ぬと思うと、観客は皆、体を震わせていた。人が死ぬ恐怖ではない、嬉々とした感情を抑えきれないのだ。
早くしろ、と言うブーイングを背に受けながらスーツ姿の男がマイクを手にとる。そして、部屋の内部のスピーカーを通して抑揚の無い声で二人の男に言った。
「スタート」
直後、轟音が響き渡り、白い部屋を中心に置いたドームで何万もの観客が沸き上がった……。




