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エルフは筋トレ本を拾った。 →聖書として崇めた。→筋力が上がった。  作者: 青桐
1章 筋肉エルフと少女勇者、時々、学者

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研究所にて

「明日、桜ちゃんが最初にこの世界に現れた場所、瘴気の森に行きましょう」


研究所に戻ってきて、一言目にサマーが言った。


「はい」

「我も構わんぞ」


桜は、はやる気持ちを抑えながら返事をした。

メロスにとっては、桜さえいいのであれば、いつでもいい。

サマーは2人の返事によかったと笑った。


「僕もご一緒していいかな?」


高めの声が研究室に響く。

3人は身構えながら、声のした机の方を見た。

そこには、10センチくらいの大きさの少女がいた。小さな可愛い女の子だが、体のバランス的には、16歳くらいに見える。もちろん160センチくらいに拡大すれば、だが。

今の瞬間まで、3人はまったく気がつくことができなかった。


「何者だ」


メロスが少女に尋ねる。


「小人?

すっごい可愛い」


桜は目を輝かせて呟いた。


「気をつけろ、桜。

奴が声を出す瞬間まで、全く気配がなかった。瞬間移動を使うのかもしれん」


メロスが鋭く警告する。


「まさか、貴方がここに来るとは思わなかったわ」


サマーが桜を隠すように、前に出た。


「君たちには、僕の部下が世話になったらしいからね。

上司として、お礼をしないわけにはいかないだろ?」


小さな少女から、同じ顔のより小さな少女が、たくさん湧き出てくる。

その数が増えるほど、少女は小さくなっていく。


「分裂?」


「ええ、そういう力よ。

アメーバーみたいな」


サマーが桜の呟きに答えた。


「もう少し、可愛い言い方にしてくれないかな?

アメーバーはあんまりでしょ」


同じ顔をした少女たちが苦笑した。


「あなたでもそういうのを気にするのね。

任命官のNo.4なんて、化け物の代名詞でしょうに」


「やたらと敵対的だね。

僕は別に、戦いに来たんじゃないんだよ?」


「あら、それなら何しに来たのかしら?」


「お礼だって言ったでしょ。

まあ、ついでに、君たちが迷宮から持ち帰った物を、正当な価格で買い取ろうとは思っているけどね。

大人しく売ってくれないかな?」


「なんの話かしら?」


サマーがとぼける。


「うーん。

普通に考えて、その惚け方は無茶じゃない?

もし何もなければ、僕の部下を捨てて帰るなんてしないでしょ?」


少女が笑った。


「ふふふ、邪魔だから捨てて来ただけよ。

特に理由はないわ」


「その方が問題な気もするけど、ね。

まあ、今はそういうことにしてあげるよ。じゃあ、また」


相当な数に増えていた少女が集まっていき、元の10センチほどの大きさに戻った。


「素直に帰るのね」


「鎌かけてダメなら、諦めるよ。

僕は強盗じゃないんだから。

あっ、そういえばそこの筋肉さんと、お嬢ちゃんは僕の名前は知らないよね。

一応名乗ってから帰ろうか。また会うだろうし。

僕はリューズ。忘れないでね」


そう言い残し、彼女は窓を開けて外へと飛び出した。


「なんだったの、あの子」


桜が口を開いた瞬間、サマーが黙るようにジェスチャーをする。


「メロス。さっき、女の子が分裂してたでしょ。そこらへんに残ってない?

調べてみて」


「我の感知できる範囲ではいないな」


「私が感知できる範囲でもいないけど、厄介ね。

きっと何かしらの仕込みはしているでしょう。

それとも、そう思わせることが狙いかしら」


思案するように、サマーは下を向いた。


「どうする?」


メロスの問いかけを、耳元に口を寄せて、サマーは答えた。


「……メロス、あなた迷宮で、人形だけを吹き飛ばしてたわよね?

同じように、この部屋の私と桜ちゃん、あなた以外のものを全て吹き飛ばしてくれないかしら」


「構わんが、いいのか?」


メロスもサマーに顔を近づけて小さな声で答えた。

桜はその様子を、顔だけは映えているなと、残念そうに見ていた。

メロスの凄まじい筋肉が、ドラマのような光景を凄まじく邪魔している。


「お願いするわ」


「わかった」


ハッと、メロスが気合を入れる。

部屋にあったものが全て、壁を破壊して外に消えた。


「……サマーさん、いいんですか?」


「……ええ」


少し浮かない顔をしながら、サマーは頷いた。そしてサマーが軽く手を振ると、半透明な壁が部屋を覆う。


「とりあえず、これ以上できることはないわ。今日はもう休みましょ」




そしてその日の夜。

桜は森の匂いで目を覚ました。


「目が覚めたか?」


「ぐっすり眠ってたわね」


メロスの隣をいるサマーが、桜に微笑みかけた。

桜は、メロスにお姫様だっこされている。


「ごめん、ちょっと状況が飲み込めない」


「変な横槍の入らない内に、さっさと終わらせようと思ったの。

ここがどこかは、私よりも桜ちゃんの方が知ってるでしょ?」


桜はメロスに抱えられたまま、辺りを見回して気がついた。

神殿がある。メロスお手製のやつだ。

どうやら瘴気の森にいるらしい。


「なんで?」


桜は起きたばかりで働かない頭で尋ねた。


「やりましょうか」


「何をですか?」


「寝ぼけているの?

これよ」


サマーが手のひらを見せた。その手には、小さな黒い石がある。


「なんだ、やっぱり持ってるんだね。体中を調べても見つからないから、本当に持ってないのかと思っちゃったよ」


昨日の小さな少女、リュースの声が響いた。

桜は驚愕しているが、メロスとサマーは平然としている。


「ここまでついてくるなんて、根負けしたわ。仕方ないから売ってあげる」


「やけに素直だね。ま、いいけど。

とりあえず、確認させてもらうね」


小指ほどの大きさのリュースが、小石の前に一瞬で現れた。

そしてリュースは小石に触れた。


「これは……、ただの宝石だね。

どういうつもり?

僕をこんなもので騙せるなんて、そんなこと考えてないでしょ」


リュースが笑った。それにサマーは笑い返す。


「騙すも何も、私はその宝石を加工して、桜ちゃんに贈ろうとしただけよ。

ここには、そのための材料を取りにきたの。

なにか問題でもあるかしら」


リュースは不思議そうに首をかしげる。


「無駄だと思わない?

僕はいつでも君たちの様子を見れるし、こうして好きな時に現れることもできる。

どんなに隠そうとしても無理だよ。

大人しく僕に渡しといた方がいい。

僕が、買い取るって言ってる内にね」


リュースがどんどん分裂していく。


「あら、それでどうするのかしら?

言ったはずよ、私はまったく心当たりがないわ。

そこまで気になるなら、あなたも来ればいいじゃない。

いまから神殿の中に入るから」


無数のリュースは一斉に首を振った。


「まあいいや。そうさせてもらうよ」


「仕方がない、特別だぞ」


メロスがやれやれと肩をすくめる。

桜はまったく展開についていけてないが、そういうものと諦めた。よくわからないことには、メロスで慣れている。

メロスを先頭に、神殿の中に入ると、サマーの目の前に小さな穴が空いた。人差し指がかろうじて入るくらいの大きさだ。

そして、すぐに閉じた。


「さて、どうなるかしら?」


「なっ?

まさか、異世界の扉?

魔結晶を使ったのか……。

なんて勿体ないことを」


リューズは憤慨した。

それをサマーが鼻で笑う。


「もう魔結晶は使い切ったわ。一欠片も残ってないから、大人しく帰ったら?」


「何をしたんだい?

貴重な魔結晶を無駄にした、そんなわけではないだろう。

何を考えているんだ?

まさか、異世界への扉を探している、のか?」


「ええ、そのまさかよ。

まさか、ここまでエネルギー消費が激しいとは思わなかったけどね。

やっぱり古い未踏破の迷宮に行く必要がありそう」


サマーはリューズに笑いかけた。

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