2話 変遷
一話少し書き換えました。今回も気軽に読んでくれると嬉しいです!
「俺の能力は…俺もわからなかったんだよな、能力の名前でも説明でもなさそうで…」
確かに頭の中に流れ込んできたのだが、能力そのものではなさそうだった。
「えっとわからなかったというのは…」
「頭に流れ込んだのは【光を失いし時、其方は新たなる世界を見るであろう】というのが頭に流れてきたんだけど、能力の説明でもなさそうだし…」
「光…これはいったい何を指してるんですかね…」
俺がこの世界の人間じゃないから不具合でも起きたのだろうか、今すぐ答えは出そうにもないし書類の能力記載の欄は書けそうにない。
「困りましたね、では今回は特例として能力記載欄は空白で構いませんよ、後でギルドマスターにも説明しておきますね」
「本当ですか…!ありがとうございます!」
「よかったね碧くん~」
よかった、これでギルドの登録は無事に終わりそうだ。
受付カウンターへ戻り、書類の続きを書く。名前、年齢、性別は書いた、魔法や能力の欄は空白でいいから残りは得意な戦闘スタイルか、魔法は使えないけど元々鍛えてはいるほうだ。近距離なら可能だろう。この世界で通用するかは未知数だがやるしかない。
書類を書き終えてそれをマヤさんに渡す。マヤさんが書類を受け取り何かを作っているようだ。5分ほど待つとマヤさんが一枚のカードを差し出した。
「お待たせしました、こちらが碧さんの冒険者カードとなります!」
差し出されたのは俺の冒険者カードだった。金色に輝く紋章が刻まれていてその下に俺の名前が記されていた。
「お~これが冒険者カード…かっこいいな」
「冒険者カードは依頼先での名刺として使えますよ、そして実績と実力が認められれば〈S級冒険者〉の称号を獲得でき、超危険指定クエストも受けられ、活動の幅が広がりますよ!」
「ねえねえ碧くん!せっかくだし一緒に依頼受けようよ!わからないところは教えてあげるし!」
そうだなあ、リリアがせっかく提案してくれたんだ。甘えさせてもらおう。
「せっかくだし、お言葉に甘えて受けてみようかな」
「やったー!依頼ボードはこっちだよ!」
リリアは嬉しそうにボードのほうへ駆け出した。俺もリリアの後を追い依頼ボードへ向かう。そこには白い紙に書かれた依頼書がたくさん貼られていた。魔物退治、失くし物の捜索、危険区域の調査など様々な依頼があるようだ。正直心惹かれてしまう依頼が多い、特に元の世界にはない魔物の討伐に目が行ってしまう。
その時一枚だけ赤い紙に書かれた依頼書が上のほうに貼られているのを見つける、内容は『S級冒険者以外回覧不可・報酬金貨五千枚と竜の塔・地下潜入資格証』となっていた。これがマヤさんが言っていた超危険指定クエストなのだろうか。
その時リリアが俺の袖を引っ張る。
「ねえ碧くん戦うの得意?この村の畑を荒らすゴブリンの討伐とか初心者にお勧めだよ!」
初心者にお勧めなら危なくなることも少ないだろうし、自分の力がどこまで通用するのか試せるいい機会だ。
「いいね、初めての依頼だしいろいろリードしてね」
「もちろん!任せて任せて!」
リリアが依頼ボードから紙を一枚手に取った。
「依頼を受けるときはボードから依頼が書かれている紙を一枚取って、マヤさんに声をかけてね!」
「それで依頼を受けれるんだ」
「うん!依頼の場所は依頼書に書かれてて、依頼を達成したら自動で冒険者カードに記録されるから、冒険者カードをマヤさんに渡せば報酬がもらえるよ!」
俺とリリアは受付まで行きマヤさんに報告する。
「マヤさん行ってくるね!」
「はい、気を付けて行ってらっしゃい!碧さんも初めての依頼頑張ってくださいね!」
「ありがとうございます。頑張ります!」
こうして俺たちはギルドを出て依頼場所のハーウス村へ行くこととなった。
「ここからそう遠くないよ、歩いて40分くらいかな。ねえ碧くんってどこから来たの?見たことない服装だしー」
思わず少し表情が硬くなる、不意に問いかけられたこの質問…さてどう返すか…。まだこの世界に来て初日だ、そうすぐに話すことでもないし曖昧な答えにしとこう。
「まぁ…すごく遠い小さな村からとだけ…」
「あっごめんね、あんまり言いたくない感じだったかな?複雑そうだもんね~、ギルドや魔法…さらには固有能力もしらなかったのはびっくりしたよ」
「能力のことはある程度理解できたんだけどさ、魔法っていうのがイメージわかなくてさ…」
「じゃあさ!ゴブリン退治のとき見せてあげるよ!」
この世界の魔法というのを早くも見れそうで胸が高鳴る。
「それは楽しみだ、ありがとう」
しばらく歩く小さな村が見えてきた。どうやらあ今回の依頼場所のようだ。するとリリアが駆け出す
「見えてきたよ!ハーウス村!」
リリアの背中を追いかけ村のそばまで行くと村の人がこちらに気づく。
「君たちは誰だ」
「私たち冒険者で、ゴブリン退治の依頼を受けてきましたー!畑を荒らされ困ってるらしいですね」
「冒険者の人たちか、助かる!東のほうに小さな森があるんだが、どうやらその森に住み着いたゴブリンたちが作物を荒らしているようなんだ」
「なるほど、では森に住み着いてるゴブリンたちの退治をさせていただきますね」
リリアが手慣れた様子で会話を進めてくれる。なるほど、こうやって依頼を引き受け解決していくんだな。
「では森のほうへ案内する、ついてきてくれ」
村の人についていき東へ少し歩くと木々が密集した森が目に入る。
「あの森ですか?」
俺が質問をすると村人はうなずく。
「ああそうだ。今確認できてるゴブリンの数だけでも十五匹はいる、俺はここまで案内できないが充分に気を付けて」
森の中に入ると風景は元の世界の森とそう変わらないが、ねっとりとした空気が不快感を煽る。その時少し離れたところに見たことのない生き物がいた、青緑の肌に黄色く光る瞳。
「居たよ、あれがゴブリン!動きは遅いけど結構力あるから気を付けてね。」
あれがゴブリン…よく見ると奥のほうにも何体かいる様子だ。その時リリアが前に出る。
「魔法…見せる約束だったよね!見ててね!」
リリアが右手を前に突き出す、手のひらに青い光が集まる。
「《水弾》!」
リリアの放った水の塊がものすごい勢いでゴブリンの体を貫く。あまりにも非現実すぎる光景に目を奪われる。
「何もないところから水が…すごい…これが魔法?」
「すごいでしょ?そう!これが魔法なの!」
目を奪われている時、背後から別のゴブリンが迫ってきた。
「!碧くん!後ろ!」
ゴブリンが俺に攻撃するより先に持っていたナイフで冷静にゴブリンの喉に刃を当てすべらせ切り裂く。リリアの言ってたゴブリンの通り動き自体は遅いようで簡単に倒すことができた。
「え!すごい!ゴブリンの皮膚って結構固いのにナイフでこうもあっさりと、やるね!」
「まぁ…ね」
ナイフを持つとあの日の記憶がよみがえる。――――――『死にたくないなら持て』
「それよりゴブリンはまだいるようだしもっといろんな魔法見せてよ」
「もちろんだよ!じゃんじゃん魅せちゃうからね!⦅水渦》!」
美しい水の渦がゴブリンの足元に現れゴブリンを飲み込んでいく。俺もあんな風に魔法を使ってみたいな、リリアの魔法に目を奪われながらも、俺も冷静にゴブリンを仕留めていく。
こうしてゴブリンの討伐を完了して村の人に報告する。
「終わりましたよ、作物を荒らすゴブリンはもういませんよ」
俺が報告をすると村の人は笑顔でお礼を言う。
「おお!本当にありがとうございます!これで村の食料は安泰だ!」
「碧くん初めての依頼どうだった?」
「…誰かに感謝されるの、心地よく感じたよ。」
今までの人生で誰に感謝されたことがない分、どこか心地の良い感情が胸の中で渦巻いていた。
「よかった!じゃあギルドに戻って報酬受け取りにいこっか!魔物退治は報酬かなりいいんだよね!」
こうしてギルドに戻り、マヤさんから報酬を受け取る。
「初めての依頼達成おめでとうございます!こちらが今回の報酬となります!」
渡されたのはポーチに入った銀貨3枚と銅貨15枚だった。これがどのくらいの価値があるのか分からないが、こちらの世界に来ての初めての通貨を手に入れたのは大きい。
「もう夕方だね、あ、そうだ!宿はプロタ屋ってところがおすすめだよ!ここから近いし一泊銀貨2枚!銅貨なら200枚でいけて内装の割に安いよ!案内しようか?」
寝床なんて決めてるはずもなく、とてもありがたい提案だった。
「それは助かる、お願い」
「任せて任せて!」
ギルドを出て街を歩く。夕日に照らされる異世界の街というのは神秘的に見えた。すれ違う異種族の人々に見たことのない道具を扱う店…街の風景に見とれているとリリアが足を止めた。どうやら宿についたらしい。
「ここだよ!結構大きいでしょ?このまま中に入って受付を済ませたら案内してくれるからね。明日も行くところがなかったらギルドにおいでよ!また一緒に依頼受けようね!」
「もちろん、色々今日はありがとう」
リリアが「おやすみ」と言うと一瞬でリリアの姿が消えた。あれが言っていたワープなのだろう。能力と言えば自分の能力を調べるときに頭に流れたあの言葉、【光を失いし時、其方は新たなる世界を見るであろう】…いったいこれは何なのか、いずれ分かる時がくればいいんだけど。
宿に入り部屋のカギを受け取り案内された部屋に入る。中はかなり綺麗でお風呂に大きなベッド、さらに大きなソファまである。まるで高級ホテルの一室のようだった。ソファに腰を掛け一日を思い返す。死んだかと思えば気づくと異世界…リリアがいなければこんないい宿で一泊することもできなかっただろうな。
死ぬ前の人生では感じられなかった事をたくさん感じた。死ぬこと自体が良い事とは思ってないが、少しだけ救われた感覚がある。これが夢でないことを願いながら疲れた体をベッドに預ける。気がつけば意識は深い眠りへと落ちた。
こうして異世界初日を終える。
最後まで読んでいただきありがとうございます!細かいところは修正するかも




