1話 邂逅
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なんで生きてるんだろうな、こんな世界でさ。幼いころから過酷な環境で生活、どこへ行こうとどんなに努力しようと自分の望む環境は得られなかった。生きる意味が見いだせない、普通ではない人生。
精神がすり減るばかり、幸せだった記憶もない。好きで裏の世界でいきてるわけじゃない。生きがいもないこんな世界から逃げたいな。
「もう…いい…か」
いつも持ち歩いていたナイフを取り出す。
《ズサッ》…鈍い痛みが走る…止まらない血…地面のアスファルトに赤く染まっていく。
誰にも愛されない世界で生きていきたくないな…
来世があるなら愛されてみたいな…
こうして苗木碧(二十歳)は自分で持っていたナイフを心臓に刺し命を落とした。
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消えたはずの意識が戻る。
あたりを見渡すと見たことのない建物が並ぶ。
街の風景に獣の耳やしっぽを持つ者もいる。
死後の世界…ってわけでもなさそうだ。
「ここは…いやまずなんで俺生きてるんだ…」
異世界転移というやつなのだろうか…それとも夢?だが夢にしてはかなりリアルな感覚だ。
持ち物は死ぬ前に持っていたナイフのみ…服装もそのままだ。これからどうしていけばいいのか…
「あのー、顔色が悪いようだけど大丈夫?」
突然、声を掛けられ顔を上げる。
十七か十八歳ほどに見える、純白な服装をまとった銀色の髪の猫耳の少女が心配そうにこちらを見ていた。人…なのか?
「大丈夫…ただ初めて来た場所に混乱してて…」
とりあえず、しどろもどろになりながらも言葉を返す、頭の整理が追い付かない。
「初めて来たんだ!旅人さんってこと?」
どうこたえるのが正解なんだろうこれは…ただ言語は通じるようで少し安心だ。
悪い人でもなさそうだし頼ってみるか、行動しなければ何も始まらない。どうやら俺の知っている世界じゃなさそうだし。
それに異世界だとしたら新たな人生を生きるいい機会なのかもしれない。
「旅人ってわけではないんだけど…実は遠くから来て…良かったらこの街についていろいろ教えてくれないかな…右も左も分からなくて、行きあてもないし」
お人好しなんだろう、少女は嫌な顔せずにこやかに頷いた。
「全然いいですよ。ここはオラクディアという王都です。活気もあって旅人さんが滞在しやすい街なんですよ!あっ、行きあてがなくこの街でしばらく滞在するなら冒険者ギルドの登録がおすすめですよ?私が登録してるギルドなんですけど簡単に登録できて自分に合った依頼をこなして稼げますからね!」
「冒険者ギルド?」
「(首をかしげながら)冒険者ギルドのこと知らない?依頼を受けて、町や村のお手伝いや魔物退治をして、困った人を助けて感謝されるし、報酬ももらえるところだよ!」
冒険者ギルドか、だれかを助け感謝されるなんて前の世界では絶対にやらなかっただろうな、だれかを助けるほど余裕がなかったし、居場所のなかった俺は自分のことで精一杯だった。でも、この世界では自分の居場所を見つけられるのかもしれないな…いい機会だし案内してもらおかな。
「目的もないし、行く当てもないしな、せっかくだし冒険者ギルドってところ案内してもらえる?興味もあるし」
「ぜひぜひー!あーそういえば自己紹介してなかったね、私リリアっていうのよろしくね!好きな事は人助けだよ!困ってる人や頼ってくれる人を助けるのすごく生きがいなんだ!」
「…すごくいいことだと思う。俺は苗木碧だよ…こちらこそよろしく」
「珍しい名前だねー!じゃあいこっか!」
リリアの後をついて歩いていると様々な光景が目に入る。竜のような生き物が人々と戯れていたり、西洋の騎士のような見た目の集団が歩いていたりと…初めて見る光景に本当に驚かされる。ギルドへ向かう最中にも宿の場所やおすすめの酒場も教えてもらった。こんなにも親切にしてくれてるんだ、いつか恩返しできたらいいな。
しばらく道を進むと大きな建物が見えてきた…見た目はまるで城のよう周りの建物と比べてかなり大きい、どうやらあれが冒険者ギルドだ。
目の前まで近づくとその迫力はこれまでの人生で見たどんな建物よりも圧倒的だった。
「ようこそー冒険者ギルドへ!さあ入るよー」
中に入ると酒場のような活気で談笑をしているものや依頼書を見ている冒険者達の姿があった。
大きな剣を持つものや杖を持つもの…見たことのない服装の者たちが行き混じっていた。
「すごいな、見たことのない武器に、感じたことのない雰囲気…ここが冒険者ギルド…!」
「登録はあそこの受付から簡単にできるよ!おいで!」
リリアが手招きをする。流されるがままに受付まで行く。
そこには優しい笑顔を向けるお姉さんが受付に立っていた。
「リリアさんお久しぶりです。こちらの方は?」
「久しぶりですマヤさん!
新しく登録したいっていう碧くん!さっき知り合ったんだー」
「苗木碧っていいます、ギルドの登録をしたくて」
「なるほどかしこまりました。ではこの書類にお名前と年齢、性別、特異な戦闘スタイルと、特異系統の魔法…それから固有能力をここの欄に書き写してくださいね」
なんだって?魔法に固有能力?情報量が多く、思考が一瞬停止する。
どうやらこの世界には魔法や能力というものがあるらしい。
「魔法に能力?すみません自分そういうのに知識がなくて…」
「え?魔法を知らない?…しかも自分の固有能力もわからないんですか!?かなり珍しいですよ。
魔法は使えない人もいるので空欄でいいんですけど、固有能力は基本的に誰もが持ってるものなので…」
マヤは驚きながらも続ける。
「では奥の部屋に来てください。ギルドでも能力を調べることができるので」
「わ、わかりました」
別の世界から来た俺にも能力というものがあるのだろうか。
その時リリアが口を開く。
「本当に何も知らないの?自分の能力とか…あーでも親がいなかったりする場合だとあり得るのかな… 普通は生まれたときに親が市役所で能力を鑑定するものなの。王都から離れた村では村独自の鑑定の仕方があったり…」
なるほどね、元の世界でいうところの戸籍登録のようなものなのかな?
「ちなみに私の固有能力は『ワープポイント』!最大三か所まで登録できて、一瞬でワープができるの!」
能力ってそんな便利なものもあるのか。
「へえーそんなことできるんだ、すごいな」
そんな会話をしてながら奥の部屋に入ると大きな鏡があった。
「この鏡の前に立ってください、すると頭の中に自分の能力の情報が下りてくると思います」
言われたとおりに鏡の前に立つ、緊張するが少しだけ胸が高鳴る。すると鏡から光がはなたれ頭の中で情報が流れ込んできた。
「……っ!」
見たことのない文字が流れ込む、だが、その意味は不思議と理解できている。
「すごい…色んなものが頭の中に流れ込んでくる…!」
5分ほど経つと光が収まった。
目の前のマヤさんの目は見開かれ言葉を失っていた。
「信じられません…普通は10秒ほどで終わるのに5分もかかるなんて…一体どんな能力だったのですか…?」
マヤさんは驚きを隠せない様子で返事を待つ。
リリアも息を飲み込み耳を傾けた。
「俺の能力はーー」
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