第15話 『貪り喰う者』
「ぐおおおおぉ!!」
大地が揺れるかと思うくらい大きな咆哮をアメミットが上げる。バーゲストもアメミットに既に1匹やられていて、私たちとアメミットどちらにも攻撃目標が定まらないようで三竦みになって動けずにいた。
「いい?リアムはアメミットの攻撃を引きつけて、私がその隙をついて攻撃をするわ。エーデルはこの場所から、バーゲストたちが私たちに近づかないように魔法で支援をお願い」
2人が無言で頷いたのを確認して、私とリアムは同時に地面を蹴って前に出て、アメミットとの距離を詰める。私たちが駆ける横をエーデルの雷撃炸裂弾がバーゲストに放たれる。それが戦闘開始の合図となった。
エーデルの放った無数に連なった電撃が先頭にいた2匹のバーゲストに直撃をする。その様子にアメミットが気を取られているのを見計らって私とリアムは左右に分かれて攻撃に移る。リアムは全身を使って飛び上がり、巨大なアメミットの上から大剣を振り下ろす。
「うりゃああ!」
それをアメミットは下から鋭く大きな爪のある右前足を打ち込んでくる。鋭い爪が、かすかにリアムの顔を掠めるがギリギリで、躱しながらも剣を振り下ろして、アメミットの右肩に一撃を喰らわす。しかし、ダメージは浅く致命傷には至らない。リアムのダメージで後ろに少しのけぞったアメミットの左前足を手首のあたりを私は斬り込む。
ザクッ!
斬ったアメミットの左前足から血が派手に流れるが、斬った私としては、そこまでの手ごたえはなかった。その斬った勢いそのままに、私はアメミットの後ろ側に回り込む。入れ替わるようにしてリアムはアメミットから、しっかりと距離を取る。
すると死角からアメミットの尻尾が鞭をようにしなり、私に襲い掛かる。
「――ちぃ!」
私はかわしきれないのと判断してを、ダメージを最小限にするために剣を盾にして尻尾の攻撃を受け止めた。
バシィ!
受け止めるつもりだったのに、それでも吹き飛ばされてしまう。
「ぎゃっ!」
飛ばされた反動で岩壁にぶつかってしまう。
「ルイズ!」
「大丈夫か?」
エーデルとリアムが私を心配する声がする。
「大丈夫!問題ないわ」
私は追撃を避けるために素早く立ち上がる。アメミットは追撃のために、その巨体にもかかわらず私にかかって前足で攻撃をしてくる。
「ルイズ!危ない!」
エーデルが氷結炸裂弾を放つ!無数の氷の塊がアメミットを襲う!それに気づいたアメミットは私への攻撃から、標的をエーデルに変える。するとアメミットは、その大顎を開いて構える。
「――ブレスがっ!」
そう言い切る前にアメミットの大顎からは炎のブレスが放たれる。業火が地を這うようにエーデルに一直線に向かっていく。躱しきれないと、そう思った瞬間――
「エーデル!あぶねぇ!!」
リアムがエーデルに体当たりをして横に転がりながらアメミットのブレスを間一髪、躱す!そのブレスの射程上にいた、バーゲストは骨もなく影だけを残して跡形もなくなった。
「ひええ、なんて威力だ」
「ありがとう。リアム」
「気にするな」
どうやら、2人は無事なようだ。その姿を確認しながらも、私はアメミットの腹の下をかいくぐって、横腹に剣を突き立てて走り抜ける。
「グオオオオオォ」
アメミットも、この攻撃には堪らず声を上げて大きく後ろに跳んで、距離を取った。
「流石に、これは堪えるでしょ」
私は返事のない魔物に対して、そう言い放った。その間に、リアムとエーデルも態勢を立て直す。
「野生の大森林の最強の一角は伊達じゃないな!コイツは!」
私たちとアメミットの僅かな牽制をし合った。アメミットも私たちを強敵と認識して、無闇に攻撃を仕掛けてこない。しかも、私はアメミットの後ろから、リアムとエーデルは前の位置にいるため、意識を両方に配らないといけない。
そうした、やりとりの沈黙を破ったのは――意外にもバーゲストだった。
残った2匹のバーゲストが、アメミットの下半身に噛みついてきたのだが、アメミットはこっちに集中したいのを邪魔されて苛立っていた。尻尾を振り回して、叩き落とそうとするがバーゲストもバカじゃない。
痺れを切らしたアメミットは噛みついて離れないバーゲストごと、左半身を自ら岩壁に叩きつける。
私たちへ意識を外した、その一瞬の隙を私たちは見逃さなかった。真っ先にエーデルの雷撃魔槍を放ちアメミットに届く!
「ぐわあぁ」
アメミットが怯み、そのタイミングを逃さず私とリアムはアメミットに肉薄する。リアムは喉をめがけて、私は下半身をめがけて、ほぼ同時に仕掛ける。
私の剣が一瞬、早くアメミットの後ろ足に斬りかかる。
ズバァっ!
攻撃を受けてアメミットの後ろ足は膝をつく形になった。そこに時間差でリアムの大剣が喉に突き刺さる。
ズブ、ズブズブ!
アメミットの喉から血が大量に吹き出す。アメミットは前足でリアムを薙ぎ払う。それをバックステップでリアムは避けた。アメミットは肩で息をしていた。確実に疲弊していた。
「あっ!」
リアムがアメミットのブレス攻撃の前兆を察して声を上げる。私も声に出さずに、その予兆に気付く。どうやら、足元にいる私とリアムではなく遠くにいる魔法攻撃をしているエーデルを標的にする気だ。
渾身の力で私は地面を蹴る。アメミットがブレスを吐くよりも早く、アメミットの側頭部に私は防御するのも厭わず全てを攻撃に徹して剣を両手で抱えて、私はさらに1つギアを上げて駆け抜け、身体ごとぶつかる。
ゴオオオオオオオォン!!
頭が岩壁にめり込んで、力なくズルズルと倒れていく――
私は、はあはあと肩で息をしていた。リアムとエーデルのかちどきを聞いて、貪り喰う者といわれるアメミットを討ち取ったのを自覚した。
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