↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
17/28

第11話 『エーデルとの別れ』

タンタンタンッ!


包丁の音が静かな森の中、響く。それが朝のはじまりを知らせる目覚まし時計となって音を立てているとリアムとエーデルが目を覚ましてくる。


「起きたのね。リアム、エーデルと一緒に沢で顔を洗ってきたら?」

「ああ、そうする。行くぞエーデル」

「うん」


リアムも寝ぼけている感じだったが、より輪をかけて眠そうにしていたのはエーデルだった。エーデルの顔色を覗いてみると血色がよく

なっていた。2人の歩く姿は、まるで兄弟のような後ろ姿をみせながら、トボトボと沢の方へと歩いていく。


「さて、作っちゃいますか」


まず、はじめに昨日、マジッククロスに包んで(くるんで)いたワイルドボアのローストを取り出して、包丁で薄く切り出す。玉ねぎを薄くスライスしておく。今日はエーデルがいるし、少し子供向けのソースにしよう。


荷物の中からバルサミコ酢の瓶を取り出して、それをフライパンに垂らして焚火の火にかける。次第に温度が上がっていくとバルサミコの甘い匂いが広がっていく。沸騰していくうちに黒くサラサラだったバルサミコ酢が水分が飛んでいき、黒光りして艶があるドロッとしたソースへと変化していく。ここで、少し味見をしてみる。


そのソースを舐めてみると、酸っぱさが抜けて甘さがより際立っている。単純な作り方だがバルサミコソースはこれで完成。


パンにローストポークのスライスを何枚か並べて薄くスライスした玉ねぎをのせる。そこにバルサミコソースをかけてサンドすれば完成。私とリアムのやつにはパンに下味程度にマスタードを薄く塗ってからサンドする。これがいいアクセントになるのよね。


昨日のミネストローネと同じように野菜をカットして炒める。そこにパルメザンチーズを削って入れる。そこに残っていた牛乳を全部入れる。そこに塩、胡椒で味付けして牛乳の野菜スープも完成ね。


「おお、なんかいい匂いさせてるな」


リアムとエーデルが沢から帰ってきた。


「うぉ!めっちゃ美味そうだな」

「うん」


はしゃぐリアムにエーデルも同意する。食べ物には目がないのは2人とも一緒だ。


「さあ、どうぞ」


スープを器に盛ってエーデルに渡してあげる。


「あ、ありがとう」


まだ照れてるけど、少しずつ気を許してくれてるみたいで、嬉しくなる。


「んんん!美味しいぃ!人間って、みんなこんなに料理ができるの?」

「そんなわけないだろ。俺は一切できないぞ」


なぜか自信ありげにリアムはエーデルの質問に反応した。


そのまま私たちは朝食を食べながら今日の行動について話し始めた。


「なあ、今日はエーデルが帰るのを手伝うんだよな?」

「エーデルの住んでる場所までは行かないけど安全な所までは送ってあげたいの」


エーデルは同意のサインとして、サンドを頬張りながら無言で頷く。

リアムが答えなくないなら答えなくてもいいと前置きしながらエーデルに質問を投げかける。


「野生の大森林(ワイルドサイド)に竜人(ドラゴニュート)の隠れ里みたいのがあるのか?少なくても俺は野生の大森林(ワイルドサイド)に竜人(ドラゴニュート)がいるなんて、見たことも聞いたことないぞ」

「そうね。私も竜たちの峡谷(ドラゴンズキャニオン)以外にそういう場所があるっていうのは聞いたことはないわね」


竜たちの峡谷(ドラゴンズキャニオン)は、このノースノワール王国と西の大国アジュール帝国の間にあるサクーレ山脈にある竜人(ドラゴニュート)の住む場所で、そこから竜人(ドラゴニュート)はあまり出てこない。だから、こうして竜人(ドラゴニュート)と会うこと自体が珍しい。


「隠れ里?そんなものはないよ。暮らしているのは僕と母上だけだ」

「お母さんと2人で暮らしてるなら、体調を崩してるお母さんが迎えには来られないわね」

「そうだね。だから、沢の上流にある滝のところまで連れて行ってくれれば大丈夫。そこからは安全だから」


やはり住んでいる詳しい場所は具体的には話したがらない。まあ、それはそうだろう。竜人(ドラゴニュート)は、そもそも人間とはあまり関りたがらない種族だ。弱っている母親がいるなら尚更だろう。その弱っている母親というのも、気がかりだけれど、エーデルがそれを望んでいないなら立ち入らない方がいいだろう。


「じゃあ、そこまでエーデルに案内してもらって俺たちは、エーデルを護衛をしてやればいいんだな?」

「そうね。それで、どうかしら?」


エーデルに最終確認をする。


「うん。それでいいよ」

「じゃあ、決まりだ」




食事を終えた私たちは、沢の上流にあるという滝に向かっていた。エーデルが見つかった沢から上流に向かうと、もしかしたら、またアメミットに遭遇するかもしれないということで、森の中を行くことにした。


「そりゃあ!」


バーゲストの鎖による攻撃をかいくぐりながら、バーゲストの腹に蹴りを入れる。その衝撃で、のけぞった所をエーデルが魔法攻撃のマジックアローで仕留める。どうやらエーデルは魔術師らしい。昨日、バーゲスト程度ならと言っていたエーデルの言葉に偽りはなく、その動きには淀みがない。


こっちも負けてられないと、リアムたちが相手をしている別のバーゲストを迎え撃つ。バーゲストは岩場を蹴って高く飛んで大きな口を広げて私に向かってくる。その軌道を読んで、下から私の剣を下からかちあげる。バーゲストは恐らく何をされたか分かっていないだろう。それぐらいの剣の速さでバーゲストの首をはねた。剣についたバーゲストの血を振り払って鞘に納めながら、振り返って2人に声をかける。


「こっちも片付いたわ」


私たち3人は7匹のバーゲストの群れを見事に退治した。


「エーデルやるなあ」

「昨日、言ったでしょ。バーゲストならってさ」


リアムが褒めるとエーデルは少し照れ臭そうに答える。


「しかし、ちょっとウザいくらい出てくるな」

「そうね。やっぱ魔物たちが活発になっているというか何か異変がありそうね」


リアムがうんざりしながらぼやいた。バーゲストとの戦闘もキャンプ地を出てから6回目だった。このぐらいの距離だったら通常なら2、3回程度の戦闘で済む。


「魔物になるべく遭遇しないように森の中を行くことにしたのに意味なかったわね」

「でも、もうすぐだよ」


エーデルは、森の切れ目となりそうな場所を指さした。私たちもそこに目線を送る。なんとか無事に送り届けられそうだと少し安堵した。


「結構、魔法を多彩に使ってるけどエーデルはどれくらい魔法が使えるんだ?」


リアムは好奇心でエーデルに訊ねる。


「レベル5の魔法までなら」

「すごいな。それも母親にならったのか?」

「うん」

「冒険者ならC級と同等ぐらいだぞ」


こういう人の心の中にスラスラと入り込むのがリアムは本当に上手いわね。まあ、無意識なんだろうけど。

それにしても、子供にしてレベル5の魔法を使えるのには驚きだ。魔法を教える指導者の立場になれる程度の熟練度があるのがレベル5の魔法を行使できる魔術師だ。やはり子供とはいえ、エーデルは竜人(ドラゴニュート)の種族としての強さが窺える。


「おお、思ったりより立派な滝だな」


ひらけた場所に出ると、目の前に滝が、その流れている水の大きな音と共に現れる。


「ここがエーデルが言っていた場所?」

「うん」


どうやら、ここがエーデルと目指していた場所らしい。エーデルが少し安心した表情をしているような気がした。



「じゃあ、ここでお別れね」

「うん、ありがとう。ルイズ、リアム」

「もう近くかもしれないけど、気をつけるんだぞ」


エーデルには私たちの目的地と、そのルートを教えておいた。もし、なにかあったら、私たちを追いかけて頼って欲しいと伝えて別れた。


「竜人(ドラゴニュート)って言っても普通の子供だったな」

「そうね。なんかリアムと兄弟に見えたわ」

「そうか?まあ、兄弟は多いしな」

「そうなの?それは知らなかった」


そんな言葉を交わしながら、見えなくなるまでエーデルの背中を私たちは眺めて見送った。エーデルも、岩場を飛んで移っていく度にこちらを振り返って手を振ってくれた。


「結果オーライだったわね。ここから私たちの目的地の祠も近いみたいだし」

「そうだったのか」


エーデルが向かった方角とは反対側へ、この滝の岩壁に沿っていくと祠へと着ける位置に私たちはいた。



私たちは、エーデルと別れてから野生の大森林(ワイルドサイド)をしばらく行くと目的地の祠に到着した。


「なんか、思ったよりしっかりしてるな」

「言われてみるとそうね」


祠の奥にある壁には簡易ながら燭台も、あって火を点けられるようになっていたりと作りはしっかりしていた。


「で、祠の調査っていうのは、どういう内容なんだ」

「この祠が荒らされてないかを調査すればいいみたい」


祠は特段、変わった部分は見当たらなかった。昨日の地震で祠が崩れているとかの影響もないようだった。


「調査も何もって感じだな」

「まあ、あくまで調査っていうのは建前なんでしょうね」


リアムも祠を見渡しながら、なにもないのに少し肩透かしを食らった様子だった。


「ここまで到達して、アンファングに無事に、帰れるのかどうかが冒険者のレベルを計るのが、主な目的の依頼なんでしょうね」


奥にある木で、できた小さな宝箱があった。それを開けると中には水晶が入っていた。


「あとは、これを持って帰って、ギルドに提出すれば依頼は完了ってことみたいね」


念のため、ギルドの依頼書を確認しながら、水晶を道具袋に入れた。


「なるほどね。私がこれをギルドに提出したら、今度はこの水晶をここに納めるという依頼になるっていう仕組みなのね」

「へえ、ちゃんと上手く考えられてるんだな」

「さあ、これで依頼は達成できたわ。帰りましょ」

「そうだな――」


私の声かけにリアムが反応して、祠の壁に寄りかかっていたリアムが身体を起こそうとすると壁が崩れ、その足元も穴が開き、リアムが落ちそうになる。


「うぉっ!?」

「リアム!」


それをみた私は、リアムの手を掴むため地面を蹴る。間一髪で崩れる足場から落ちそうになっているリアムの手を掴むことができた。


「助かったぜルイ――」

「あっ!?」


間一髪かと思われたが、私の名前を言い終わる前に私とリアムの足元も連鎖的に崩れ落ちてしまう。

その崩れた足場に私たちは落ちていってしまったのだった――

ここまで読んでいただきありがとうございます。


明日も2話投稿になりますのでよろしくお願いします。


少しでも興味を持っていただけたら下にある星マークでの評価をよろしくお願いします。作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直な評価で構いません。

いいねや、ブックマークもいただけると本当に励みになります。

これから、連載していきますので応援よろしくお願いいたします。

何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。