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ぐだぐだ異世界転生  作者: 猫宮蒼
四章 立場はある意味二軍落ち

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肝心なフラグが中々立ってくれない



 蒼碧のパラミシアのギルドルートであるならば既にいくつかのクエストをこなして他の大陸に行っている頃なのかもしれない。学院ルートだとまだ最初の試験は始まっていないはず。

 原作開始時間軸に突入したといっても、ゲーム内と実際の時間の流れが違う気がするので本当の所どうなのかはわからないが。

 漠然とゲームだったら今この辺かなー? と考えてみて、ユーリは現状を振り返った。


 イレギュラーな仲間は増えたけど、正規のルートと考えたら何も進んでいない気がする。

 ゲーム内で仲間になってくれるキャラでこっちにいるのは、グラナダ、サフィール、パトリシア、レシェに、フォンセだ。

 ゲームデータで見たら不思議すぎるメンバーである。どういうルート進んだらこんなんなるの? ってなりそうな組み合わせだ。

 現状館にはルーチェもいるが、彼は正式加入しているかどうか激しく微妙なので数には入れていない。そもそも彼は未だに目覚めてさえいないのだ。サフィールが看ているし経過としては問題ないらしいのだが。


 半分程寝ていた状態でメルが女神であるという事を知られてしまったという話を聞いたが、レーベンはこちらの設定に上手く乗っかってくれているらしく、言われなかったら知っているという事実に気付かない程であった。

 それにしても精霊の声が聴こえるとは……?

 他の虫や動物の声も言葉として認識ができる能力らしいのだが、あれこの人そんな能力持ちだったっけ? というのがユーリの正直な感想である。ゲームだとミオは未来を先読みできるとかなんとか言ってた気がするけど、レーベンはどうだっただろうか。

 そもそもボス戦として戦うまでに行っていなかったので詳しくは知らないままだ。


 本編終了後の追加ダンジョンでボスキャラだった二人は、何というか本人たち曰くあまり実戦経験はないのだそう。護身程度にはどうにかなると言ってはいたが、ユーリからしてみれば正直「うっそだろ……おい」と言いたくなる程だ。

 クリアした友人曰くこの二人は本当に強かったとか言ってた気がするんですけど!? 実際は自分の身を守るので精いっぱいとかホントに!? と詰め寄りたくなるが言ったところでどうなるものでもない。

 確認したくとも友人はこの世界にいるわけがないし、ミオやレーベンに藍緑エクエルドというゲームの話題を振ってもわけがわからなくなるだろう。


 仲間になっているメンバーも大概イレギュラーではあるが、本来ならば起こる事のない冒険者行方不明事件など出来事に関してもイレギュラーが発生している。

 正直現状、ゲーム知識が全く役に立っている気がしないというのが本音である。


「ねぇメルさん……こういう時ってゲーム知識を活かしてチートレベルで楽して仲間増やしてさくっと終わらせるのが定石じゃないの……?」

「妾に言われてものぅ……妾もイレギュラー多すぎてわけがわからぬのじゃが。調整神は問題ないとか言っておるがの……」


 ユーリの自室で今後についての相談をしていたが、そもそもこの手の話は何度かしている。進展があればいい方だが、大抵は愚痴で終わる事の方が多い。

「正直頼りになる仲間に丸投げしたい。したいけどやったら何かダメな気が凄いしてくる」

「頼るのと丸投げは別じゃからの。彼らでどうにかなるのであれば、とっくにどうにかなっておるよ」

「ですよねー」


 目の前に置いてあった紅茶のカップをよけてから、テーブルに突っ伏す。


「そもそも私でどうにかなるの? っていう疑問もあるんだけど、突き詰めるとどうにかするしかないって事になるんだよね……大丈夫? 何か今の私って完全に二軍落ちしてるようなものじゃない?

 ダンジョン探索メンバーが一軍なら私完全に二軍落ちしてるキャラじゃない?」

 そう考えると余計に不安しか出てこない。


「二軍だろうと三軍だろうとやらねばならぬ、じゃろ?」

「そうなんだよねぇ」

 突っ伏したままだとうっかり寝落ちしそうになったので、むくりと起き上がる。


「そもそも、ノーマルエンドに必要なアイテムとかそろそろ入手するべく行動しないといけないというのに、一つもまだ手に入れてないっていうのはどうなのメル」

「それな。とはいえ、妾にもどうしたものか……と悩みの一つとなっておるところよ」


 ユーリは前世でそれらのアイテムを一つとして入手していなかった。だからこそ重要アイテムの名前ですらわかっていなかった。当然入手方法も。

 女神と出会ってノーマルエンドを目指す事になってから、一応話し合いは少しずつではあるがしてきたし、当然これらの必要な重要アイテムの話題にもなった。


 ノーマルエンドに必要なアイテムは三つ。

 一つ、世界樹の琥珀。

 二つ、氷海の結晶。

 三つ、星の涙。


 名前はアレだが平たく言うと石である。


 長い年月をかけて魔力を蓄えてきた魔石とでも言うべきか。

 魔物から入手できる魔石とは比べ物にならない程の力を蓄えているその石が、ゲームでは重要アイテムだったのである。メルと出会ってすぐにこれらアイテムを入手するかどうかという話になった。

 けれど、ゲーム内で手に入った時間に近い状態で手に入れた方が確実だろうという結論になったのだ。

 早い段階で入手して、思ったよりも力が蓄えられていなければそれこそ困る。


 ユーリも一応どういう流れでそれらアイテムを入手することになるか、というのは聞いてある。


 まず一つ目の世界樹の琥珀だが。

 これは仲間になるキャラが持っているので該当キャラを仲間にして親密度を上げればイベントで貰える。キャラエンドまで行く必要はないが、ゲームをプレイするなら当然エンドリストを埋める事になるしその流れでゲットできるならそう難しいものでもない。


 だがしかし、肝心のその人物がいないのである。冒険者として多少名の知れた存在であるはずの彼女は行方不明になっていた。メルと出会ってすぐに仲間にしていれば、と思いはしたがそもそもその頃には彼女がどこにいるかというのもわからなかったのでどうにもできない。

 ゴードンと各地を巡っていた時に運良く出会えていればと思わないでもなかったが、ゴードンが行く先々は基本的にあまり人の来ない場所ばかりだ。それ以前にその頃彼女が冒険者になっていたかもわからないので、出会える確率は最初から限りなくゼロに近い。


 二つ目の氷海の結晶。

 これは世界樹の琥珀を手に入れる事がフラグになっているらしい。とある遺跡系ダンジョンに行くと手に入る。

 とはいえ、世界樹の琥珀がないとそこに行ってもイベントは発生しないしアイテムも手に入らない。ちなみにその遺跡にフォンセが行った事があるらしいのでそれとなく聞いてみたが、やはり何もなかったそうだ。


 三つ目の星の涙。

 前述した二つの石を持っていないと入手不可。メル曰くゲームだとイベントで自動的に入手可能だそうなので、あまり難しい事はなさそうだ。



 ただ、現時点では最初に入手する必要のある世界樹の琥珀を持っている人物が行方不明になっているという、初っ端から詰んでる感が凄いわけだが。


 なのでユーリは星見の館を繋ぎつつ、情報収集をするしか今の所は出来る事がないのだ。


「……えぇと、それで、なんだっけ? 彼女の名前」

 前世でのプレイデータでユーリはそのキャラを仲間にできていなかった。設定資料集で見た程度の認識だ。

「ロザリアじゃ。ロザリア・アルジェント」

「あぁ、そうだった。確かシンデレラモチーフの外見してる人」


 童話モチーフのキャラなので、何となく覚えてはいた。確か彼女は一緒に冒険者をしている相棒がいた。ハディード、といったか。彼は魔術士で、ロザリアと組んでからは彼女のサポートに徹しているとか設定資料集にはあったような気がする。


 ロザリアがシンデレラだというのなら、ハディードは王子ではなく魔法使いなのだろう。

 正直レシェよりはわかりやすい。同じ童話モチーフだというのにレシェは本当に設定資料集を見るまでそうだと信じられなかったのだ。


 そのロザリアは、ハディードと共に行方不明になっている。なのでまずはあちこちで彼女の足取りを探す事にしているのだが、現時点での成果はさっぱりだった。


「……レーベンが精霊の声とか動物の言葉がわかるっていうなら、そっち系統から情報集まらないかな?」

「聴くと疲れるそうじゃから、普段は力を封じておるのでは? 制御タグを持ってしても完全に制御できているか微妙な所じゃったし」

「うぅん……流石に無理はさせたくないしな。というか、あの人なら既にある程度試してそうな気がする」

 そしてその上で役立つ情報がなかったからこそ何も言わないだけに思える。

 そもそも、動植物の声が聴こえてくるというのであれば、常人には静かなはずの森であってもレーベンからすればライブ会場くらいにはなっていそうだ。そう考えると確かに疲れるのもわかる。


 ユーリには見えないし声も聞こえないがこの館の中にいる精霊たちも、普段は大人しくしているそうなのでレーベンにとってここは居心地がいいらしい。


「何というか彼はこちらにきて、その、のびのびしているな……?」


 と戸惑った感想を言っていたのはウォルスである。ユーリにはさっぱりわからないが、ケインも静かに頷いていたので知っている人物から見ればそうなのだろう。ミオに至ってはどこか嬉しそうにレーベンを眺めていたほどだ。

 多分レーベンの中ではここは療養所とかそれに近いものなのだろう、ユーリはそう自分を納得させることにした。



「となるとやっぱり地道な情報収集か……でも今行ける範囲だと目ぼしい情報なんにもないしなぁ……」

 すっかり冷めきってしまった紅茶をぐいっと飲み干す。

「となるとやはりそろそろ遠出をするほか――」

 ドンドン、と乱暴ともいえるノックの音がメルの言葉を遮る。こちらの返事を待つ事すら時間に余裕がないのか、すぐさまドアが開け放たれた。


「テロス? 何、どうしたの?」

「ごめん急用。悪いけど付き合って」

「うん?」

 ずかずかと部屋に入ってきたテロスは言うなりユーリを抱え上げた。身長のそう変わらない相手に俵担ぎにされたユーリはわけのわからないままに運ばれていく。

「おぉ!? ユーリ!? まて、どこへ行くつもりなのじゃテロス!?」


 慌ててメルが声をかける。空になったカップを片付けたくはあったが、テロスの様子を見る限り待っていてくれる気配はない。やむなくカップはそのままに、メルも足早に彼の後を追いかけた。

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