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ぐだぐだ異世界転生  作者: 猫宮蒼
四章 立場はある意味二軍落ち

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新たな仲間のフラグ



「ところでこちらをご覧ください」

 ダンジョン探索をしていたメンバーの中でもあまり戦闘に参加していないレンがやって来たのは、昼を過ぎたくらいの頃だった。グラナダ曰く、レンは護身程度に戦う程度なら問題はないけれどあまり魔術を扱うのも得意ではないらしく、本当に時々身体を動かす程度にしか参加しないらしい。

 じゃあそれ以外で何をしているのだろうか、と思った事はあったけれど、ユーリも今まで色々とやる事があったためそこまで気にしていなかったのだ。


 そのレンが久々に顔を見せたなと思った矢先にこのセリフだ。


「何?」

「重要アイテムっぽいなと思ってたんですけど、増えたんだよね」

 これ、と見せてきた物は、確かに重要アイテムだった。ゲームの中では一つしか手に入らないアイテム。


「これってポータルストーン?」

「そう。増えたというか、階層のボスを倒していったら時々ドロップしたというか。これそのうち全員分とか入手可能なんじゃない? って気がするけど、今の時点で六個ある」


「あれ? っていうか、こっちのポータルストーン最初に入手したやつと違ってアクセサリーっぽくない? 完全にこれアクセサリーだよね?」

「あぁそれはボクが。石のままだとうっかり落としそうだったから、ちょちょいと加工してみました」

「器用か」

「得意なんです。メソン島に居た時もこれで生計立ててたんですよー」


 そういえばゲームでもレンは一人で暮らしていたが、保護者がいたミリィや兄弟で暮らしていたルッセとルキアと違い、一人だけ羽振りが良かったなと思い出す。

「手に職があるっていいよね」

「ボクとしてはまぁ、もっと魔術でもってバリバリ戦えるようなのに憧れたりもするんですけど」

「でもそういうのって危険な事もあるからねぇ。堅実にコツコツってのが一番いいよ、やっぱり」


 冒険者にしたってどれだけ強くても取り返しのつかないレベルの怪我をすればその時点で引退するしかないだろうし。そこからギルドで新人を教育するような職につければいいけれど、それも難しいようなら他に何か特技がないと人生詰む。引退する前に一発ドカンとお宝発見したりで余生を過ごせる分の蓄えがあればいいが、そう都合よくもいかない。

 そう考えるとレンのように戦う力は弱くとも、安全な人里の中でできる仕事というのは少なくとも危険度合いが低いし、それなりに需要のある物を作るのであれば食いっぱぐれる事もない。材料から自分で集めるとなると危険度は上がるけれど、無理をせず護衛を雇ったりできれば生存率は上がるしで、冒険者に無理になる必要もない。


 何というか、ゲームで見た部分を本編とするのであれば。本編終了後でも安定して生活できていそうなキャラだよなぁ、それもダントツで。少なくともユーリはそう思っている。


「あと事後報告で申し訳ないんですけど。ここってほら、工房あったじゃないですか。誰も使ってないみたいなんでそこでこちらを加工させてもらいましたー」

「あぁ、工房。そういやあったね。というか、使えるなら使っちゃっていいと思うよ。今他に使う人いないんでしょ?」


 そもそも本来その工房を使うキャラがここにいないのだから、レンが使っていようと特に問題はない。


「あと、えーっと」

「他にも何か? あ、素材とか欲しいとかいうやつ?」

 手持ちの素材で余裕があるなら渡せるが、無い物を欲しいと言われてもどうしようもない。


「いえ、素材はダンジョンで何だかんだ手に入ってるので。そうじゃなくて、ですね。

 例えば、例えばですよ? ボクたちの知り合いで、実力はそこそこあって、まぁ信用できる感じの相手をここに案内するのって大丈夫ですか?」


 例えばと言っているが全然例えではなく、むしろそちらが本題なのでは?

 そう思ったものの、レンなりに精一杯考えて言葉を選んだ結果だろうからそこは深く突っ込まない事にする。


「例えば、がどこら辺まで含まれるかわからないけど、例えば住む場所無くしていく所がない、っていう人とかって事? 一人受け入れると他の人も受け入れざるを得なくなりそうだから微妙な所なんだけど。

 人間関係円満にやってけそうな相手ならともかく、あんまりギスギスされるようだとこっちも困るし」


 犬や猫を拾ってきたなら元の場所に戻しておいで、で済むけれど人間の場合はそうもいかない。

 それにレンが連れてきた場合、うっかりミリィあたりが大量に連れてきそうな予感がする。完全に偏見だが。


「いえ、そういうやつじゃないです。その人ちゃんと帰る家あります。ただちょっと今ごたごたしてるらしくてですね。今後の事を考えるとできれば匿いたい、というのがウォルスの言い分で……あ」

「あぁ、うん。何となく把握したわ。ウォルスの隠れ家は殺風景すぎるし生活するには微妙だし、一日二日程度ならともかくそれ以上となると厳しいもんねぇ」

「寝るだけなら別に問題ないんですけどねー……はは」


 つるっと口を滑らせたからか乾いた笑い声をあげるレンに、ユーリもつい生温い笑みを浮かべていた。

 正直ウォルスが匿いたいとか言い出す相手って誰だろう、と想像もつかないのだがウォルスがそう言うのであればそこまで酷い相手でもないのだろう。


「問題を起こさなければ大丈夫なんじゃない? ってウォルスにも伝えておいて。何かあったらウォルスなら自分で責任取るって言うだろうし、そういう意味では大丈夫だと思ってるよ」

「あ、はい。伝えておきますね」


「いつ頃連れてくるかはわからないけど、来たら教えて。一応」

「それもウォルスに伝えておきます。多分彼自ら報告しに来るとは思いますけど」

「そういう所はちゃんとしてるもんね、ウォルス」


 そんな話をしてレンとは別れたのだ。多分二日か三日したらウォルスがやってくるんだろうなー、とユーリも気軽に構えていたのだが。



「すまん、事情が急展開すぎるのは承知なんだが、三人程しばらくこちらに受け入れてもらえないだろうか?」

 ウォルスがやって来たのはその日の夕方だった。

「えぇと、レンと話した?」

「あぁ、聞いた。ただその、すまん、当初の予定だと一人だったんだ。そいつなら大丈夫だと思ったんだ。

 だが正直三人のうちの一人は……多分、大丈夫だと思うんだが、ちょっと俺と大変折り合いが悪くてだな」


 何とか言葉を濁そう濁そうと努力はしているようだが、全く隠しきれていない。レンやミリィ、ルッセあたりがそういう意味で失敗するならともかく、ウォルスがやらかすという時点で一体どんな相手なんだと興味もあるが、どちらかというと嫌な予感の方が強い。


「折り合いが悪いって、何、ルリでも連れてくるとか? そもそもそっちどういう状況? 私ダンジョン探索ほとんどノータッチだから言われないとさっぱりなんだけど。この前セシルからさらっと聞いただけで」

「あー、あぁ、そうだよな。時間の許す限りダンジョン行ってるからそういや俺もユーリと直接会うの何日ぶりだこれ? グラナダあたりから何も聞いてないのか?」

「こっちが聞けば教えてくれるかもしれないけど、グラナダの今の興味は多分冒険者行方不明事件とか、最近各地で行方不明になってる人増えてるよねっていう話題の方かなぁ」


 ボレアースから戻って来てからというもの、アリスも再びダンジョン探索側に回ったわけだがそうなると顔を合わせる機会が減る。こちらから会いに行ってもいない事もあるし、向こうからやって来る時に時間に余裕があれば近況を聞く事もできるだろうが、その機会は今の今まであまりなかった。だからこそユーリは今の状況に全くついていけていない。


「その、連れてきたい相手は三名。元々連れてきたかった相手は一応俺の友人で、残り二人は一応かつての同僚というか、上司にもあたる相手がいるというか」

「政府側の人って事? いやまって? ホントどうなってるの? ダンジョン今どこまで潜ったの?」

「ダンジョン自体は五十階層まで行ったんだけどな?」

「うわ」


 ちょっと待って。ちょっと前にセシルから聞いた時は十五階層あたりじゃなかったっけか。何でもうそんな所まで行っているのだ。

 それ以前に、それゲームだと本編終了してる階層じゃなかろうか。何、もうクリア後に追加される階層に突入できる状態って事?

 いやそれ以前に、ゲームだとそこに行く頃にはかなりレベルも高くなってるはずなのだが、つまり既に彼らはものすっごい強くなっているという事なのだろうか?

 レベルとかステータスといったものが見れないという事が大変悔やまれるが、見たら見たで自分との実力差を感じて落ち込むのが目に見えているのでそこは知らないままの方がいいのかもしれない。


「そういえば、ラルカのメイって子いたじゃない。ダンジョンで見たりした? もしくはトルテでもいいけど」

 あの時落ちていった二人。ダンジョンの中の時間の進みが遅いのは既に身をもって知っている。

 怪我などに対する自然治癒力はどうなっているかはよくわからないが、空腹で身動きが取れなくなる可能性は低いと思っている。

 あの穴から落ちた場合どの階層に繋がっているのかは不明だが、トルテなら運が良ければ階層のボスを倒して脱出も可能かもしれない。


 ウォルスたちが既に五十階層まで行ったというのであれば、トルテに関しては既に決着がついているはずなのだ。ゲームでは。そしてメイに関しても。

 アリスの一族に関する話も大体は把握できているし、ゲームクリア後の追加ダンジョン部分で細かい補完がされるがそっちは知らなくても問題のないような内容だった、とユーリは思っている。


「いや、見ていないが」

「……え?」


 ユーリとしてはてっきりそこはもう解決したものだと思っていた。

 いたのだが、まさかのエンカウントすらしていない宣言。

 ユーリがほぼ関わっていない藍緑エクエルド側のストーリーはてっきりそのままの流れで終着を見せると思っていたのだが。


 どうやらこちらでも色々な変化が生じているようだった。

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