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ぐだぐだ異世界転生  作者: 猫宮蒼
二章 闇深い土地、メソン島へようこそ!

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ほんのり漂う原作修正力



 メソン島中央都市シェメッシュ。メソン島の要とも言える都市である。この都市を囲むように他の六都市が存在しているのは、最終的に何かあってもこの都市を護り抜くためとも言われている。

 政府の役員の中でも上の方にいるであろうお偉いさんは大抵この都市に居を構えているために、他の都市と比べるとここは他よりも警備の目が厳しいとも言える。

 治安という点から見れば恐らくここが最も安全そうに見えるがそれは表向きの話だ。政府に不満を抱く者たちからすればこの都市は格好の標的でしかない。だがそれを踏まえて警備が厳しいのでもめ事を起こしさえしなければ大抵の住人にとって暮らしやすいのは確かだ。


 そんな中央都市にユーリたちはいた。

 なんでよりによってと思わなくもないが、これはある意味事故だ。


 今朝方三度目のダンジョン訪問をしたまではいい。最初のボスを倒して(今度はルーチェを見ても涙目にならなかった)今回は更に先へ進んだのだ。そうして二番目のボスを倒し(ルーチェが瞬殺した)、そこから転送装置で戻ってみたところ、ウォルスの隠れ家ではあったのだがそこで待っているはずのミリィたちの姿がなかった。政府の連中にばれて連れ去られたか!? と一瞬焦ったが、何のことはない。メルクリウスの隠れ家ではなくシェメッシュの隠れ家に転送されただけの事だった。


「ちょっとウォルスさん、隠れ家を各都市に用意してあるのは用意周到と褒め称えるべきかなと思いますけど内装ほぼほぼ同じってどういう事ですか。ミリィたちいないの超絶焦ったんですけど!?」

「いや、うん、すまない。というかこういう事態は想定していなかったから」


 確かに隠れ家ごとに内装を変えていた場合、家具の位置とか普段利用している所の癖が出てぶつかってしまったりする事もあるだろう。物を最低限にしていたとしても。それならば全ての隠れ家の中身を同じにしてしまえばいい。そういう考えに至るのはわからなくもない。

 ただ、今回はちょっとそれが悪い方に向かってしまっただけで。


「というかここ、ある意味完全にウォルスからしたら敵地ど真ん中じゃない?」

「まぁ、そうなるな。夜ならまだしも今の時間帯大っぴらに外歩くのはやばすぎる。俺も、アリスも」

「私もか?」

 他人事のようなアリスだったが名前を呼ばれ思わずといった感じで顔を上げる。


「自覚ないのは仕方ないけどな。かつて棺桶ごと保管されてたのがここだぞ? メルクリウスよりもこっちの方が多分アリスに見覚えあるなーって奴多いと思うぞ」

「それは、なんとまぁ……いちばんヤバいとこ来たわけだ。余計な希望は抱かない方が良さそうだな」


 ルリが上にどういう報告をしたかにもよるが、メリクリウスに人員を回してくるならば恐らくここから精鋭と呼べる相手を出してくるはずだ。ウォルスを仕留めるにしろ、アリスを捕獲するにしろ。ならば強敵と呼べる相手がいくらかはここからいなくなっている可能性もあるにはある。

 だがここは七つの都市の要とも言える場所だ。いざという時のための戦力は確実に残されているだろう。


「とりあえず、妾たちなら大丈夫だと思うしちょっと外の様子確認してきても良いか?」

 メルの提案に特に反対意見は出なかった。ユーリとメル、そしてルーチェが隠れ家から外へと出る。


 主要都市だけあって人の通りはそれなりにあった。けれども余所者がいないわけでもない。ギルドの依頼で立ち寄る者もいるし旅の商人風の人物もいた。ユーリたちのように観光客です、といった感じの者も少ないがいないわけでもない。適当に人の波に紛れて進めば巡回警備をしている政府関係者と思しき者の目に留まることもないだろう。

 念の為ルーチェとは二手に分かれた。むこうは少し渋っていたが、ルーチェ自身単独で行動した方が動きやすいのだろう。待ち合わせの時間と場所を手早く決めるとささっと人混みの中へ消えていった。


「まさかこんな流れでここに来る事になるとはね」

「普通に移動して辿り着くのとそう変わらぬが、これ下手したら他の都市もダンジョン経由で行けてしまうのでは……?」

「どこに出るかわからないランダムだけどね」

 ユーリの手を引く形でメルが先導する。目的地は勿論この都市の星見の館だ。



 ――前回残しておいたメモはなくなっていた。という事は一応こちらの伝言は誰にも知られていないわけではないらしい。いつ気付いたかまでは知らないが。

 できれば確実にいるであろうネフリティスに会って今までの事を話しておきたいが、ルーチェが告げた待ち合わせ時間に間に合いそうにないので断念する。とりあえず館同士が繋がったので良しとしよう。


 今ちょっとした厄介事に首突っ込んでます。


 それだけ書いたメモを残しておいた。巻き込まれています、ではなく正しく自分たちから首を突っ込んだのでそこは偽らない。巻き込まれています、の場合は気まぐれをおこしたテロスが助けに来てくれるかもしれないが、火に油を注ぐ可能性もあるからだ。自分たちから関わっているのだと宣言しておけばテロスならわざわざ関わってこないだろう。多分。




 ルーチェと合流し隠れ家へ戻る。ポータルストーンを使えば拠点変更ができる事はユーリが知っていたのでメルクリウスへさっさと戻った。ミリィたちの姿を確認してようやく安心できたのは言うまでもない。


「で、これからどうするつもり?」

 風情も情緒も何もかもをぶった切る感じに口火を切ったのはルーチェだった。

「僕としては暇を持て余してるも同然だから、ある程度は付き合うけど。でもそう長い期間は無理かな。あのダンジョンがどれくらいの規模かわかんないけど途中離脱する可能性もあるんだよね」


 聞きようによっては飽きたら抜けるね、と言われているようにも聞こえるがその場にいた誰も何も言わなかった。遊びならそれでもいい。けれどダンジョン探索は遊びと言うには危険すぎる……今の所はルーチェが大体魔物を瞬殺しているから危険って何だっけ? となっているのは否定できないが。


 本来ならばアリスとウォルス、それからミリィたちだけでも攻略は可能なのだ。ただ、そこにイレギュラーが加わって本来の展開と多少異なる部分が発生しているためこれから先どうなるかがわからないだけで。


「私は一応あのダンジョンをもう少し調べるつもりだ」

 ルーチェの問いに真っ先にこたえたのはアリスだった。てっきりウォルスが最初に言うかと思っていたが、ウォルスはまだどこか悩んでいるように見える。


 アリスが即答したのは、当然と言えば当然だった。二番目のボスを倒した時に出現した宝箱からは手帳が出てきたのだが、それがどうもアリスの一族の誰かの物だったらしく。このダンジョンに一族の誰かは確実に関わってるぞ、とばかりに匂わせてきたのだ。

 ユーリがその手帳を見た時に思ったのは、あの手帳もっと奥で発見されるやつぅ……! だったのだが、流石にそれは口に出せない。ポータルストーンといい一族の手帳といい、アイテムだけやたら前倒しでくるのは何でなんだと突っ込みたいが答えはわからないままだろう。


 ちなみに手帳の中身は特にこれといった重要な情報とかは記されていなかった。本当に、ただの手帳。予定とかどこそこに行くのに必要な物とかのメモとか、特筆すべき点のない手帳だった。一番後ろのページに持ち主のものと思しき名前が記されていたようだが、一部が破れているため家名部分のエレミアしかわからないがアリスからすればそれで充分だったのだろう。


「恐らくだが、ルリもあのダンジョンに足を踏み入れた以上政府でも多少なりとも調べたりはするだろうな。そうなると場合によっては政府の連中と戦う事もあるかもしれない。なら俺はアリスについていくことにする。俺が役に立つかはわからんが、いないよりはマシだろうさ」


 とりあえず、藍緑エクエルドと同じようにアリスとウォルスがダンジョン探索に乗り出す流れにはなったようだ。途中途中の展開が異なりはしたが。


「問題はボクたちかな。アリスと一緒にいた時に目撃者は殺せ、みたいな事になってたから今更大丈夫そうって事で外に出たとして本当に安全かわからないし。何より既に一人殺されてるからね。今更何事もなく日常に戻れ、とはいかない」

「でもレン、いつまでもここにいるわけにもいかないんじゃないかな?」

「そうなんだよね。……ねぇ、ダンジョン探索、ボクたちも加わっていいかな? 聞いた話じゃ魔物倒したらアイテムが出現したりするんだよね? とりあえずそういうの集めて売って路銀にしたい。ここを出るにしても、まず今のボクたちに圧倒的に足りないのってお金なんだよね」

「ダンジョンの中だと時間の流れがゆっくりなんだっけ? それなら短時間で頑張ればそれなりにお金稼げそうだよね」


 いい提案だとばかりにミリィが声を上げた。ミリィとレンに挟まれる形でルッセがおろおろと二人を交互に見やっている。危険だという意見と、どこに行くにしてもお金は必要というもっともな事実との間で葛藤しているのだろう。


「こどもの遊び場にしては危険だと思うんだが……あー、まぁ、単独行動を控えてくれれば大丈夫か……?」

 できる事ならこどもたちにはダンジョンに来て欲しくないのだろうウォルスが渋面を浮かべるが、レンたちの言い分もわからなくもないため頭ごなしに否定はできずやや悩んだ末に頷く。ウォルスも実際わかってはいるのだ。いつまでもここで匿うわけにもいかない事を。


 こうして、ユーリが特に何か言うまでもなく全員がダンジョンへ行く流れになってしまっていた。ミリィ達のダンジョンへ行く理由がゲームとは多少異なったが、概ねゲームと同じ展開になったと言える。

 これが……これが原作の修正力というものか……! などと感嘆さえする。

 藍緑エクエルドの主人公はアリスだ。アリスが中心となって動くのであれば、少なくともダンジョン内部で起こり得る展開はある程度どうにかなりそうだな、と思えてしまう。


 実際に原作の修正力というのがあるかどうかは疑問なのだが。本当にそんなものがあるのなら、まず蒼碧のパラミシアの主人公を出せと言いたい。ユーリとしては割と切実にそう思っていた。

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