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ぐだぐだ異世界転生  作者: 猫宮蒼
二章 闇深い土地、メソン島へようこそ!

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古いゲームの話をしよう



 目が覚めたのは深夜だった。昼過ぎに寝てしまえばそりゃあそうなる、それどころか寝すぎたなとすら思いのそりと身を起こす。流石にこんな時間ではもう宿の食堂だってやっていない。起きたばかりなので空腹を感じる事もないが……もう一度寝なおすには完全に眠気が飛んでしまったし、朝まで何もせずにいるのも暇すぎる。

 どうしたものかと思っていると、隣のベッドではメルがもぞもぞと身じろいで――

「はっ!? そんなもので世界が救えたら誰も苦労せんじゃろうが!」

 心の奥底から驚愕したとばかりに叫んで飛び起きた。


「……!? ……夢か」

「待って、どんな夢見てたの」

「あー、いやその、調整神に呼び出された時の記憶と混じった感じの夢じゃな。転生者を送り込むとか言われた時の。ただ、何故か転生者が全員人ではなくカエルじゃった。転生して人に生まれたとて、流石にカエルとかちょっと……なぁ?」

「あぁ、うん」

「挙句の果てに調整神からもしもの時はこれを使えとバールのような物を渡されての」

「あくまでもそのものではなくようなものなんですね」

「叫んだ所で目が覚めたわけじゃな」


「バールのような物は確かに活躍すべき場所では大活躍だけれども」

 流石にそれでこの世界は救えないだろう。多分。元気一杯飛び起きてしまったメルもすっかり眠気は飛んでしまったようで、寝なおそうという気もないようだ。

 ベッドに腰かけて足をぷらぷらと揺らしている。


「ところでユーリ、藍緑エクエルドとやらについてもう少し詳しく聞かせてもらえるか?」

「えー? って言っても話した内容大体全部だったと思うよ? 大筋のストーリーとか」

「地下ダンジョンは最深部まで行くとどうなる?」

「えー? どうだったかな……最初の深層終わらせたら一応クリアになったけど、クリア後に追加ダンジョンがあってそっちで回収しきれてなかった伏線回収みたいになってたと思うんだけど……そういや私そっちは全部クリアしたわけじゃなかったと思うんだよね。隠しボスに苦戦してレベル上げたりしてるうちに他のゲームとか出ちゃって、気分転換にってそっちやり始めたらそのままハマっちゃって藍緑エクエルドはそのまま……って感じだったと思うし」

「そうか」

「確かこのダンジョンってアリスの一族の人が関わってたのかな? 最深層部あたりでそういう情報が得られたはず。でも敵が強くてですね……真相はわからないんですわ……」


 確か多少シリアスめいた展開になってはいたはずだが、バッドエンドっぽい終わり方はしていないはずだ。当時他にプレイしていてクリアした友人からさらっと聞いた話だとそれなりにちゃんと終わったとかなんとか。クリアデータ見せてもらったら自分のプレイデータと比べてレベルからして違いすぎて、それで育てるのが作業化してきて途中で他のゲームに移ったんだったか。序盤から中盤あたりはレベル上げしつつイベントもそれなりに発生していたからそこまで苦に思わなかったが、これといったイベントがない状態でのレベル上げは流石に飽きてくるもの、と言ってしまえばそれまでなのかもしれない。


「……他にはない、よな?」

「他って? いやごめん、何となく言いたい事はわかるけどちょっとわかんない。

 この世界を舞台にしたゲームは他にもあったよ、ただし時間軸がどうなってたかはわからない」

「という事は今回のようにうっかり重なる事もないとは言えぬ、と」


「可能性はゼロではないね。けど、そう重なるかなぁ……? 場所が遠すぎて重なりようがないとかそんな気がするんだけど。今回はたまたまこっちの行動範囲内に同じ舞台が存在したからってだけな気がする。そうだと思いたい」


 そもそもゲームとして発売されたシリーズものというのは一作目を基準とすると二作目は大体一作目より後の時間の出来事として捉えられる。タイトルだけ同じで世界そのものは違うとかなら時間の流れとか気にする事もないのだろうが。

 シリーズが続いていくと途中で一作目よりも過去に起こった出来事をメインにした話もあったりするが、生憎ユーリが一通りプレイしたこの世界を舞台としたゲームはいずれもそういった時間の流れがはっきりとしていないために時系列に作品を並べてみようぜ! となったとしてもどれを起点とするべきなのかがわからないのだ。


「あ、や、でも世界が滅びそうみたいなのはなかったはず。精々国一つ滅びそうとかちょっと不穏に戦争起きそうとかで世界の命運決めちゃうまではいってなかったよ、確か」

 そこは救いと言えるかわからない。けれど、他のタイトルでも世界が滅ぶような状況であったならいつその展開が横やりを入れてくるかわからないし、そうなれば難易度がただでさえ高いように思える現状が更に悪化する。

「全部が全部同じ時間軸って事はないと思うんだよね。もしかしたらこっちのタイトルより後の時間軸のやつかな? って感じのもあったくらいだし。むしろ他タイトルに出演してた人がこっちにホイホイ出てくる事はそうないと思いたい」

「主役級の人物が助けになってくれるのであれば心強いような気もするが……」


「収拾つかなくなりそう。だってさ、蒼碧のパラミシアにおける魔王はあの魔王だけど、藍緑エクエルドにも魔王って呼ばれるキャラいるんだよ? 勇者だって私たちにとっての勇者はルーチェだけど、藍緑エクエルドにも血筋という意味でそういった生まれの人はいたし」

「何か言い方に含みを感じるのぅ、そういう微妙に濁すのは気になるからはっきり言ってくれぬか?」


「藍緑エクエルドで魔王扱いされてるのって、ウォルスなんだけど。ちなみに異父兄が勇者だったかな。ちなみにそっちは敵ですね」

 ちなみにこれは一度ストーリーをクリアした後の追加ダンジョンで語られる。見た目的にはどっちかっていうとまだウォルスの方が勇者名乗って許されそうな感じがしたけれど。もっと言うなら実質政府のトップにいる人物の方がよっぽど魔王じゃない? と当時思っていたけれども。


「何か、複雑な家庭環境なんじゃな……ともあれ、他の作品とやらが絡む可能性はゼロではない、か。他にどういう話があるのか知っておいた方がいいのかもしれんが……全てを語るには時間が足りぬだろうし、こちらが関わるかどうかも疑わしい。

 もし他作品のキャラとやらが新たに出てくるようならその時に教えてほしいのじゃ。頼めるか、ユーリ?」

「それは勿論。けど、私の記憶も結構曖昧になってる部分多いからあまり期待はしないでほしい」


 ゲームとしての大まかな話は覚えていたとしても、細かい部分は確実に忘れてしまっている。例えば隠しキャラの攻略法とかそういうある意味どうでもいい部分は割と覚えているのだが。むしろそんな部分であっても覚えているだけで凄いと自画自賛したくなる。


「とりあえず、これからどうするんだろうね? ルーチェがルリとどういう会話したのかわからないけどまさか手を組むなんて事にはなりえないだろうし。ミリィたちはそこまで執拗に狙われる事さえなければ家に帰って大丈夫かもしれないけどまだちょっと疑わしいからできれば他の場所で一時的にでも保護するべきかなと思ってはいるけど……あの子たちもサポートキャラ扱いでダンジョン行けるからそれなりに自衛手段学ぶつもりで連れてった方がいいのかも」

「そこは本人たちの希望次第じゃろうな」


 確かに。行きたくないと拒否している相手をダンジョンに連れ込むわけにもいかない。ルッセはともかくミリィあたりは元気にダンジョン探索だー♪ とか言いながら率先して入り込みそうなので最低限彼女は連れて行く事を想定したとしても。

 このダンジョンを攻略し終えるまでメソン島から出ないというわけにもいかない。こちらとしてはできる限り移動範囲を広げておきたいというのが本音だ。幸いにしてまだ時間的に蒼碧のパラミシアが開始する時間軸ではないとはいえ、あまりのんびりしていると気付いた時には手遅れでした、なんて事になりそうなのが怖い。


「そもそも、メルが調整神から知らされた蒼碧のパラミシアエンディングリストだけどさ。前提としては主人公がマチルダなわけじゃない。いないけど。でも私がマチルダの代わりになるかっていうととても微妙じゃない。不測の事態しかない状況すぎて泣きたい」

「そう、じゃな……調整神にそこら辺どうなっておるのか聞ければいいのじゃが……」

「やっぱ難しいの?」

「一応連絡とってみるが……あまり期待はせんでおくれ」


 へにょんと眉を下げて言うメルの言う通り、期待はしない方がいいだろう。そもそも調整神だけでどうにもできなくなったからこそ、転生者が投入される流れとなったのだから。


(でも、なぁ)

 メルについてはさておき、ユーリからしてみれば本当にその調整神とやらを信用していいものなのか――直接会ったわけでもないから、というのもあるがどうにもユーリは信用できそうにないなと思う。

 調整神の存在はメルの口から語られているが、その調整神の人柄(神様だけど)とかそういうのが一切わからないため、なんというか信頼できる点とか信用できる部分とかそういうのが一切ないのだ。

 現状ユーリの中での調整神というのは、見た事ないけどいるかもしれない幽霊と同じくらいの存在感でしかない。蒼碧のパラミシアでその存在が仄めかされていればまた話は違ったのかもしれないが、ゲームでは調整神なんてものは一言も出てこなかった。


(これ、邪神は調整神の仕業説もあったりするのかな……壮大なマッチポンプとかたまにあるからなぁ)

 ユーリは覚えている。世界を滅ぼそうとしている存在を倒すべく旅立った勇者たちが、やっとの事で辿り着いてラスボスを倒したものの実の所そいつは世界を滅ぼそうとはしておらず、何か自分じゃ死ねないから誰かに倒してほしかったとかいう理由で勇者たちを利用したとかいうゲームを前世の兄がプレイしていた事を。

 そしてそのエンディングを見て、

「壮大なマッチポンプじゃねーか」

 と兄が力なくコントローラーを取り落とした事を。


 話の流れは途中までとても先が気になる感じだったし、兄も連日集中してプレイしていたのでこのエンディングにはガッカリしていたものだ。


 もし邪神が調整神の送り込んだ代物説とかだったらメルは利用されているか騙されているかになってしまうので、そんな事はないと思いたいのだが。


 そんな事を考えているうちに夜が明けたのか、窓から見える空の端が白んできていた。目を凝らせば通りを歩いている住人の姿もちらほらと見え始める。メルクリウス付近の森や山へ行くのだろう。

「……あれ?」

 どこかで見たような後ろ姿に思わず窓に近寄った。年は多分ユーリとそう変わらないか、それより少しだけ下くらいだろうか。長い金色の髪を揺らし、白いワンピースを翻して進むその後ろ姿はスキップでもするかのようなステップで通りを進んでいった。後ろ姿なので当然見間違いの可能性もあるが、それでもどこかで見たような気がする。


「………………わかんないから保留で」

 しばらく考えたけれど思い出せなかった。今のでなんだかどっと疲れた気がしたので寝なおそうかと思ったが、多分すぐに起こされるのはわかりきっているので身支度を整えるために洗面所へと向かう事にした。

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