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ぐだぐだ異世界転生  作者: 猫宮蒼
二章 闇深い土地、メソン島へようこそ!

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闇の深い種族のお話



「というわけで情報の共有をしようと思うの」

「お、おう、唐突に何じゃ。情報の共有?」


 本日もルーチェが支払いを済ませた宿屋で過ごす事となったので、ユーリは疲れたので寝るとごり押してメルと部屋に引っ込んだわけだが。ここで本当に寝るわけにもいかず、部屋の鍵をしっかりと施錠した後にそう宣言した。


 ダンジョンから転送装置を経てウォルスの隠れ家へ戻り、やはりあのダンジョン時間の流れおかしいという部分に到達した後はウォルスたちはこれからの事に関してどうするかの話し合いを詰めるらしい。

 ルーチェは話し合いが決まったら一応教えてくれると助かるかな、と言いつつさっさと部屋を出た。確かにあの部屋で話し合いをするには、いささか人数が多すぎる。窮屈すぎてそちらに意識が向いてしまうと、話し合いも何もあったものではなかった。


 そして宿へ戻ってきたわけなのだが。そこにはルリがいた。どうやら無事にダンジョンからの脱出を果たしたらしい。眉間に深く刻まれた皺からご機嫌斜めである事は察したが何故ここに、という疑問はルリの口から解消された。


 ルリ曰く、目の前でユーリたちの姿が消えた後ルリもまたあの転送装置によって外に出る事ができたらしい。しかし彼女が飛ばされたのは教会の外。何がなんだかわからないまま呆然としていたが、すぐさま同じく外に出ているであろうユーリたちを探して宿まで来たとの事だった。

 危うくウォルスとアリスを連れて遭遇する所だった、と何だか嫌な汗をかいたのはユーリだけだった。メルもルーチェも平然としている。メルはともかくルーチェの精神強靭すぎない……? それくらい強靭じゃないと勇者務まらないの……? といったユーリの心のうちはさておき。


 ルーチェはその後ウォルスたちと行動した事はちゃんと伏せておくつもりのようだ。現在は宿の食堂でルリとダンジョンについての話をしている事だろう。ユーリは一応部屋で休むと告げたのでよっぽどの事がない限り部屋に突撃はされないと思っている。

 だからこそ、今がチャンスだった。


 メルに藍緑エクエルドについて話す。

 とはいえ、ユーリも前世でプレイしたのは随分と前なので細かい部分は忘れているし、多分どこかで思い違いもしていると思っているが、それでも覚えている限りを話した。


 メルはやはり藍緑エクエルドというタイトルについて聞き覚えはなかったようだ。そのタイトルの主人公にアリスがあたり、相棒キャラにウォルスが、ミリィたちはサポートキャラだと告げるとどこか合点がいったらしい。

「なるほどの、ユーリが最初にミリィを見た時にどこか驚いていたのはそれが原因じゃったか」

「私そんなに驚いてた?」

「いや、そこまでではなかったが、ほんの一瞬じゃ。妾はたまたまその一瞬を見てしまったからの」

「それなら昨日の夜戻ってきた時点で話しておけばよかったね。ごめん、昨日は流石に眠気が勝ったものだから」

「それは仕方あるまいよ。確かに言うべき事柄ではあったかもしれぬが、重要度としては緊急というわけでもなさそうじゃったからの。昨日の時点では特に」


 それに、とメルは少し悩んだ末に言葉を続ける。


「それに、藍緑エクエルドとやらでは別に世界が崩壊の危機に陥るとかそういうのはなかったのであろう? ならば放置でも問題ないと思うぞ」

「まぁ、舞台はメソン島だけだから。ただ、展開が多少変わった部分もあるんだよね。その結果がこっち側に盛大なバタフライエフェクトに、なんて事になったりしたら怖いかなと」


 言いつつポータルストーンを差し出す。この重要アイテムがまず主人公の手にないという時点で色々とヤバいのでは? という気しかしない。

 これが有るのと無いのとでは、ダンジョンに挑もうという気力が大分違ってくる。そもそもゲームなら全滅すれば勝手に隠れ家に戻されてるが、恐らくここでの全滅はそのまま死ぬのでは? としか思えない。ならば自由に戻る事ができるこのアイテムはなければならないだろう。


「ふむ、別に世界の危機になったりはせんじゃろう、と言いたいがアリスやウォルスがダンジョンを攻略していく事でいくつかのごたごたが解決したりするというのであれば、しないままだと他への影響を及ぼすかもしれぬ、というわけか。……調整神からは藍緑エクエルドに関しては何も聞いておらぬが……これはアリスなりウォルスなりにダンジョン攻略に力を入れてもらった方が良いの……か?」


「メル、あの、念の為聞いておきたいんだけど。ラルカって知ってる?」

「ラルカ? かつてメソン島のマナ濃度が高まりすぎて普通の人間では体調を崩すような場所でも仕事ができるように、とかで作られた種族じゃったか? 異種交配とかでできた新しい種族とかいう話は小耳に挟んだが……マナ濃度の高い場所でしか暮らすことができず、今はメソン島の限られた場所でしか生きておらぬとか」

「なんてこった! メルの知ってる知識そっちかよ!!」


 だぁん! と音がする勢いでユーリは膝から崩れ落ちた。ぎょっとしたメルがどうしたものかとユーリの肩に手を伸ばそうとしたが、宥めるように撫でるのも違うのでは? と直前で思い直した結果とても微妙な位置でうろうろさせる事となる。


「あのねメルさん、その話ね、表向きの話なんですわ。藍緑エクエルドだと。

 実際はね、マナ濃度の高い所でお仕事できる存在が必要だよねって事で当時の政府の中でも相当にマッドでサイエンティスト的な魔術士とかがホムンクルスとか何か色々な知識と技術駆使しちゃって作っちゃった新生命体なんですわ……ゲーム内でちらっとその情報が出た時点では作成人類とかなんとかって表示されてたんだよね。

 見た目は普通の人間と大差ないんだけど、金色の髪と目をしてるのが特徴だよ。目に至っては瞳孔の色が人間と違ってるから見たらわかる感じだよ。

 これだけならなぁんだそうなんだ~で済みそうだけど、ラルカたちはね、人間みたいに交尾しただけじゃ増えないんだ。増やす前にあるものを食べてからじゃないと新しい子孫が増やせないようになってるんだけどさ」


 そこまで言うとユーリは膝をおさえつつも立ち上がった。今はいいけど後からじんわり青くなりそうだなと思うが、そんな事は些末すぎてどうでもよくなってくる。


「そのあるものっていうのが人間なんですけどどう思いますメルさん」

「唐突なカニバ」

「冷静な感想すぎか。まぁそんなに大量に食べたりしなくていいみたいだから、年に数人攫われたりしてると思うんだけどさ。そんでもってそういう行方不明になった人は多分魔物に襲われたとかそういう解釈になってると思うんだけどさ。

 ラルカたちはダンジョンにも出没します」

「ならばダンジョンには行かない方がいいのでは?」

「でもダンジョンで決着つくのでメソン島で表沙汰になってない誘拐事件が終結します。結果としてメソン島のマナの乱れとかも徐々におさまってくとかって流れになったはず」


 メルが言った程度の認識でしかメソン島住人もラルカについては知らなかったはずだ。ゲーム内ミリィとかはそもそも存在すら知らなかったように思う。

 かつて利用しようとした種族は用済みになった時点で都市の外へと追いやられた。今は確かメソン島に点在している森や山、洞窟などに隠れ住んでいるはずだ。

 だが、そこから地下ダンジョンへの入口が繋がりそちらに住居を移した……という話だったはず。


 ゲームの中ならともかく、こちらでのダンジョンで生活されているととても不味い気がする。どういう原理か知らないけれど、ダンジョンの中は時間の流れが遅い。という事はそこで生活をしている間は年をとるのもゆっくりなわけで。若い個体を育てる間は外に出て、ある程度の年齢になったらダンジョンへ、なんて事になれば気付いた時には爆発的に増えていたなんて事も有り得る。


 これが人間種族に対して友好的な存在であればまた話は違ったのだが、ラルカにとって人間は繁殖するために必要なモノでしかない。なんでこんな物騒な種族をかつてのメソン島の政府は爆誕させてしまったのか。


「うわ、妾の世界知らないうちに物騒極まりない種族生まれておった……」

 これには流石のメルも顔を引きつらせている。

「というか、ダンジョンで決着つけるという事はそうしないと最悪メソン島の外にそやつらが流出の可能性もあると……?」

「断言はできないけど、もしかしたらあるかもしれない」

「そんな事になったら仮に妾たちが上手い具合にノーマルエンドを達成したとしてもすぐさま戦争勃発するじゃろ!? はぁ!? どういう事じゃそれ、調整神マジで何も言わなかったぞ!?」


 ふらりとよろけてベッドの上に倒れ込み、そのまま枕を引き寄せて顔を埋める。

「ちょ、えー、じゃあダンジョン攻略もせねばならないという事か……? その上で蒼碧のパラミシアのノーマルエンド目指せと……? なんじゃそれ、どういう事じゃそれ……」

「……こうなったら本格的にアリスたちこっち側に引き込むしかないんじゃない?」


「うむ、それが良いかもしれぬの。というか、ダンジョンも妾たちで攻略しろとか流石にダンジョンの中の時間がゆっくりであろうと厳しいものがありすぎるわ」

「修行とか特訓的な感じに利用できればこっちもそれなりにメリットにはなりそうなんだけどね」

 そう言いはしたが、ユーリからすればこのダンジョンが一番経験を積むのに適していると思っている。

 戻ろうと思えばいつでも戻れて、時間の流れが遅いので長期的にこもったとしても外に出ればそこまで時間は経過していない。階層を進めば進むだけ敵も強くなるし、アイテムもドロップする。


 ここ以外のダンジョン扱いになっている所だと、魔物の強さは場所ごとに異なるので強い敵と戦うためには当然それなりに移動しないといけないし、戻るとなると一瞬でというのも難しい。更に魔物から回収できる素材あたりなら倒せば倒した分だけ手に入るかもしれないが、宝箱とかそういうものはほぼ無いといってもいい。

 ここで手に入るアイテムは進めば進んだ分だけいい物が入手できるので、資金調達にも役立つと思う。


「問題は……アリスとかは大丈夫だと思うんだけど」

「あぁ……ルーチェの存在は確かにどう転ぶかさっぱりわからぬな」


 蒼碧のパラミシアではそれはもう色々なフラグを立ててからじゃないと仲間にならなかった勇者。ここで仲間にならずとも敵に回りはしないだろう、とは思うのだが場合によっては魔王を仲間に引き入れる難易度が相当跳ね上がるのでは? と思うと気軽に仲間に誘っていいものか悩むところだ。

 あくまでもこの世界を無難に救うためには勇者と魔王の協力が欠かせないのだから。


「まぁ、ルーチェだし……なるようにしかならないんじゃないかなぁ」


 本当に、どうして彼はユーリたちと行動しているのだろうか。ゴードンと共に各地を巡っていた時に遭遇でもしたのでは? と考えてはみたが、思い当たる人物などいなかった。だからこそ余計にわけがわからない。メルと同じようにベッドに倒れ込んで考えてみたが、それらしい答えは結局出る事もなく。

 気付けばメルと一緒に寝落ちしていた。

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