ペットは家族だ
さて、問題はここからだ。
「どうすっかなぁ。」
家の門扉の前で立ちすくむ。
『どうした?お前の家であろう?なぜ入らぬのだ?』
『どうしたもこうしたもあるかよ。お前が居るせいに決まってるだろ。』
段ボールを抱えて捨て犬を持ち帰ったことは一回も無いし、それどころか生き物を持ち帰ったこともない。
『単にお前が許可を取ればいいだけの話ではないか。簡単じゃろう?』
『まぁ色々あってだな...』
「あれ?おにーちゃん?何してんの?」
一番最初にコイツに見つかるのだけは嫌だった。
両親...特に母ならまだ話しやすいのだが、コイツだけは最悪だ。
「それ、何もってるの?」
「あー、これはだなぁ...そのー、」
言いにくい。
実に言いにくい。
「おにーちゃん。...もしかして...なんか拾ってきたんでしょ?」
おまけに勘が良い。
『これはワシが行くしかないのぉ!』
「あっ、おい待てぇ!」
ぱぁんと弾かれた様に中から飛び出る。
そのまま地面に着地。
『お嬢さん、挨拶が遅れ申し訳ない。ワシの名前は彼に決めてもらうとして、今日からこの邸宅に住まわせてもらうことになった者じゃ。しばらく宜しく頼むのぉ!』
「わぁ!すごーい!この犬しゃべったぁ!」
ぱぁっと目を輝かせる。
「俺は別だけど、お前はどうしてそんなに早く受け入れられるんだよ。」
「で、おにーちゃん、この犬飼いたいんだ。」
「あー、まぁ......うん。」
コイツの名前は佐々木友里。
言うまでもなく俺の妹だ。
年は14で今年中学二年になったばかりである。
「おにーちゃん。あの事、覚えてるでしょ。」
「お、おう。」
そう。
俺がコイツに最初に見られたくなかったのは性格が面倒くさいからとか......まぁそれもあるんだが...あることがきっかけでもあった。
「おにーちゃん!いーでしょ!犬!飼いたい!ねー、おにーちゃん!」
友里が俺の手を取り、ブンブンと振り回す。
「ダメだ!大体、友里はすぐ飽きるんだから、散歩とか餌やりとか出来る訳ないだろ!」
「えー!ちゃんとやるもん!できるもーーん!」
「イタい、イタ、イタタタタ!やめて!腕ちぎれる!」
俺の腕を力いっぱいに引っ張る。
このままでは肩が外れる!
「もう、良いんじゃないの?友里もこう言ってることだし。」
母が困ったような顔をしてこちらを見る。
「友里が散歩やめたら俺が行くことは目に見えてる!嫌だ!」
「宗利がそう言うなら仕方ないな。友里、今回は見送りだ。またの機会にしよう。」
「......はぁい。」
これがおよそ3年前、確か俺が小学6年で友里が小学4年の頃だ。
非常に言い出しにくい。
「フーン。私が飼いたくないって言ったら、飼わないんだ。」
「......それが我が家のルールだからな。」
全員で決定しなければできない。
それが俺たちの家族のルールだ。
「おにーちゃんは本当に飼いたいの?この犬。」
犬はこちらを向いてじっと睨みつけてくる。
ここまでくると何もしゃべらないという事実に威圧感がある。
「ああ。飼いたい。こんなことを言うのはわがままだと分かっているんだが、何かそのー同情心が沸いてしまってだな。」
「しゃべるから?」
「うん。...まぁ、そうだ。」
簡潔に言ってしまえば原因はそこにある。
「可哀そうだから飼うんだ?」
「そう...じゃない...」
本当にそうでは無いと言い切れるだろうか。
「分からない。」
「ふーん。」
分からないけれど可哀そうだと思っていないわけではない。
でもそれが動機ではない。
「なんか、こう、愛着が沸いたというか、その、表現しにくいんだが...」
突然、友里が噴き出したように笑いだす。
「おにーちゃん!ハハハハハ!説明、ヘタクソ!」
「うる...うるさい!」
何か前にもこんなことがあったような気がする。
というかこの頃こういうことが多すぎる!
「良いよ!飼っても!」
「へ?」
「だって、おにーちゃん、何かしたいってなかなか言わないんだもん。」
「そう......か?」
確かに直近で何かをしたいと自分から言い出した記憶がない。
まさか...いつの間にか主体性のない人間になっていただなんて...
「そーだよ!じゃあ、おにーちゃん!名前決めよ!」
「まだお父さんとお母さんの意見聞いてないけど...良いのか?」
「ダイジョーブだよ!ね?ポチ!」
また、そんなありきたりな名前を...
「ポチじゃない方が良いんじゃないか?」
「じゃあポチ太!」
なぜ、そうなる...
「それで...良いのか......?」
人のことは色々言うけど、自分にもネーミングセンスはない。
「良いんじゃないの?ポチ太、可愛いじゃん!ね、ポチ太。」
『だとさ。お前の名前はポチ太に決定なんだと。』
『ワシはお嬢さんが良ければそれで結構じゃよ!』
「おー凄い。本当にしゃべる。」
「ちなみに能力を使わずにこっちでしゃべってることはそんなに分からないらしい。」
いちいち能力で何を言っているのか説明してやらないと話はできないということである。
「ふーん。犬の言葉も結構難しいんだねぇ。」
ポチ太を抱きかかえて、そう言った。
『ほっほっほ!やっぱり若い娘の肌はええのぉ!すべすべして気持ちいいぞい!』
さっと友里からポチ太を奪って、強めに頭をなでなでする。
『何!何をするっ!』
『くれぐれも妹には手を出さないように!』
『分かっ、分かった!じゃから離せ!』
「ポチ太なんかすっごい嫌そうだよ。」
「良いんだ。やっぱり躾はちょっと厳しめにしなきゃあな。」
こうして俺たちの家族に一匹新しい仲間が加わった。
佐々木家に新たな仲間が加わりました!
名前はポチ太!ポチ太?
先行きが不安な気がしなくもないです。
ともあれ明日も連続投稿!
ぜ ひ 見 て ね !