最諦の男
我妻は右手に握りしめた黒く禍々しい槍をこちらに向ける。
「…これは、【最諦の槍】。刺されば最後、全てを諦める槍…。」
「…そんなもんが、あったなら、最初から使えば良かったんじゃないか?」
俺の問いに我妻は首を横に振る。
「…これは今作ったんだ。僕が、君を諦めさせるために。」
「刺さったら最後、君は全てを諦めるざるをえない。…存在すら保てなくなる。」
「!?」
学校の人間を消した力を具現化させたっていうのか!?
「・・・僕にこれを使わせないでくれ。これが最後だ、もう、諦めてくれ…。」
「あんたの…身の上話聞いてハイ、帰ります、だなんて言えないね。」
我妻の心を諦めさせる攻撃(?)を食らって正直、立っているのもしんどい。立ち続けるのを体が拒否しようとする。心が折れそうってのはこういうことをいうのだろうか。
「…俺は、あんたを助けたい。」
正直な気持ちを我妻に伝える。
「助ける?君に何ができる。」
キッと睨み付ける我妻。
「…確かに俺じゃ、無理かもな…。でも、一緒に方法を探すことはできんだろ!」
「…そんなものがあるはずが…!」
「だから…!!最初から諦めてんじゃねえよ!!!」
「!!」
「確かに、あんたはずっと…ずっと一人で考えてたんだろうな。他人を巻き込まないために、他人を傷つけないために!」
「だけどなぁ!ここに、あんたの力が効かなかった人間がいるんだ!だったらわずかでも希望をもってもいいだろ!!」
「うぅ…!うるさいうるさいうるさぁぁぁい!!!」
我妻は激しく頭をふり、叫ぶ。
「もう黙れぇぇ!!さっさと諦めて僕の前から消えろぉぉッ!!!」
我妻の手から槍が放たれる。
こいつを受けたら死ぬかもしれない…!でもここで俺が受けきってやればあいつももしかしたら希望を持てるかもしれないんだ!!
俺は、あいつを助けたい…!!
両手を広げ受け入れる姿勢をとる。
「!!どう…して…。」
その姿に驚愕する我妻。
ドスッ!!
槍が深く、神無の身体に突き刺さる。
視界が、黒く、染まっていく。
――――――俺は、死んだのか…?
―――やっぱりあいつを…我妻を助けるなんてできなかったのか…?
――意識が…ゆっくりと、消えて。
―…。
まだ終わりではありません。
声が、聞こえる。
あなたの力は自分を犠牲にしてでも人を助ける力。
誰だ…?
あなたはあの者を救うために自分を犠牲にしようとした。
…。
今一度奇跡を。
あなたの犠牲のその先に。
「ぐああああ!!」
両腕の激痛で視界が戻る。
熱い…!焼ける、いやまるで溶けるようだ…!
いや、溶けるようでは無い。実際に俺の肩から先の両腕はドロドロに溶けていた。
「さっきの、声は…。」
「なん、なんだ君は…!何で消えない…!それにその腕は一体…。」
一瞬のできごとだったのだろうか。我妻は驚き戸惑っている。
「ぐッ…!なる、ほどな…。あんたの力を、受けきるための『犠牲』か…!」
「何を、言ってる…?」
動揺を隠せず後ずさりる我妻。
「これで、わかっただろ…!」
神無は残りの力を振り絞りいっきに我妻に向かって駆け出す。
「そんな力を使ったとこで・・・!!」
勢いにのったまま頭を振りかぶり。
「俺は!!絶対に!!!諦めない…!!!!」
ゴオォン!!
我妻の頭に渾身の頭突きを喰らわせる。
「がっハァッ!!!」
その勢いのまま二人は倒れこむ。
神無はなんとか膝と肩を使い立ち上がろうとする。
「これで、わかった、だろ…?あんたの、力が、効かない人間がいるんだ。きっと、消せる奴だ…って…。」
そう言うと、神無はその場に倒れた。




