プロローグ・神無祐人(かんなしゆうと)
――私が犠牲になることで誰かが救われるなら私はそれでもいいと思う。
それが死んだ母さんの口癖だった。
数年前、母さんは車に轢かれそうになった俺を守って死んだ。
そしてその後、生き残った俺には不思議な力が宿っていた。
――「きゃあああ!!誰かあ!!」
前から聞こえた悲鳴にハッと先をみる。
悲鳴を上げたと思しき女性が転んでいる、その先には乳母車が車が飛び交う道路へ飛び出そうと
していた。
このままじゃ乳母車が轢かれちまう!
俺はそう思うとともに駆け出した。きっと世界記録なんて目じゃないスピードだったと思う。
ガッ!!
…道路に飛び出す寸前のとこでなんとか乳母車を捕まえ赤ん坊を助けることができた。
――ズキンッ
「グッ!!」
左手薬指に強烈な痛みが走る。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
足を挫いたのか後から母親と思われる女性が足を少しひきながらお礼を言ってきた。
「あの大丈夫ですか?どこか怪我をなさったのでは…」
――――ズキンッ
「い、いえいえ、大丈夫です!気にしないでください。むしろお母さんこそ足大丈夫ですか?」
俺は襲ってきた痛みに耐えながら話しかける。
「は、はい。私はもう家が近くですし。」
「それでしたら、家までお送りしますよ。」
できるだけ 俺には 何事も 無かったように 話し続ける。
「いえいえ!そんな、悪いです!」
「いえ!また転んだりしたら大変ですし、お送りしますよ。」
母親達を家まで送り届け、また学校に向かう。
俺は痛みの感じる左手をじっと、見る。
薬指はあらぬ方向へ反り、骨折していた。
「ハハ…俺の薬指一本で赤ん坊を助けることができたんだ。上出来じゃないか。」
――――これが、俺に宿ってる力
誰かを助けるために自分が犠牲になることで奇跡を起こす、不思議な力。




