14 今後どう動くかを決めるための現状確認
民兵とは徴兵された民衆である。
職業として兵士をしてる者達と分けるためにこう呼ばれる事がある。
専門で兵士をしてる者と比べれば、軍事能力に大きな差があるからだ。
なにせ、普段は別の仕事をしてるのだ。
田畑を耕したり、様々な肉体労働をしたり。
こういった者に武装を施しても、専業兵士ほどの働きは期待出来ない。
だから専門の兵士と区別するために民兵という呼び方が存在する。
こういった民兵には二種類ある。
一つは、兵役についてる者達。
一定の期間、民衆から徴用されて兵士として活動する者達だ。
いわゆる徴兵で思い浮かべるものになる。
もう一つは、予備役。
普段は一般人として活動し、戦争などの非常時に兵士として活動する者だ。
希望者だけが登録し、戦争などが起こると優先的に兵士に徴用されていく。
これは徴兵などの兵役経験者だけに限られたものではない。
一般人でも望めば登録は出来る。
この予備役にも一応訓練は課される。
まず、兵士として最低限必要になる初期訓練。
これを一か月行う。
もちろん、たった一か月で全てを身につける事は出来ないが。
それでも最低限必要な事をおぼえる事になる。
当然であるが、兵役経験者はこの初期訓練は免除される。
これが終わると、年に何回かの訓練に参加するだけになる。
おおむね一週間ほど、おぼえた事を忘れないようにだ。
もちろん、必要最低限の事だけしか出来ない。
しかし、このわずかな訓練でも、何も知らない状態よりはマシになる。
やる事が槍の素振りに、荷物を持っての行軍訓練くらいでもだ。
ゲールの所にやってきた民兵は、予備役の方だ。
緊急時ということで実家の子爵家が集めたのだ。
これにゲールは素直に感謝した。
「ありがたい」
これで多少は作戦の幅を広げる事が出来る。
総勢20人。
決して多くは無いが、弱小とも言えない。
ゴブリン相手ならそれなりに有利に戦える。
それだけの数にはなった。
「さて、どうする」
あらためて作戦を考える。
増員されてそれなりの兵力になったゲール達。
この人数で何をする、何が出来る。
それを考えていく。
配下の者達と共に。
「お前達の考えを聞きたい」
集めた従士達に問うていく。
腕を組むグロスデン。
略地図を眺めるサイト
そして、
「まずは今の状態についてまとめます」
そう言って村をとりまく状態を一人の兵士が伝えていく。
発言をしている従士はロンドル。
作業の管理などをしてる者だ。
誰がどこで何をしてるのか、行った作業は現在どういう段階にあるのか。
これらを最も把握している。
これから何をするのかを考えるためにも、まずは彼に現状を伝えてもらわねばならない。
「まず、村の防衛ですが。
備えは最低限必要な備えは用意できました。
とりあえず、攻めこまれてもどうにかなるはずです」
とはいえ、完全というわけではない。
戦えば損害を覚悟しなくてはならない。
「次に周辺の警戒ですが。
手隙の人に見まわりをしてもらってます。
最近だと、村から寄越してもらった3人が中心になって行ってます」
こうした見まわりによって、ゴブリンなどの危機が無いかを確かめている。
とはいえ、今のところゴブリンが村の近くまでやってくる事もなく。
見回り・巡回は散歩と大差はない。
平和なのは良い事ではあるが。
「ゴブリンが襲ってきた場合の避難などですが。
こちらも準備はととのいました。
老人に女子供が即座に逃げられるようにはなってます。
移動用の荷馬車なども問題ありません」
戦闘に巻き込まれる者を減らす準備も出来ている。
特に子供が無事なら、村が潰滅しても復活させられる可能性が残る。
これらをどうあっても安全圏まで逃す必要がある。
「襲われた場合の戦闘態勢もどうにかまとまりました。
一応、武器になるものを持って応戦する手はずになってます」
村に残る男達にはゴブリンの撃退に参加してもらう。
もっとも、ろくに訓練もしてないのだ。
円滑な動きは期待出来ない。
それを覚悟で率いるしかない。
ここまでは良い。
上手くいってる。
だが、問題なのはここからだ。
「それと、ゴブリンですが」
もっとも重要な部分に話がさしかかる。
監視からおくられてくるゴブリンの動向。
これについては既にゲールも報告を受けてる。
この場に居る従士にも話は共有されている。
だが、あらためてその内容を確かめておかねばならない。
だが、内容が内容だけに、ロンドルも言いよどんでしまう。
口も気分も重くなってるのだ。
それでもゲールは先を促す。
「続けろ」
「はっ」
軽く頭をさげて応じるロンドルは、最新の情報をあらためて皆の前で告げた。
「ゴブリンですが…………。
森の奥から増援がやってきてます。
大雑把に数えたところ、50匹が追加。
総勢100匹になってます」
その数にゲール達は顔を強ばらせていった。
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【よぎそーとのネグラ 】
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