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騎士ゲール・ホッドによる討伐伝 ~あるいは、一人の騎士が英雄になるまでのサーガ~  作者: よぎそーと
一章

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13/56

13 手の中にある駒を使うしかない、無いものは使えないのだから

「けど、どうする?」

 夜、一人になって問いかける。

 誰にともなく。

 これからの事を。



 ゴブリンに対抗して、出来る事はしている。

 村の防備は少しずつだが進んでいる。

 偵察・監視もつけている。

 襲われても即座に対処できるだろう。

 戦えば勝てるだろう。

 だが、損害も大きくなる。



 ゴブリンが襲ってきたら、村の者達にも防戦に出てもらう。

 その為の防御陣地らしきものも作ってる。

 土嚢を積み上げた壁を幾つか造った程度だが。

 無いよりはあった方がマシではある。

 これらを盾に、ゴブリンの突撃を防ぎ、土嚢の壁ごしに攻撃をする。

 これで損害は幾らか減らせるだろう。



 だが、決定打がない。

 ゴブリンに対して切り込んでいける兵力がない。

 出来れば専門の熟練した兵士が欲しい。

 騎士に従う従士ほどではなくてもだ。

 専業の兵士がいてくれると助かる。

 もっとも、そんな人間はそれなりに貴重だ。

 ゴブリン退治に遣わされる事はまず無い。

 よほど大勢で襲ってこない限りは。



 となれば、手っ取り早い手段は傭兵や探索者になる。

 傭兵は文字どおり、雇われ兵士である。

 探索者は怪物や魔物、妖精などを倒す事を専業にしてる業者だ。

 どちらも金銭で一時的に雇う事が出来る便利な兵力だ。

 ただし、値段は相応にかかるので、おいそれと雇えるものでもない。

 一時的にであれば、専門の兵士を抱えるよりは安上がりになるが。

 今のゲールにはこれらを雇う資金がない。



 確保出来てるのは、村から提供された若者だけ。

 訓練を付けてる3人がこれにあたる。

 更に狩人も加わってくれている。

 こちらは狩場である森にゴブリンがうろついてるから、倒さないと稼ぎに関わるからだ。

 これらが臨時で確保できた兵力といえる。

 あまり意味はないが、もし分類するとしたら義勇兵となるだろうか。



 この協力者である義勇兵達と従士をあわせて、なんとか10人。

 たったこれだけがゲールが扱える兵力になる。

 50匹になろうとするゴブリンに対抗するにはさすがに足りない。

 もし戦うとしたら、ゴブリンを村に引き寄せ、村人全員で防衛にあたる事になる。

 こうなれば村の働き手の年代の者達も防衛に参加する。

 そうなれば兵力は互角以上。

 防衛の有利さもあいまって、ゴブリンを圧倒できるだろう。



 もっとも、ゴブリンが思い通りに動いてくれるかどうか。

 上手く誘導すればどうにかなるだろうが。

 そうそう思い通りに操れるものではない。

 ゴブリンはバカで愚かだが、一応は智慧がある。

 何より、意思や思惑を持っている。

 自分の望み通りに動くのであり、他者の意思や意見をくみ取るわけではない。



 なので、出来ればこちらから出向いて討ち取りたい。

 相手の出方を待つよりはよっぽど思い通りに動ける。

 主導権も握れる。

 好きなときに好きなように攻め込める有利さもまた大きな利点だ。



 その為には兵力が必要になる。

 現在の、どうにか10人になるくらいの頭数ではどうしようもない。

「増援がなあ」

 どうしても追加の兵力が欲しい。



 要望は届けている。

 ゴブリンの数から考え、現状では防衛するのも大変だと。

 勝てなくは無いが損害は大きくなると。

 だから出来るだけ多くの増援が欲しい。

 報告と同時に要望も出してる。

 しかし、返事はなしのつぶてだ。



 兵士を出すのも費用がかかる。

 それは分かるのだが。

 ここで兵力をケチって損害を出せば、村の労働力が減る。

 それは収穫の減少に繋がり、長期的な損失になる。

 それを抑えるために、出来るだけ兵力が欲しかった。

 それも出来るだけ大勢の。



 大兵力で敵を一気に蹴散らす。

 勢いの持たせて相手を殲滅する。

 これが出来れば損害をそれほど出さずに済む。

 短期で終わらせれば、出費もその分抑えられる。

 長い目でみれば、これが一番得になる。



 だが、そこまで考える者はいない。

 ごく一部の例外だけが全体の利益や損害を考える事が出来る。

 これが出来るゲールには、たとえ目先の損をとってでも、敵に一撃で大打撃を与える事を考える。

 しかし、それが出来ない者は、小数の戦力でどうにか敵を撃退しようと考える。

 こうする事で発生する損害を思い浮かべる事もなく。



 やむなき事だが、今のゲールには手持ちの兵力での戦い方を考えるしかない。

 出来るだけ損害を出さず、なおかつ短期間で片づけるように。

 出来たら苦労はしない。

 こんな事、古今東西の英雄・名将だけがなせる事だ。

 己を凡百の一人と自認するゲールには荷が重い。



 だが、やるしかなかった。

 無いものを使う事は出来ないのだから。

 今ある全てでどうにかするしかない。

「どうするかな」

 略地図の上に駒代わりの置物を配置して考える。

 何をどうすれば効率的に動けるだろうかと。

 騎士としてゲールは考えねばならなかった。

 従士をはじめとした兵士を率いる立場なのだから。


 そんなゲールに朗報が届く。

 実家の子爵家が臨時編成の兵士を送ってくれた。

 農民を徴用した民兵ではあるが。

 これが10人、新たな兵力として加わった。

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