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48話 騎士のように

 ヒナギクを守る。


 そう言って、ヒナギクを背中に隠すようにして「フルメタルボディズ」の4人との対峙を始めたレン。


 しかしその戦況はかなり一方的なものとなっていた。


「「重撃震」!」


「っ!」


「はっ、がら空きだぞ!」


「がっ!」


「フルメタルボディズ」の4人はそれぞれにメイスや斧等の武術を使ってレンを攻め立てていた。その攻撃をレンはその一身で受け止めていた。


 決して背中にいるヒナギクには余波がいかないように必死の形相で「フルメタルボディズ」と対峙していた。


 だが、それはよりレンを追い込むものだった。


 本来のレンの戦闘スタイルは、高速機動で連続での攻撃を放つというもの。


 決して脚を止めないことが生命線であるレンがいまは脚を止めて、「フルメタルボディズ」の猛攻に耐えていた。


 ミカヅチとその鞘を両手に持ち、交差させることで防御を固めていた。


 だが、攻撃力は高めであっても、防御力は低いレンがいくら防御を固めたところで、重武装かつ高攻撃力の「フルメタルボディズ」の前では焼け石に水のようなものだった。


 それでもなおレンは「フルメタルボディズ」相手に防御を貫いた。


 レン単独であれば、防御以外の方法もあった。相手の隙を衝いて攻撃を仕掛けながら包囲の輪から抜け出すこともできた。


 だが、レンの後ろにはヒナギクがいた。レン単独であれば抜け出すことは難しいが、できないわけではないのだ。


 しかしヒナギクがいると話は変わる。ヒナギクを連れて包囲から抜け出すことはできない。


 だというのにヒナギクだけを窮地に追いやったまま、包囲から抜け出すことなどレンは選ばなかった。


 そもそもレンの思考にはヒナギクを置いていくという発想に至らない。


 だからこそ、レンは脚を止めて防御を固めた。


 スピードタイプのレンが、現在は脚を止めて重武装の「フルメタルボディズ」の4人でひとりで対峙するという不利な状況で戦うのは、ヒナギクがいるからである。


 ヒナギクのためレンは、全身を傷だらけにしながらも守りを固めていた。


「いい加減、倒れろ!」


「フルメタルボディズ」のひとりが息を切らせながら武術なしの攻撃を放った。


 レンはミカヅチと鞘を交差させて受け止めた。


 だが、腹部はがら空きとなっている。そこにメイスの一撃が飛んできた。


 避けることはできない。レンは身を持って受け止め、血を吐いた。


「おい、まだ倒れないのか」


 猛攻を続ける「フルメタルボディズ」は息を切らせていた。


 しかしそれほどの猛攻を受けてもレンは倒れることなく、立っていた。


 立ってみずからのEKを構えていた。EKを構えるその表情もその目もいまだ死んではいない。強い輝きを放っていた。


「ひ、ヒール!」


 そんなレンへとヒナギクは慌てながらも回復魔法を使っていた。


 いまのようにHPが減るたびにヒナギクが回復魔法を使っているが、HPの減り方に比べて回復が追いついていないのだ。


 それでもなおレンは立っていた。立って戦っていた。


 その姿はまさにおとぎ話にあるような騎士のようであった。そんな騎士然としたレンの姿に、観客席から声援が飛んでいた。


「が、頑張れ!」


「負けないでー!」


 当初声援をする側は女性プレイヤーが多く、やっかみをしているのは男性プレイヤーが多かったのは言うまでもない。


 しかしいまやほとんどのプレイヤーがレンへと声援を送っていた。


 圧倒的に不利な状況においてもなお、闘志を失わないその姿に目を奪われた者、大切な者を必死に守ろうとするその姿に心を打たれた者。


 理由は様々だが、レンの行動に心を打たれたプレイヤーたちがレンへと声援を送っていた。


「フルメタルボディズ」の4人はさながらアウェーでの試合のようなやりづらさを感じていた。


 とはいえ、感じているのはあくまでもやりづらさだけだ。戦えないわけではない。


 むしろレンを倒すのはとてもたやすい状況にあった。


 そう、たやすい。たやすいはずなの「フルメタルボディズ」の4人は攻めあぐねていた。


 猛攻を仕掛けているはずなのに、息が上がるなどありえない状況であるはずなのに、息を先にあげているのは「フルメタルボディズ」の4人だった。


(あの目。あの目がヤバい。なんなんだよ、あの目に見られるだけですげえ動きづらいぜ)


 それは「フルメタルボディズ」の4人の総意だった。


「フルメタルボディズ」の4人を見つめるレンの目。その目から放たれている圧力に「フルメタルボディズ」の4人は呑まれてしまっていた。


 その圧力に無理やりさからっての攻撃であるため、「フルメタルボディズ」の疲弊度は大きくなり、かつレンへの攻撃も腰が入っていない一撃になっていた。


 それでももともとの攻撃力が高いため、ある程度のダメージを与えられているのだが、ある程度のダメージではレンを倒すことはできなかった。


 ヒナギクを守る。


 そんなレンの強い意思が「フルメタルボディズ」を圧倒していた。


 しかし意思の力で圧倒したところで、レンが現在死に体であることには変わりなかった。


 このままいくら粘ってもレンが勝つ目は訪れない。


 それは誰の目からみても明らかなことであり、レン自身も重々承知していたことだった。


 それでもヒナギクを背にしている以上、みずから攻撃を仕掛けることはレンにはできなかった。


 できないまま、「フルメタルボディズ」の4人との対峙を続けていた、そのときだった。


「もう、いいよ。もういいってば、レン!」


 ヒナギクが叫んだ。叫びながらヒナギクはレンの体を揺すった。


 しかしレンはなにも言わない。なにも言わないままミカヅチを構え続けていた。


「レンってば!」


「……大丈夫。俺は負けないから」


 レンは笑っていた。にこやかに笑うレン。その笑顔にヒナギクは言葉を失った。


 そんなレンにと「フルメタルボディズ」の4人が声を上げて殺到してくる。


 ひとりひとりの攻撃で倒せないのであれば、一斉攻撃であれば。そう考えたのだろう。


 だが、その考えこそが試合を、ある意味泥沼化していた試合を大きく動かす一手となったのだった。


 そのことに気づかぬまま、「フルメタルボディズ」の4人の攻撃はレンへと放たれた。会場内を鈍い音がこだました。

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