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レトロ喫茶のマスターは珈琲より紅茶がお好きなようです  作者: あざらし かえで
第六章 三人の新しい関係

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63.嬉しい報せ

 俺の気持ちを伝えてから一週間後、カウンターでコーヒーを淹れていると入り口のベルが鳴り響いた。

 自然と顔を上げると、意外な人物が入ってきたことに気づく。


「あ……」


 俺が気づくのと同時にとっきーが反応して、一瞬表情を曇らせた。

 だけど、すぐに表情を接客モードに戻してお客様をお迎えに行く。


「……いらっしゃいませ」

「こんにちは。今日は少し話があってね。カウンターに座らせてもらってもいいかな?」

「ご案内します」


 とっきーは相変わらず渋い顔をしていたけど、カウンターまでお客様をご案内してくれた。


「北條さん、いらっしゃいませ」

「こんにちは、永瀬君。今日は君に話したいことがあってね」


 北條さんは柔和な笑みを浮かべながら、優雅に俺の前の席へ座る。

 話って言われると、やっぱり再開発のことなのかな?


「ご注文は?」

「プラコレブレンドを」

「かしこまりました」


 俺がコーヒーを作る間も、北條さんはにこやかな笑みを浮かべながらこちらを見つめてくる。

 少し照れ臭い気持ちになっていると、とっきーがちらちらと俺の様子を確認してくる。

 北條さんも分かっているみたいで、一瞬苦笑したあと目線をテーブルへ落とした。


「話というのは例の開発の話だ」


 北條さんの言葉にコーヒーを淹れていた手が止まる。

 お湯を注ぎすぎそうになって、慌てて調節する。

 俺の様子を見ても、北條さんはにこやかな表情のままだ。


「すぐに伝えに来てくれたんですね。ありがとうございます」

「君たちと会った後、社長とすぐに話をしてね。会議で話してもらったんだ。その時に私の意思も役員へ伝えてもらった」


 北條さんは俺が淹れたコーヒーを優雅な仕草で飲むと、また優しく微笑んでくれた。

 俺は緊張を必死で隠すように笑顔を返す。


「その……結果はどうなりましたか?」

「不安にさせてしまってすまない。結論から言うと、君たちの店がすぐになくなるということはなくなった」

「そう、ですか。でもすぐにということは……いつか店がなくなる可能性はあるってことですか?」


 畳みかけるように聞いてしまってから、お客様に聞く態度ではなかったと思い直して謝ると北條さんは大丈夫だと微笑しながらカップに口付けた。


「詳細は省くが商店街の開発計画が見直されることになった。それと、店を売りたいと言ってくれた人に対しては新しく商売を始められる場所を用意させてもらうつもりだ」

「開発計画の見直し……? でも、良かった。みんな様々な事情があるだろうから新しい場所に移りたい人もいるだろうし……」


 残念だけど、みんながこの商店街に残って商売を続けたい訳じゃないもんな。

 みんなにはみんなの考えがある訳だし、だったら少しでもいい条件で移りたいはずだ。

 

「これで許してもらえると嬉しいのだが……またコーヒーを飲みに来てもいいかな?」


 北條さんは片目を瞑って確認してくれたので、勿論と笑って答える。

 遠目でこちらを確認していたとっきーは、食器を片づけるタイミングでカウンターへ寄ってくる。


「その顔は……良い話だったみたいだな」

「うん。後で話すよ」


 とっきーに笑顔を向けると、とっきーは北條さんの様子をちらっと確認してから何事もなかったような顔でキッチンへと消えていった。

 今、お仕事中だから余計なことはできないはずだからな。

 さすがに何もしないと思うけど……。

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