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レトロ喫茶のマスターは珈琲より紅茶がお好きなようです  作者: あざらし かえで
第六章 三人の新しい関係

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64.これからも続く日常

 北條さんの話を聞いて、少し安心できた。

 絶対という訳じゃないけど、すぐにどうこうってことじゃないのなら対策も考えられるはずだ。


「私も更にこの店の良さを伝えていくつもりだ。そうすれば、経営者としても価値あるものだと判断するに違いないからな」

「開発側の皆さんにも来ていただきたいですし、北條さんからもたくさん宣伝していただけると嬉しいです」

「勿論だ。私もこの店が続いて欲しいと願う客の一人だからな。任せてくれ」


 北條さんの心強い言葉にホッとしながら、この後は他愛のない会話を楽しんだ。


 +++


 閉店後、少し時間をもらって史弥君にも残ってもらい先ほど北條さんから聞いた話を伝えた。

 史弥君は経緯を知らなかったみたいで驚いていたけど、働き先がなくならなくて良かったと笑ってくれたので話を続ける。


「俺もどうなってるかなと気になってたんだけど、良い方向には向いてるみたい」

「折角働きだしたのにすぐに店がなくなるところだったなんて。とにかく良かった」

「ふーみんにはまだまだ働いてもらわないと、紹介した先輩のメンツが潰れるってもんだし」


 とっきーが史弥君にダル絡みを始めると、史弥君のスマホが震えてご両親から呼び出しを受けたと教えてくれた。

 

「残ってくれてありがとう。伝えたかった話はできたからあがっちゃって大丈夫だよ」

「すみません、マスターありがとうございます。じゃあ、お先に失礼します!」

「気を付けて帰れよー」


 とっきーも史弥君を開放して、ひらひらと手を振って見送ってあげてる。

 静かに話を聞いてくれていたげんちゃんも、そっと手を振って見送ってるのが少し可愛らしくて笑ってしまった。


蒼樹(あおい)、どうした?」

「いや、げんちゃんが律儀だなと思って」

玄暉(げんき)、蒼樹に可愛がられたいからって点数稼ぎするなよなー」


 とっきーが変な理由でげんちゃんに絡むから、俺は仕方なくとっきーの頭をよしよしと撫でてやった。


「はいはい。とっきーはだる絡みしない。これからも三人で仲良くやっていくんだから。ね?」

「俺だけ年下扱いされるのは納得いかないんだけどさー。でも、蒼樹に撫でられるのは嬉しい」

鷺羽(ときは)……蒼樹の手を煩わせるな。そうやって優しさに付け込むところはよくないところだ」


 げんちゃんが真っ当な意見を言うから、とっきーも渋々分かったよと返事をする。

 俺はとっきーの頭から手を離して、改めて二人に視線を向けた。


「二人とも、本当にありがとう。これからも色々とあると思うけど……この店が長く続いていくように頑張ろう」

「なんだよ、改まって。この店のことも蒼樹のことも、俺たちに任せろって」

「鷺羽の言う通りだ。俺たちは店と蒼樹を守っていく。だから、任せてほしい」


 今は完全に喜べない状況だけど、北條さんの協力もあってこの場所で店を続けていけそうだ。

 だから、マスターとしてレトロ喫茶プラムコレクトを盛り上げて守って行こう。

 俺には最強の幼なじみ二人がいるんだから、絶対に大丈夫だ。

 それに、史弥君だってバックアップしてくれてるし手が足りなくなったらまた仲間を増やして頑張ることだってできる。


「という訳で……蒼樹。久しぶりに飲もう。祝杯あげるしかないっしょ」

「鷺羽は能天気だと言いたいところだが、俺も賛成だ。蒼樹、今日くらいは少しだけ羽目を外してもいいと思う。蒼樹もずっと張り詰めていただろう?」

「でも、明日も仕事……まあ、飲み過ぎない程度ならいいか。特にとっきー、明日に残るような深酒は禁止だからな? マスター命令だ」


 ビシッと指を突きつけると、とっきーは両手をあげてマスター様の仰る通りにーとか言って笑わせてくる。

 げんちゃんは何度も頷いてるし……ホント、変なところで意気投合するんだよな。


「じゃあ、行こうか。店はとっきーに任せた」

「了解! ここからサクっと飲める店は……おしゃれな店じゃなくていいよな?」

「俺はビールが飲みたい」


 店を後にして、三人でいつものように会話を続ける。

 変わらない日常がこれからも続くといいなと願って、俺は二人に挟まれるように真ん中に入り込むと二人の腕を取る。

 驚く二人の顔を見ながら笑いかけると、腕を組んで二人を引っ張るようにゆっくりと歩を進めていった。

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