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「神社の事は、私に任せてちょうだい!きっと大試君が満足できる荘厳でちょっとだけセクシーな場所にして見せるわ!」
そう言って水城は俺を王都へと送り出した。
去り際、紅羽が手を振っていたが、俺としてはもう少し長居する気だったんだけれどもなぁ……。
もっと紅羽を可愛がったり可愛がったりしたかった……。
とはいえ、婚約者と妹に送り出されたならば留まれない。
果たして、俺から「じゃあ任せますね」と言質を取った彼女は、どんなサイズの石像を作るのか気になる所ではあるけれども、任せるといった以上完成まで楽しみに……楽しみかな?まあ、待つことにしよう。
仕方なく王都へと帰還した俺は、早速厄介な仕事を頼まれていた。
本来2年生と3年生は、まだ春休みなんだけれども、その仕事のせいで登校している。
「えーと、キミ、制服どうしたの?」
「……すみません、なんとか誰かからお下がりを貰いたかったのですが、間に合いませんでした」
「お下がり?どうして?」
「お金が無いからです……」
「んん?カスタムしたり、オーダーメイドするなら自己負担だけれども、学園指定の服屋で用意されてる既製品なら、サイズを合わせてから無料でもらえるんだぞ?知らなかったのか?確か、入学案内に書いてあったはずだけど……」
「そんな制度が……?すみません……。この前両親が死んで、なんていうか、それ所じゃなくて……」
「おおう……」
俺が、新生徒会長の彩音を後援したことで、生徒会のお手伝い的なポジションにならないといけなくなった俺は、今日入学の新入生たちの中から、何かしら問題のある者たちの対処をする係にされてしまった。
てっきり、揉め事を起こす馬鹿を叩きのめしてしまえば終わりなんだろうくらいに考えていたんだけれども、そんなホットケーキだかパンケーキだかにかけたら美味しいだろうと思えるくらいに甘い考えだった俺の頭に冷や水をかけてきたのが目の前の女の子だ。
受付をしていた教師に付き添われて、トラブル解決用に用意されたテントで待機している俺の所に連れてこられた彼女。
セーラー服で来たから、何かの間違いなのかと思ったんだけれども、なんかすっごいヘビーな事を言われてしまってキツイ。
俺が予想していたトラブルと違い過ぎて、割と慌てている俺。
「うーん……。例えばだけど、入学式を休んで、その間に服屋にいって制服に着替えてくるのはどうだ?クラス分けの試験までには戻ってこれるようにするから」
「でも、タクシー代もなくて……」
「いや、そこは気にしなくていい」
「それは流石に悪いような……」
「交通費なんてかからない移動方法だから、本当に気にしなくていいぞ」
「それなら……あの、お願いできますか?」
「わかった。早速行くぞ!」
「えっ……キャッ!?」
幸薄な感じの女の子をとりあえずお姫様抱っこして走り出す。
あわよくば、入学式が始まる前に戻ってこれたらいいなと思いつつ、障害物の上を飛び越えるようにしながら最短距離で。
「なんなんですか!?なんなんですか!?なんなんですか!?なんでこんなに速いんですか!?」
「口閉じてないと舌噛むぞ……あ、ヤバイ。人生で地味に言ってみたかった言葉を言えた」
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!?」
腕の中の女の子がちょっと涙目になっている気がするけれども、ゴーグルでもあった方がよかっただろうか?
風で目が乾くよね。
わかるよ。
関係ないけれど、走っている途中で、「そういえば学園の購買でも買えたんじゃね?」と気が付いたけれど、もう遅い。
辿り着いたのは、ファッションセンターしめさば。
王立魔法学園の生徒は、貴族が多いとはいえ、平民の中でも魔力量が多い奴が入学することもある。
そうなったときに貴族御用達の服屋でしか制服が買えないのは、流石にちょっと可哀想だという事で、王都のしめさばであれば、どこででも王立魔法学園の制服が買える……らしい。
俺自身は、有栖からオーダーメイドで用意してもらったもんだから、よく知らんのだ。
「いらっしゃいませ~」
「すみません!この娘に王立魔法学園の制服を!超特急で!」
「え!?……畏まりました」
「…………」
突然勢いよく入店してきた俺達に慌てた雰囲気を出していた店員さんだったけれども、すぐさまプロの顔になり、心なしかぐったりしている女の子を連れて制服が置かれている特設コーナーへと向かってくれた。
流石しめさばだ。
ソフィア様効果によって店員たちがどんどん鍛えられているという噂は本当なのかもしれない。
そして10分後、ピッカピカの新入生の姿となった女の子がそこにいた。
制服だけじゃなく、靴下だの靴だのまで新調されている気がする。
素晴らしい早さだったな。
レース中にピットインした車のタイヤ交換みたいに滑らかだったように感じた。
……あれ?魔法学園の制服に着替えるのはわかるけれども、なんで髪型まで変えてあるんだ?
いいけどさ……。
「超特急完了しました。このまま学園へ?」
「はい!なんか色々制服以外の物も用意してもらえたようなので、請求は学園の犀果までお願いします!」
「かしこまりました!ありがとうございました~」
「………………」
良い笑顔で送り出す店員。
さっきより更にぐったりしたように見える女の子を再度お姫様抱っこして、先ほどと同じルートで学園画と戻った。
「…………いや、アンタ、ほんといい加減にしなさいよ?」
「何がだ?頑張ってトラブル解決したぞ?」
「初対面の女の子をいきなりお姫様だっこして街中を駆け抜けるのは、また別のトラブルでしょ!?」
「そうだろうか……?」
「大体ねぇ!アタシだってお姫様抱っこして欲しいのに、なんであの娘にして私にはしないのよ!?」
「しないって訳じゃないけれども……え?して欲しいのか?今するか?」
「してよ!」
王女として、入学式で挨拶をしないといけない有栖と、聖女として同じ理由で聖羅も会場で待機している。
理衣は、前生徒会の中心的メンバーだったのもあって新生徒会の彩音たちを直接サポートしているし、絢萌はそもそもまだ実家から帰ってきていない。
そんな訳で、今近くに居る身内といえば、お願いしたら手伝いに来てくれたリンゼだけなんだけれども、戻って来て早々めっちゃ怒られていた。
お姫様抱っこしていた女の子は、フラフラとしながらも何度もお礼を言いながら卒業式会場へと向かったというのに……。
頑張ったおかげで、まだ入学式開始前だぜ?
至らない点は多々あるかと存じますか、その努力は、是非考慮して頂きたい。
俺の腕に抱きあげられ、俺の首に腕を回しながら、とりあえず満足したらしいリンゼ。
しかし、そこから何かを思い出したらしく、また表情が曇ってしまった。
「それにしても、咲愛がそんな状態になってるなんて……」
「サキア?」
「……もしかして、あの娘の名前も知らずにあんなお節介してたの?」
「知らないけれども、お節介が必要な場面だっただろ?」
「そうかもしれないけれども……よりにもよって……」
リンゼは、そこからブツブツと何かを言いながら考え込み始めた。
もう入学式が始まっていて、周りには誰もいないからいいけれども、傍から見たらかなり不思議な光景だろうなぁ……。
美少女がモブっぽい男に抱えられてブツブツとしかめっつらで何かを呟いている風景だもん。
不思議な空間だ。
「一応確認なんだけど、涅 咲愛について、アンタは何にも知らないのよね?」
「知らないなぁ……。親が最近死んだらしいって事しか」
「はぁ……厄介ね……」
「厄介ってなぁ……。この世界作ったのお前だろ?その厄介も多分お前のせいなんじゃないのか女神様?」
「話は変わるけれど、あの娘ってオンライン版のサブヒロインだから。途中から敵サイドに行くけど」
「なんつう世界作ってんだ女神様……」
「この世界だと、オンライン版の敵組織が多分結成されていないから、勝手に闇墜ちしかけてただけなんでしょうね。まさか、必要あるんだか無いんだか微妙で人気無い要素がここまでしっかり再現されてるなんてビックリよ」
責任追及に対して無言を貫く事に決めたらしい女神様。
彼女が満足するまでお姫様抱っこをする必要がありそうなので、その間の暇つぶしにリンゼから咲愛という新入生の情報を聞くことにした。
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