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俺達日本からの代表団が滞在するホテルは、中々豪華な巨大ホテルを1つ丸々貸し切りにしてあった。
やるじゃんアメリカ!
「おっきいにゃー」
「まあ、白川郷リゾートには、もっと豪華なホテル幾つもあるけどな」
「張り合う辺りちっちぇーニャー」
「ファム、今回の仕事が終わって家帰ったら、恥ずかしいコスプレの刑が待ってるからな?しかも、どんどん量刑が重くなってるからな?忘れんなよ?」
「うっわ、すっごいちっちぇーにゃー」
猫耳メイドをどうするかはとりあえず置いておき、俺達は各々に割り当てられた部屋へと向かった。
当然王子を始め、うちのVIP連中の部屋は、イチゴによって完全に解析され、盗聴器等の余計なものが無い、もしくは全て破壊した事は確認されているので安心である。
今後新たに設置した場合も即座にイチゴにバレるので、アメリカのCIAだのFBIだの、後なんだっけ?CSI?NCIS?だのは諦めてほしい。
俺の部屋は、有栖と美玲柚ちゃんの部屋に挟まれた配置になっている。
王子の部屋は、1つ上の階まるごとだ。
俺の部屋と言ってはいるけれど、ファムやイチゴ、ソフィアさんも同室だ。
何故なら、このメンバーは俺が勝手に連れてきた使用人扱いなので、それぞれに態々部屋を割り当てられてはいないからだ。
とはいえ、そもそも俺に割り当てられた部屋に寝室が幾つもあるアメリカンなデカさの部屋なもんだから問題ないんだけども。
王子の部屋なんて、俺の滞在している部屋の10倍くらいの広さがあるけれど、侍女や執事だのを20人も連れてきているから、中々の人口密度らしい。
部屋の中の護衛に関しては、最初の盗聴器なんかの解析以外その方々にお願いできるから、俺としては楽。
有栖も今回は、王城から侍女が3人ほどついてきている。
本人は、自分で身の回りの事なんでもできるからいらないと最初断ったそうだけれど、それでも0は王族としてダメだって説得されて、なんとか3人認めさせた形だ。
「お化粧とかいっぱいされるので苦手なんです……」と意気消沈していたが、お姫さまなんだからその位は受け入れてくれ。
化粧しなくても問題なく美人なのはわかるが。
問題は、逆隣りの部屋なんだが……。
「…………」
「…………あー…………こっちの部屋、くる?」
「…………えっと、はい……申し訳ありません……」
「謝んなくていいよ。理由はわからんけど、まあ、何かの手違いだろうし……」
「はい……」
美玲柚ちゃんの部屋が、何故かもぬけの殻だったんだ。
アメリカからのお達しで、元々あまり多くの人数を同時に連れていく事が難しかったため、卜部侯爵が先乗りする際に使用人を複数連れて行ったと美玲柚ちゃんは聞いていたらしい。
だから、こちらに来れば使用人もいるので、それまでは美玲柚ちゃんは1人で頑張ってここまでやって来た。
なのに、自分に割り当てられた部屋には、その使用人は愚か、同じ部屋に宿泊するはずの自分の父親の姿も無い。
滞在している痕跡がそもそも無いので、今用事で外出しているという訳でもないようで……。
流石に12歳の女の子をそんな部屋に1人放置するのも気が引けるし、今来ている奇麗なドレスだって1人じゃ脱ぐのも難しいだろう。
一応今回彼女の荷物も一緒にこっちに来ているから、夜会のドレスとか、本題であるスケートに関しては問題ないけれど、世話をする担当者が0じゃあなぁ……。
という訳で、卜部侯爵家の使用人がやってくるまで、美玲柚ちゃんも俺の部屋に滞在することになったんだ。
イチゴならメイドとしてしっかり仕事できるだろうから、美玲柚ちゃんのお世話もできるだろうし……。
うん、イチゴエアの中で美玲柚ちゃんが俺の膝の上に座ってからイチゴの表情が度々抜け落ちて怖いけど、流石に手を出すことは無いだろう……多分……。
メイドならファムもいるけれど、ファムは万が一の事を考えて魔力と体力を温存してもらうために、お世話係まではさせられないんだ。
頼んでもやってくれんしな!
「仕方ない!ワシがメイド服着てやろうかのう!」
「ソフィアさんはダメです」
「何故じゃ?」
「絶対似合いすぎてヤバイので。ファッションセンターしめさばショックをアメリカで起こしたくないです」
「はぁ……美しいとは罪じゃなー!」
って言っておいたら、いつの間にかホテルの売店……売店って言って良いのか?
ブティックみたい服屋が1階にあって、そこでセクスィなドレスを手に入れ着てしまってたが……。
いやぁ、やっぱりどこの映画スターよりも美しくて目立つわ……。
「何故、パパ……お父様も、うちの使用人たちも、誰もいないんでしょうか……?」
「……さぁ、なぁ……」
場の雰囲気を明るくしようと努めてお茶らけていた俺とソフィアさんだが、12歳の女児の寂しい気持ちは無くすことができず、暗い雰囲気が部屋を包む。
ここは、猫耳メイドの出番か?なんて考えて見つめてみるも、この雰囲気に奴は奴で委縮してしまったらしく、冷や汗をかきながらも、珍しく奇麗に座って売店で売ってたマカダミアナッツチョコをパクついている。
意外と人間関係的なトラブルに弱いよなコイツ……。
「ファム」
「にゃ?」
「美味しいかソレ?」
「普通にゃ。微妙寄りの普通ニャ」
話しかけてやれば、ちょっと明るくなる辺り、やっぱり結構雰囲気を気にしているらしい。
うーむ、この雰囲気どうにかできないもんかなぁ……。
しかし!うちのAIメイドは優秀だ!俺のそんな心配だって、彼女たちにかかれば一発で解決される事が多いからな!
「ますたぁ、あのメスガキの父親と使用人たちだけど、今このホテルにいないみたぁい」
「そうなのか?じゃあ、どこにいるんだ?国防総省とか?」
「違うみたい。えっとね、これは……大統領のおうち?ホワイトハウスにいるみたい!」
「ホワイトハウスか。会議中なのかな?」
「うーん……?会議はしてないかな」
「じゃあ、会食とか?先乗りしたとはいえ日本側の代表の一人なんだし、あっちの人間とのコネクション作りで忙しそう」
「コネクション……コネクション作り……ではないかも……」
「じゃあ何なんだ?」
「これ、見てみて!」
歯切れの悪いイチゴの態度が気になっていると、イチゴがタブレットをどこかから取り出した。
キミ、今手ぶらだったよね?
何処から出したの?
疑問をスルーしつつタブレットを覗き込む。
そこに映っていたのは、大勢の男たちが、10歳そこそこに見える女の子に跪き、光悦の表情になっている映像だった。
タブレットなんて無くてもイチゴたちは空中に映像を投影できる不思議パワーがあるにもかかわらず、わざわざタブレットを取り出したって事は、美玲柚ちゃんにその力を見せたくないからだろうか?
「何この映像」
「ホワイトハウスの中のリアルタイム映像だよますたぁ!」
「……そうか……」
サラッと怖いことしている気がするが、またしてもスルーする俺。
大丈夫大丈夫!
イチゴなら証拠残さないから!
多分!
「それで、このキモイ光景がなんなんだ?」
「えっとね、この椅子に座ってるメスガキが、大統領の一人娘だった筈なの」
「へぇ」
「そして、今その娘の足元で跪きながらお世話しているおじさんが卜部侯爵とかいう人だよ!」
「へぇ……はへぇ?」
あの、今なんて言った?
「パパ!?どうして!?」
直後、俺の持つタブレットに映し出された映像を、俺の後ろから覗き込んだ美玲柚ちゃんが見てしまい、驚愕の表情で固まってしまった。
こういう時、なんて声をかけたらいいんだろうか?
コミュ障の俺には、全くわからない。
「あー、さっさと家帰って聖羅がにょきにょき育てた果物でもパクつきてぇなぁ」
「今現実逃避してたらトンデモない事にならないかニャ……?」
「だろうなぁ……だろうけども……!」
絶対これ変な力使ってるだろうし、相手したくないなぁと思いつつ、段々と「ヒックッ ヒックッ」と泣き始めてしまった美玲柚を泣き止むまで抱きしめて背中を摩ってやる事しかできない俺だった。
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