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地球の王のクイーンアソート  作者: アホイヨーソロー
アストロニカルパレード
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(6)

 晴天に歓声が飛び交い、宮殿内も一層慌ただしくなってきた。パレード当日、宮殿前広場には『王』のための特等席が用意され姫たちが自分のもとに集う。

「木星と土星の姫様は本日はお見えになられません。要はですな、天体の位置関係上一月ほど遅れるわけです。」

 カサネギさんが天体図を用いてそう説明してくれた。発音はカリスティアン、ティタニアンと言うらしい。衛生が地球と遠いときに出発したらしく、もう少し時間がかかるということだ。大一のいた時代から考えると遥かに速いスピードなのにこの世界ではそれを遅いと評するらしい。

「ハイパースペースとかワープとかはないんですか?」

 21世紀のSFでなんとか質問してみるが、やはり笑われてしまう。

「ははは、太陽系内を移動するだけでそんな空間操作されては穴だらけになってしまいますよ。」

 どこに穴が開くのか皆目見当もつかない。自分がなんとなく見聞きしていた知識が一つたりとも役に立たないのはわかっていたが悲しい。

 カサネギさんは一通り今日の段取りを説明すると別の仕事があるらしくどこかに行ってしまった。自分の後方には多数の護衛が行儀よく一列に並び、すぐ左後ろにはコノエ秘書が控えている。公の場なのでユエを役職呼びすることになっている。

 広場には自分たち『王』の関係者以外にも高そうな服を身にまとった品のいい来賓客がずらりと勢揃いしていた。誰も大一のもとに近づかないため、なにかボロが出てしまうとかごまかさなければならない状態などにはなっていない。目が合えば会釈する程度で、観衆の興味は今まさに始まろうとするパレードの方だった。

 立体映像ヴィジョンが宮殿の外側の様子を中継する。外はもっとごった返しており警備員…ではなくバリケードのようなアンドロイドが群衆の前に整列している。CB-O9と名前が判明する。例の学習機能である。このホログラム映像はパレードのスタート地点だ。テープカットは大臣、ユーイチ・ダジョウ・スリャが務める。いい加減落ち着かせてほしいものだ、と大一はため息をつく。

「いよいよ始まりますよ。」

 ユエがそう声をかけたような気がした。

 宮殿にまで響くほどのファンファーレが空を駆ける。浮足立つ人々が一斉に息を潜めた。しばしの静寂。大臣が粛々とリボンを切り裂いた。

 割れるような歓声。あまりの大きさに王の特等席まで揺らす。いや実際に地響きがしていた。声の分け目から現れた十数機に及ぶ巨大な六つ脚の輸送車。昔見た火星探査機をそのまま巨大化させたような、兵器と呼んで差し支えない威圧感を放つ、名はマカハティ。それぞれの足が独立してズシンズシンと前進してくる。笑顔でなければ侵略されてると感じてもおかしくはない。

 前後左右を厳重に守られ中央にひときわ目立つ黒鉄の輸送車の上、笑顔を振りまく女性がいた。彼女こそ火星の姫。『王』の婚約者。オープンカー、と言っていいのか、屋根を取り払われた輸送車の上で、彼女はあっちやこっちやに愛嬌を振りまいている。名を検索される前に他のところへ興味を移した。なんとなくというかやはり本人から名前を聞きたい。

 少し進んでいくと突如黒い影がマカハティを覆う。何事かとざわめくと誰かが首を天へと向けた。つられて皆空を仰ぐ。投影範囲にこれもまた巨大な飛行船が現れる。地を揺らす機械の無骨さとは対照的に、洗練されたシャープな楕円を持つ白銀の表面に黄金の縁取りがされたきらびやかな船。これも十機程度空から降下して火星の列に合流する。金星のフローティングビークル、ルー・アルシャム。みな高貴な人の乗り物には名付けをしたがるようだ。

 飛行船団の中央の席にゆったりとすわる女性。火星の姫とは違い、扇ではにかむ口元を隠しながら外界の民衆を見下ろす。しかしこれでは下の火星団の列が暗い影のままだ。

 だが、火星側も考えなしではなかった様子。鈍い鉄色だった装甲の間から色とりどりの光が放たれ再び注目を奪った。そうすると今度は金星側が空から派手な祝砲を打ち鳴らす。するとさらに火星側が…民衆は首を上下上下で軽く脳しんとう気味である。

 最後が水星の一行。ただどうしたことか、水星人の正装である薄手の衣を羽織った踊り子と鼓笛隊が火星一団の後ろをついていくだけで、大きなアピールらしいものが何もない。人々は金星と火星のすったもんだに夢中なのであった。

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