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地球の王のクイーンアソート  作者: アホイヨーソロー
アストロニカルパレード
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(5)

 やはり自由というものは難しいらしい。カサネギさんが運営に大一のわがままを確認したようだが、さすがに急には閲覧席を設けることはできない。もう少し早く言ってくれればいいのに、と現場でも文句が出ていることだろう。今日より前になど言えるわけないのだが。予定通り、宮殿の特等席で立体映像中継を観るしかないそうだ。

「ヴィジョンも素晴らしい技術です。参列者の大部分はその映像を見ながらパレードを楽しみます。」

 ユエから慰めにもならない言葉をかけられる。大一は肩を落としたが誰にも気づかれなかった。こうして短い外出時間が終わり、いくつもの門を通って宮殿へと向かう。宮殿は白い造りの平べったい建物が何段も重なっている。

(ウェディングケーキに見える…)

 建物は円を基調にしておりところどころに灯されるライトのせいで余計そう思えてくる。いやむしろ鏡餅。――めでたげなシルエットではある。

 カサネギさん含む他のお付きの方々は別の仕事があるそうでここで解散となり、昨日と同じようにユエと二人きりとなる。

「今日もこれから授業を行いますからね。」

 そういう彼女の口元には少し笑みが含まれていた。

 大一はもとの世界に帰ることをあきらめたわけではない。だが、今は何もわからない状態。どうやって帰るのかも見当がつかないし検索にも引っかからない。なすがまま、ユエ達の思惑のまま動くしかできることがなかった。

「…一つ聞いてもいいですか?」入り口前で立ち止まってユエに訊ねる。

「なんなりと。」

「本物の『王』が見つかった後、俺は元居たところに帰れるんですよね?」

 少し言葉にするのが苦しかった。だがユエは黙ってうなずく。

「ただその際は、ここでの記憶はすべて消させていただきます。」

 こんな荒唐無稽な話、元の世界に戻っても誰も信じてくれないだろうから無くてもかまわない。大一はそんな風に思った。ひとまず身の安全の保証だけはされていることがわかり、ほっと息をついた。だからユエのいつもの無表情など気にはならなかった。

 自室に戻ってからは授業授業、ひたすら授業である。自然の万物は何度も何度もループするらしい。遺伝子のメカニズムなどわからないが、なぜらせん型なのかという話をしてもらいぼんやりと理解はできた。天体も何もかも同じ。幾歳かかろうと同じ星のめぐりあわせというのが存在するというのだ。遥か未来に人類が培った知識だけが継承され何順も繰り返す。

「本物の現王と同じ遺伝子を持つ過去の人間を替え玉として連れてきた…。」

 改めて迷惑な話である。こんなことが過去に何度もあったのかと確認したが、まずもって機密情報なので教えられないと返されたことと、本件が非常にレアケースであることを告げられた。

「現王様というなら前王は…?俺の年齢ならまだ存命のはず。となると…」

 となるとさすがに肉親には気づかれてしまうだろうし、気づかれないにしてもうまく立ち振る舞えないに決まっている。

「それが今回のような事態の原因の一つです。」

 こめかみに手を当てられて情報を流し込まれる。おそらくこれが暦。16年の記事で、宇宙船舶での外遊中、事故に巻き込まれて死亡を確認されたことが報じられていた。一緒にいたお妃さまも一緒に亡くなられており、『王』の後宮たちは無事だったものの宮中の慣習として、『王』の側室はすべて出家させられている。そしてハーレムが総取り換えになることが危惧される内容が大きく記されていた。

「この世界では、『王』の崩御よりも後宮の行き先の方が重要そうですね。」

 ますます気にくわない。大一に何ができるわけではないものの、やるせなさを感じざるを得ない。

 その事件により当時15歳の王子が急きょ玉座につくことになった。

「兄弟とかはいないんですか?」

「『王』は正室を第一にします。一度お妃さまをお決めになられたらその方を愛するのが普通です。」

「愛って何なんですか…。」

 この世界の事実をインストールするたびに心に暗い影が差してくる。この記憶も最終的にはなくなるのだろうが、すでに胃が痛い。こんなのやりたくないという気持ちと、そんな過酷な彼女たちに会って話がしたいという気持ちの二つが重なって大一の胃に重くのしかかってきていた。

 この後も淡々と雑学からマナーから歴史から学問まで、急ぎ必要な部分はユエから情報を送ってもらい、口頭で話せる重要なことは対話をしながら学んでいった。

 そうして日がぐるぐると二巡する。

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