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地球の王のクイーンアソート  作者: アホイヨーソロー
アストロニカルパレード
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(4)


 アギアスパレ。『王』が住まう宇宙平和の中心地である大都市。宮殿の周りは大きな堀が築かれ、そのさらに周りに幅の広い道路が囲んでいる。窓からちらりと見えたビル群はさらにさらにその向こう側。大式典を2日後に控え、各点最終チェックをくまなく行っているところである。堀の角には高い監視塔のようなものが建てられており、そこを空に浮かぶ小型の機械が出入りしている。ユエ曰く、空からの侵入者はあれで対処が可能なそう。平和の象徴ではあるが、どうしても防衛手段は残さなければならないようだ。大一はユエと護衛を引き連れて外に来ていた。

 大一は思いの外自分の体が疲れていないことに気がついていた。ただ気疲れはそれに反比例している。朝から風呂食事勉強と怒涛の知識のギャップ埋めにてんやわんやであった。浴場も食事も自分が知っていたものとは遥かに遠い、贅の限りを尽くしたものだった。と思う。

(いまいちピンとこないんだよな…)

 食材もずいぶん品種改良が進んでいるらしく例えばニンジンは円柱で、ジャガイモは球である。あまりの味気なさに朝食は高級温野菜言われても喜んでいいのか疑問である。これから毎日これかと思うと「過去 行き方」「食べ物 凸凹」を勝手に検索してしまう。

「現王様、こちらがパレードのメインストリートでございます。」

 大一はゲンオウと呼ばれる。そのことを案内役のこの者を含め誰一人として疑うものはいない。

 乗用車が40台横並びで走ってもまだ余裕があるほどの広さ。対岸まで声は届きそうもない。式典の時はこの道の歩道を埋め尽くすほどの人が押しかけるそうだ。今その道の周りに色とりどりのリボンやら看板やらが取り付けられている。

「流石に圧巻ですね。」

「現王様のご威光のたまものかと。」

「こんなことになるんですか。お…余のために。」

 外を出る前にユエから忠告されていた。

「一人称の格はきちんとしてください、俺、ではなく、余、となります。」

 確かに異なる2つ単語が聞こえた。他にも質問を受け窮したら黙って聞き流すこと、代わりにユエが回答してくれる。不用意に話しかけないこと、まだ知らないことが多いのでボロが出やすいから。他にもいろいろ外出の注意を受けた。

「案内をする者はローシュ・ソメヤ・カサネギという男性です。私が所属する部署の者の一人なので『王』の正体は知っていますが、万が一もありますから彼の前でもきちんと現王様として振る舞ってください。」

 カサネギさんはたれ眉の老紳士だ。首元に皺が集まりしゃべる度に震えるのが見える。彼は大一の正体を知っているらしいが、そんなことを微塵も感じさせずに現王として扱ってくる。

「つまりですな、ここの道をヅイーッと絢爛豪華な姫の駕籠が通るわけです。」

 カサネギさんは手振りで教えてくれる。

「門を通り現王様の待つ宮殿前の広場までやってこられます。そこで姫様たちの労をねぎらいになり、お言葉をかけます。これで入内の儀が進むわけです。」

(あれ…でも確か…)

 まるでそのパレードの終点で初めて合うような口ぶりだが、水星の姫はすでにこの宮殿内で出会っている。大一は首を傾げた。それにもう一つ疑問がある。

「そのパレードは近くでは見られないんですか?」

「ヴィジョンを使って中継をご高覧くださいませ。」

 立体映像のことだと脳内検索が言っている。せめて楽しみを見出したいのだけれども、なかなか自由には行かない。大一は少しむくれた。

「生で見たいんですけど。」

「なんと」カサネギさんは目を丸く広げる。「式典中に御身に危険が迫るなどあってはなりませんが…。」

 うーむと唸って何かの思案をし始める。

「少し掛け合ってみましょう。」

「ソメヤ主任」

 ユエがたしなめるように手を出したが、カサネギさんは気にせず続ける。

「なにヒトミさんがきちんと教育すれば問題ないわけです。許可を得られればの話ですが。」

 カッカと笑ってカサネギさんは案内を続けた。手元のユエのものと似ている端末をいじっていた。

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