第1話 昔々、どこか遠くの物語
むかしむかし、悪い魔王が魔物をつれて、人間の国に戦争をしかけました。兵隊さんたちはがんばって戦いましたが、魔王は強くて勝てません。みんなが困っていると、ひとりの勇敢な少女がいいました。
「わたしが魔王をやっつけるよ!」
みんなは危ないと心配しました。しかし、少女はたった一人の家族であるお姉ちゃんを守るために、あきらめません。剣も魔法も練習しました。小さな少女のがんばりに勇気をもらい、いっしょに戦いたいという仲間もあらわれました。
「魔王のところに行けるような機械を作ろう!」
機械をまとった兵士は、機械の手足をガシャガシャ鳴らします。
「動物たちに安全な道を探してもらおう!」
動物好きな兵士は、友達の動物をワシャワシャとなでます。
「おそってくる魔物たちは、この剣でやっつけよう!」
剣を持った兵士は、キラリと剣をかまえます。
「けがをしてしまったら、魔法で治してあげよう!」
魔法が得意な兵士は、指先からピカピカと魔法を見せます。
「ありがとう、みんな!」
少女の強い思いが奇跡を起こします。なんと、少女は魔王をたおすことができる聖剣に選ばれた勇者でした。勇者は聖剣を持ち、仲間たちといっしょに、魔王と戦いに行きました。勇者と仲間たちは強い魔物たちをたおし、魔王のもとにやってきました。
「みんなを苦しめる悪い魔王め、覚悟しろ!」
勇者は魔王と聖剣で戦いました。魔王は魔法で防ぎますが、勇者には勝てません。聖剣には魔王をたおすための特別な力があるからです。
「こうなったら、勇者、お前も道連れだ!」
魔王は最後の力を使いました。そして、勇者も魔王も消えてしまいました。勇者の仲間たちは、勇者をすみずみまで探しましたが、どこにもいません。勇者の仲間たちは悲しみました。しかし、いつまでも悲しんでいられません。
魔王はいなくなりましたが、魔物はまだ残っています。勇者の仲間たちは、魔物をたいじしました。しかし、激しい戦いのせいで人々の暮らしは苦しいものになったのです。再び魔王が現れたら、今度こそ負けてしまうかもしれません。
だから、再び魔王が現れる前に、勇者が戻ってきてくれるように人々は神様に祈るのです。いつか勇者が戻ってきてくれると信じて、何年も、何十年も、何百年も……。今日もまだ祈っています。
『子ども向けディストピア神聖書』より
【???のメモ】
物語は人々に読み継がれてこそ、後世に残る。大衆が求めることを書いていない書物には力がない。時には醜悪な真実よりも、飾り付けられた虚偽が脚光を浴びるものだ。それは、いつの世もどこの場所でも変わらない
【作者のメモ】
・カラフルなホログラム映像付き絵本。現在は販売されていない




