第95話 エピローグ
「ここが、ダンジョン……」
「大丈夫ですよ、何があっても私が守りますから」
初めて入った、ダンジョン。
いつも見ているところではあったが、実際に入るのはやはり全然違った。珍しくて、思わず俺がキョロキョロしていると、ともに入ってくれた霊羅さんがそう声をかけてくれる。
「ああ、やっぱり姫君は麗しい」
「先輩、声、だだ漏れっすよ」
そして俺たちは二人きりじゃなかった。
装備をまとったアイカさんと凛子さんも一緒だ。
名を持たない市民階級の俺が、国の最大利権のダンジョンへと正面から入るのには、三人の探索者の推薦がいるのだ。
その推薦をしてくれたのが、アイカさんに凛子さん、そして霊羅さんだった。
三人とも手違いで俺の眷属にしてしまったのだが、幸いなことにアイカさんも凛子さんもそんなに俺への態度が変わるということはなかった。
――ということは演繹的に考えると、霊羅さんのは、これが素、なんだよな……?
疑わしいが、確かめるのも恐ろしい。
今も、何くれと俺に構ってくる霊羅さん。
「ここから先の危険は、私がすべて事前に完璧に排除しておりますから!」
今も鼻息荒く、キラキラとした笑顔でそんなことを告げてくる。
――これは、褒めてほしいのか? いや、さすがにそんな訳、ないか……
そう悩む俺の頭を、アビちゃんが覆っている。
そして軽くポンポンと頭の上で二度跳ねるアビちゃん。
霊羅さんは放置で良いと言っているのだ。
そんな気がしていた俺は素直にアビちゃんに従うことにする。
ちなみに産巣日となったドッペさんは、大きいので今日はお外でお留守番だ。
そんな訳で俺たちは、俺の神域のうち、一番地上に近いエリュシオンに向かっているところだった。
そこでは、アビちゃんとドッペさん以外の俺の眷属たちが俺を待ってくれている。
今から彼らに会えるのがとても楽しみだった。
「皆さん、今日は俺のわがままに付き合ってくれてありがとうございます」
「わがまま? 当然のお望みです。そして視線のお方のお望みは、私の人生の命題。使命。その達成こそが至上の喜び――」
「使命に燃えている姫君も、美しい……」
「ま、そんなに気張らなくていいんじゃないっすか。うちらは命の恩もあるんで、お返しにこれぐらいが、ちょうどいいっすから。って、先輩、あんまり姫君に近づかないっすよ!」
ふよんとアビちゃんも俺の頭の上で一跳ねする。
俺は思わず笑みをもらす。そしてエリュシオンへと向けて、これまではただ見ているだけだったダンジョンの中を一歩、踏み出したのだった。
Fin




