第22話 アパートで独り叫んでみました
独り暮らし用のアパートの狭い部屋。
冷蔵庫の横の壁に顔を押し付けるようにしている俺が、魂をこめて叫んだ瞬間だった。
深淵の俺の支配領域を囲む光の帯が緑色に輝く。
すると、そこへ頭から体の半分以上を突っ込んでいたクリムゾンベヒーモスが急に苦しむように悶え始める。
ここぞとばかりに、アビちゃんが苦しむクリムゾンベヒーモスの角をぐいぐいと押していく。
先ほどまで押し込まれていたのが嘘のように、アビちゃんが一気に優勢だ。
はみ出していたアビちゃんの体がすっかり支配領域の中へと戻り、逆にクリムゾンベヒーモスの体がどんどん外へ押し出されていく。
──良かった! 本当に、良かった……どうやら特性付与(弱化)で、正解だったみたいだ。うん、アビちゃんには見たところ悪い影響は無さそうだし。弱化というのは侵入してきた存在を弱らせる効果があるんだろう……えっ?
その時だった。俺が覗き込む先、クリムゾンベヒーモスの、魅了の数字が表示されている文字列が書き変わっていく。
『邪視スキル:クリムゾンベビーベヒーモスを魅了中。魅了達成率88/100』
魅了達成率の増加が、それまでとは比べ物にならないぐらい速くなる。
そして、それだけではなかった。その牛モンスターの名前が、書き変わっていた。
それと同じタイミングで、クリムゾンベヒーモスの体が、不思議なことに急速に縮んでいくように見えた。
アビちゃんよりかなり大きかったはずの牛モンスターの体。それがアビちゃんと同じくらいのサイズになり、それでも縮むのが止まらない。
そして気づけばもう、生まれたての赤ちゃん牛ぐらいの大きさになっていた。
『クリムゾンベビーベヒーモスの魅了完了。眷属として承認しますか?』
完全に支配領域から押し出されたクリムゾンベビーベヒーモスが、すとんと四つ足を折り曲げて地面へ座り込んでいる。そうしているとまるで生まれたての子牛のようだ。
アビちゃんからそのクリムゾンベビーベヒーモスの角へ伸びていた体も、すっかり離れていた。
そして再び俺の支配領域でくつろぐ様子を見せるアビちゃん。どうやらアビちゃんにも、クリムゾンベビーベヒーモスから完全に敵意が無くなったとわかるらしい。
そのクリムゾンベビーベヒーモスのつぶらな瞳が、深淵を俺が覗き込む穴を通して、こちらを覗きこんできていた。




