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覗き穴ダンジョン~自宅警備員の俺の部屋の壁にダンジョンの深淵を覗ける穴が空いた件  作者: 御手々ぽんた


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第20話 全身全霊で覗いてみました

「おーい、アビちゃんー!」


 壁のこちらから呼び掛けるも、俺の声はアビちゃんには届かないようだ。


 相変わらず、ぐでーと、寛いだ様子のアビちゃん。

 俺の支配領域だから、居心地がいいのかもしれない。


 そんな寛いでいるアビちゃんはなかなかに可愛らしくて、ほっこりとした気持ちで俺が深淵を眺めている時だった。


 何か動く影が、深淵を覗く俺の瞳に映る。

 速い。


「え、深淵竜? いや、違うっ、深淵竜より小さい。別のモンスターかっ?」


 現れたのは真っ赤な色の二本の角の生えた牛のようなモンスターだ。


 俺は慌ててそちらを鑑定スキルで見てみる。

 しかし、深淵竜が鑑定出来なかったように、そのモンスターにも鑑定スキルが反応しない。

 つまり、鑑定をキャンセル出来るだけの強敵の可能性が高い。


 そのモンスターが現れた瞬間、あれほど寛いでいたアビちゃんが、いつものようにしゃんとした形をとる。

 しかし、じっと俺の支配領域の中央に留まったままだ。


 そこへ牛モンスターが二本の角をつき出すようにして突撃をかましてくる。


 次の瞬間、アビちゃんが俺の支配領域を守るかのようにその体を変形させると、体の二ヶ所をうにょんと伸ばす。


 伸ばされたアビちゃんの体が、牛モンスターの二本の角に巻き付く。


「すごい、アビちゃんっ、あ、でも、押されてるっ?!」


 牛モンスターの角を押さえ込んだアビちゃんだったが、その体がじりじりと押し込まれていく。


 俺の支配領域の縁を取り巻く光の帯に、もう少しでアビちゃんの体がついてしまいそうだ。


 なんとなく直感的にわかる。


 アビちゃんが俺の支配領域から押し出されてしまうのは、とても不味いのだと。

 そうならないために、今、アビちゃんが必死に抵抗してくれているのだと。


 俺は焦りながら、何か自分に出来ることがないか、必死に頭を回す。


「どうする、どうするっ。声は届かないし。手元にあるのはレッサーポーションが一つと、深淵の果実。でも、俺のスキルでは物自体は、穴の向こうに渡せないし」


 そうしている間に、押し込まれたアビちゃんの体がついに支配領域の縁の光の帯に触れる。


「くっ、俺に出来るのはこうして、眺めるだけなのか──そうか、そうかっ。眺める。視線を向けれるならっ」


 俺は、唯一、アビちゃんのために可能なことがあることにようやく気がつく。


「スキル覗き魔の眼球(デバガメゴヨウタツ)っ!」


 レベル1になったことで、新たに邪視スキルを内包した覗き魔の眼球スキルを使用し、俺は牛モンスターの姿を全身全霊をこめて覗き込むのだった。



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