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炎のドラゴンとの戦い ~持つべきものは友とマントだね

 上空からマグマの雨が降り注ぐ。

「シールド」

 母がシールドで防御。

 炎のドラゴンが悠然と地上に降り立った。この世界のすべての生物の頂点に君臨する最強の存在=ドラゴン。

 ぼくたち一人ひとりの力量を見極めるように、炎のドラゴンが鋭い視線を向けてきた。

 ぼくは、ドラゴンを目の当たりにして、大きさは言うまでもないが、圧倒的な存在感、すさまじい威圧感で身がすくんだ。まるで蛇ににらまれた蛙のようだ。ドラゴンはやばすぎる。ぼくは、この世界に来てはじめて命の危険を感じた。

「びびってんじゃねえぞ。お前には俺様という、つええ味方がついてるってことを忘れるんじゃねえ」

 ぼくのくじけそうな気持ちを察したヤッケが発破をかける。

「分かってるよ、相棒」

「エクストリーム・スプリット」

穿孔(せんこう)

 シールドから飛び出したリンクス、ハウンドがパワー全開で先制攻撃するが、硬い鱗に阻まれ、剣の斬撃でも槍の鋭い突きでも、かすり傷一つ負わせることができない。

「弾けろ紅蓮の炎、烈火の如く燃えさかる炎で、我の前に立ちはだかる敵を灰燼に帰せよ。マキシマム・ファイヤー・ブラスト」

 間髪をいれずダスマンが上級火炎魔法を放つ。

 炎のドラゴンに命中した火球が爆裂したが、全然ダメージがないようだ。炎のドラゴンというだけあって火炎系の魔法には耐性があるのだろう。

「雷鳴よ(とどろ)け、雷撃よ我が敵を滅殺せよ。サンダーボルト」

 雷光が天空を走り、炎のドラゴンを直撃した。が、全く効果無し。

 ダスマンが続けざまに放った魔法攻撃も徒労におわる。

 炎のドラゴンが、大きく口を開いた。

「ドラゴン・ブレスだ。気を付けろ!」

 ヤッケが警告する。ぼくは、咄嗟にみんなの前に飛び出した。

 炎のドラゴンが吐いた強力な火炎を勇者の盾で受け止める。

「勇者の盾を所持しておったとは!」

「ドラゴンってしゃべれるんだ」

 魔獣がしゃべるのが、意外だったので思わず呟くぼく。

「ここは、ぼくに任せてみなさんはシールドの中へ」

 勇者の剣が細身の長剣に変形した。

「ほう、ドラゴンスレイヤーか。この世で我を傷つけることのできる唯一の武器。だがそれは、我に触れることができればの話。剣が届かねば、かすり傷一つつけることもかなわぬ。宝の持ち腐れということだ」

 ドラゴンがつばさを広げ、空に舞い上がった。

「身のほどをわきまえず我に挑むとは愚かしい。あの世とやらで己のふがいなさ、浅はかさを悔やむがよい。一片の骨も残さず灰燼に帰してやろう!」

 炎のドラゴンが上空に静止したまま、ぼく目掛けて口から、どろどろに溶けた真っ赤な溶岩の塊を吐きだした。盾で防ぎきれる量と大きさではない。このままでは、溶岩に飲み込まれてしまうと思ったのもつかの間。

 ぼくは灼熱の溶岩にすっぽりと包まれてしまった。

「イツキーーーーー」

「イツキどのー」

「勇者さまー」

母の悲鳴と団長たちの叫び声も、厚い溶岩の壁に遮られ聞こえなくなった。しばし暗闇と静寂に包まれた。

 この時母たちは、ぼくの死を覚悟しただろう。だが、母たちは思いもかけない光景を目にすることになった。

 溶岩が急速に冷えて、黒く固まった。見る見るうちに溶岩にひびが入って砕け落ちていく。

 母たちは、固唾(かたず)をのんでその様子を見守っていた。一抹の希望を抱いて。

 すると、ひな鳥が殻を割って卵から出てくるように、中から全身をマントにくるまれたぼくが現れた。

 そして、マントが解けて、ぼくの無事な姿を見た母たちの心境は、絶望から安堵に変わった。

 ヤッケが、ぼくの全身を包み込んで守ってくれたおかげだった。

 炎のドラゴンも意外だったようで驚きを隠せないようだ。

「まさか、我の必殺技を防ぐとは・・・」

この機に乗じて、反撃したいところだが、敵が空の上にいたんでは、剣がとどかない。コウモリのときみたいにブーメラン攻撃も、硬い鱗にはばまれて効き目がないだろうし。

「くそー。空を飛べたら・・・」

「そんなこと、わけないぜ」

「えっ、いま何て言った?」

 意外なヤッケの言葉に思わず聞き返す。

「空を飛ぶなんて簡単だって言ったんだ」

「ぼくが空を飛べるっていうの?本当に?スーパーマンみたいに?」

「スーパーマンが何か知らんが、飛べるのは本当だ」

「どうしたら飛べるの?」

「お前が空を飛んでいる姿を想像してみろ」

「空を飛んでいるすがた・・・」

 ぼくは、空を飛び、ドラゴンと戦う自分の姿をイメージした。

 すると、腰より少し上までの長さだったマントが、ふくらはぎまで伸びて、ぼくの体がふわっと空中に浮き上がった。

「うわーっ。浮いてるー」

「有頂天になってる場合じゃねえぞ」

「分かってるよ、そんなこと。でも、空を飛べるなら、はやく言ってくれればよかったのに。そうすれば、穴に落ちたときパーって飛んで出られたのに」

「あのときはなんとかなると思ったから。実際なんとかなったじゃないか」

「そうだけど」

「それにお前、あのとき俺様のこと忘れてただろう」

「・・・」

 無言で頷くぼく。

「なんと!空を飛べたとは。だが、それだけでは我には勝てんぞ」

 炎のドラゴンは、空を飛んで近づくぼくに向けて、次々に火球を飛ばしてきた。

 盾で受け止め、ダメージは受けなかったが、空中では踏ん張りがきかないので、圧で押し戻されてしまう。あくまでも剣の届く距離に近づけさせない気だ。

 火球の防御と回避に集中していたら、不意を突かれて、長いしっぽで打たれ、地面に叩き落とされてしまった。

「ドーーーン」

「いたたたた」

 音と衝撃の割に、軽い打撲程度で、たいした痛手は受けていない。

「油断してんじゃねえぞ。俺様の防御力で命に関わるような大けがを負うことはないが、いくらかダメージは受けるんだからな」

 気を取り直して、リベンジ。再び空へ舞い上がる。

 しっぽでの攻撃を避けるため、十分距離を取って向かい合う。

「これ以上我に刃向かうなら、仲間ともども(ほふ)ってくれよう」

 意味深な言葉に、ぼくは眼下の仲間に目をやる。

 エリオット王が、母を羽交い締めにして、胸元に剣を突きつけている。リンクスから剣を奪ったようだ。

「母さん!」

「無駄な抵抗はやめて、我に隷属を誓うなら命を助けてやってもよいぞ。母親が生きるも死ぬもお前次第だ」

「卑怯な・・・」

 卑劣な炎のドラゴンへの怒りと、母の身を案じる感情で、ぼくの心は激しく動揺した。

「落ち着け。やつの甘言にの乗せられるんじゃねえぞ。やつは、邪気でエリオット王を操っているんだ。心を研ぎ澄まして心眼で見てみろ」

 ぼくは、大きく深呼吸して心を落ち着かせた。そして、心眼でエリオット王を見た。

「見えた!炎のドラゴンから細くてどす黒い(ひも)のような邪気が伸び、エリオット王にまとわりついてる」

「邪気を集束し、シールドを透過させやがったんだ。聖剣で邪気の流れを断ち切れ」

 ぼくは、空中に漂う邪気の(ひも)をすぱっと切断した。

 すると、エリオット王にまとわりついていた邪気が霧消し、エリオット王は、がっくりと膝を折ってへたりこんだ。

「我の気を斬るとは、ちょこざいなやつめ」

 母の無事を確認し、ほっとしたら炎のドラゴンへの怒りが、さらに膨らんだ。

「もう、あったま来た!」

 ぼくは、怒りをこめて炎のドラゴンをきっとにらみつけた。

 ぼくの怒りに共鳴した勇者の剣が、今までにないほど光輝き、刀身に青い炎をまとった剣へと変化した。

「アルティメット・スラッシュ」

 無意識のうちに言葉を発し、身体が動いて、剣を横一文字に斬りはらう。

 剣から放たれた青い炎の(やいば)が、弓形となって炎のドラゴンめがけてまっしぐらに飛んでいく。

 炎のドラゴンは、迫り来る(やいば)をくい止めようと火球を連発する。しかし、炎の(やいば)に触れた瞬間、火球はすべて消滅してしまった。

 ついに、炎のドラゴンの耐性を遙かに凌ぐ、超高温の炎の(やいば)が、心臓(かく)もろとも炎のドラゴンを切り裂いた。

「おのれ。このままでは終わらせぬ。貴様も道連れに・・・」

「イツキ、離れろ」

ヤッケの言葉で、炎のドラゴンから離れる。

その瞬間、爆風がぼくを襲った。爆風に(あお)られて、後方へと吹き飛ばされたが、ヤッケと勇者の盾のおかげで無事で済んだ。

炎のドラゴンは、跡形もなく消し飛んだ。

「終わった・・・」

「やったぞ」

「我らの勝利だ」

「勇者様、ばんざーい」

 地上で歓声が、あがった。

 ゲームでは、ラスボス討伐でエンディング。お疲れ様でしたー。となるところだが、これで終わりにはならなかった。何事も思い通りにいかないのが世の常だね。


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