29/58
商人
その商人は現実を見ていた。名を馳せる夢を見ることがあったが、時が流れ心はすり切れていった。
そこに天使と悪魔が現れ、商人に囁いた。
天使に従えば、その懸命さが報われる時がいずれ来ることを。
悪魔に従えば、毎日がフルコースが食べられるぐらいに稼ぐことができると。
しかし、商人は二人の囁きに耳を傾けることはしなかった。何故ならば、心がすり切れていただけで、十分な稼ぎを得ていたのだから。
冒険を始めた新米冒険者に格安で武具を提供することによって。
多くは見込めないとしても、それだけ十分な稼ぎが彼にもたらせていた。
今まで支えてくれたお礼と言って、富を得たりしていたのだから。
彼はこれからも、この生き方を続いていくだろう。新米の冒険者が現れるたびにずっとーー。




