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商人

 その商人は現実を見ていた。名を馳せる夢を見ることがあったが、時が流れ心はすり切れていった。

 そこに天使と悪魔が現れ、商人に囁いた。

 天使に従えば、その懸命さが報われる時がいずれ来ることを。

 悪魔に従えば、毎日がフルコースが食べられるぐらいに稼ぐことができると。

 しかし、商人は二人の囁きに耳を傾けることはしなかった。何故ならば、心がすり切れていただけで、十分な稼ぎを得ていたのだから。

 冒険を始めた新米冒険者に格安で武具を提供することによって。

 多くは見込めないとしても、それだけ十分な稼ぎが彼にもたらせていた。

 今まで支えてくれたお礼と言って、富を得たりしていたのだから。

 彼はこれからも、この生き方を続いていくだろう。新米の冒険者が現れるたびにずっとーー。

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