第六章 セカイノコタエ
「なにがあったの?」
朱音は不審そうな顔で見ていた。
「読むぞ」
「うん」
「君たちは、よく自らの願いに抗い、ここまでたどりついた
よってこの世界から脱出する方法を教えてしんぜよう、
そこの機械を使いたまえ、さすれば一瞬で元の世界へと戻ることができるであろう
ただし、使用できるのは一人のみ
もう一度、はないから、よく考えて使うように
もっとも自己中心的な君たちでは、その選択は難しいだろうけどなあ!
と書いてある。
そして最後に一文
“願い”は“祈り”とともに世界を渡り、革新をおよぼす・・・と」
「たった・・・一人・・・」
「どうする?」
俺は朱音に尋ねた
「私は・・・生きたい!・・・でも・・」
「でも?」
「君がいない世界なんて考えられないよ!」
そういうと朱音はハッとした表情をして、顔を伏せていた
「・・・あと二日あるし、しばらくここで過ごそう」
「うん・・・」
そしてここで一日を終えることにした
----翌朝
俺たちは会話を交わすことはなく、何も話さなかった
よくある質問で
“もし明日世界が滅ぶとしたら何をしたい?”
ってのがあるけれどまさか、自分がそれを実際に経験することになるとはと思い
クスリと笑ってしまった
そして俺は決めた
明日生き残るのは朱音であると。
そんなことをよもや自分が考えるとはと少し驚きが隠せなかった
他人のことなどどうでもよく、自分のことだけを考えていた、この俺が。
今は、はっきりと思う、彼女には生きていてもらいたいんだと
なぜかはわからないが、ココロの奥底からそう感じていた。
そして終末の日はやってきた
「朱音、起きてるか?」
「うん・・・」
まだその終わりの時は来ていないなと俺は思っていた
突然、大きな地震が起きた
ゴゴゴゴゴゴゴッッッッ
と大きな地鳴りも轟いていた
「ここはまずい!とりあえず、機械のところへ行くぞ!朱音!」
「う、うん!わかった!」
あの機械がこの地震で壊れちまったら、救える命も救えなくなっちまう・・・!!!
そう思いながら、俺は本気で走った、全力で
「朱音、この機械にはお前が入って、そして元の世界へ戻ってくれ!」
「嫌だよ!!元の世界に戻っても、君はいないじゃないか!!」
「俺は、君が生きて幸せに暮らしてくれれば、それでいいんだ・・・!!」
「絶対に嫌だ!!!! 君がいないと幸せになんかなれないよ・・・」
「俺を、困らせないでくれ・・・!」
「朱音・・・ゴメンな・・・」
そういうと俺は朱音の腹を思いっきり殴り、気絶させると
機械のポッドの中へと入れた
「朱音・・・サヨナラ・・・好きだったぜ・・・」
俺は、転送ボタンを押した
~朱音~
私はポッドの中で目が覚めた
一瞬自分がどこにいるのかすらわからなかった
流れ行く景色を見つめ私は驚愕した
文字通り、空が堕ち、水は枯れ、崩れるように世界が崩壊していた
そして思った
「彼は?彼はどうしたの?」
そして思い出した
彼に腹をおもいっきり殴られ気絶していたことを・・・
腹がキリキリと痛む、が私の心はもっと辛かった
「どうして!!どうして!君は残ったの!!!!」
私は泣いた
「止まってよ!!!!!!ポッド!!!ねえ!彼のとこに戻してよ!!!!」
しかしポッドは無慈悲にも止まることはなかった
そして、気が付くとそこは、元の世界の見慣れた山の中であった
ポッドの残骸もそこにあった
そして私はそれを拾い
心から“祈った”彼の生還を
そして、もう一度会えることを・・・




