第8話:PDCAって言ってみたかっただけですけど、ちゃんとやってます
「よし、始めようか。第1回カリキュラム実行試験会!」
小さな屋敷の裏庭にて、俺は宣言した。
前日までに書き殴った“ぐにゃぐにゃカリキュラム”をそれぞれに手渡し、今日から本格的に育成フェーズに突入だ。
PDCA?もちろん意識してる。
なんの略かはあやふやだけど、かっこいいから使ってる。
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【ジル編:体幹強化訓練】
「リオン様、俺、走ります!……って、重ッ!?何この砂袋!?」
「10kgある。友情の重みだ。」
「友情重ッ!!」
ジルは俺を背負って庭を走った。よく転ぶ。
でもすぐ立ち上がる。やっぱスペックが違う。
たぶんこのままゴーレムを素手で倒せるくらいには育つ。問題なし、Plan通り。
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【サーシャ編:集中訓練】
「この石を、魔法触媒だと思って握ってくれ」
「きれい……これ、あたしの……?」
「うん、さっき拾ったやつだけどな!」
サーシャは石に夢中で、1時間座って動かなかった。集中力バケモン。
合間に鳥の鳴きまねを求めたら「チュン……チュン……(リアル)」と妙に哀愁漂う再現度。
芸術枠か?要再検討。
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【レオン編:疾風特訓】
「レオン、俺の“おやつ”を30秒以内に厨房から取ってこい!」
「うす!」
結果、18秒。しかも正確にバタークッキーを3枚持ってきた。そこまでは完璧だったが……
「リオン様!台所が大変なことに!」
「なぜ冷蔵庫ごと開けっ放し!?」
スピードはある。が、周囲への配慮がゼロ。
D(Do)はOK、C(Check)で赤点。要教育。
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【ミナ編:根性カリキュラム】
「ミナ、今日は転んでも泣かないで立ち上がる訓練だ!」
「まかせて!」
……結果、数分で20回転倒。
「ひざ、青くなってるけど……大丈夫か……?」
「ふっふーん!へーき!」
あかん、泣きそうになったの俺だった。
愛おしさと心配で胃がキュウキュウする。
カリキュラム内容、ややマイルド化を検討。
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【ダント編:副官訓練】
「ダント、これはなんの書類?」
「昨日、リオン様が“書いたふり”をした偽帳簿です。」
「わぁバラすの早い!」
「正直が美徳だとリオン様が言ってました。」
うむ。素直でよろしい。しかし書類作成の観察力、冷静な分析力、あとたまに出る皮肉。
こいつ……逸材だな。
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全てがうまくいったわけじゃない。
厨房が焦げた。
レオンが怒られた。
ミナのスカートは泥だらけになった。
俺も2回転んで1回泣いた。
だが、成長の匂いがあった。
俺は、みんなの前で宣言した。
「問題点はいくつかある。だが!次に活かせば、すべては経験だ!」
「「おおーっ!!」」
お小遣いだけは忘れずに渡した。教育のモチベは報酬と実感。これは基本だ。
リオン・フォン・エルトレード、2歳11ヶ月。小さなPDCAを回して、みんなで大きく回ってる晩冬の出来事である。
つづく。




