第6話:努力してる風を装えば、カリスマって呼ばれるらしい
「いいか諸君、上に立つ者は誰よりも努力しているように見えなければならない!」
朝の中庭、俺は高らかに宣言した。
目前には直属部下(戦争孤児)たち5人が整列している。
その顔には若干の不安と若干の期待、あとちょっと「眠い」が混じっている。
俺は、というと、ジャージ風の動きやすい服装にタオルを首にかけ、水筒もばっちり準備。
あとはいかに「がんばってる風」を演出するかが勝負だ。
「まずは準備運動!せーの、いーち、にー、さん、しー……って、ぜえぜえ、ちょっと休憩していい?」
「早ッ!?」
「まだ四回しか数えてない!」
「いや、これが上に立つ者の戦略的ペース配分というやつでね……。」
俺は木陰に退避しながら、部下たちの動きをチェックする。
目的はただ一つ――
「誰が“化ける素材”か、見極める!」
実際に動かしてみれば、見えてくる。
ジルは体幹が異様に強い。片足ジャンプでもブレない。
サーシャは驚異的な集中力で、動きの再現性が高い。
レオンはスピード特化型で、気づけば3人分の距離を走ってる。
ミナは……転んだあとすぐ立ち上がって、また転んで、また立ち上がって……不屈の根性枠だな。
ダントはというと、ひたすら周囲の動きを観察していて、妙に冷静。
これは後衛参謀型……俺に似てる。危険だ、同じタイプは後でバチバチになるやつだ。
「なるほど……それぞれ適性が違うのか……。」
「リオン様!?いつの間にか立って指揮を!?かっこいい!!」
「やっぱ俺たちの隊長だ!」
「さっきまで転んでたのに!」
「わざとだよ。計算だよ、もちろん。」
演出は成功。ポンコツムーブが逆に“地に足がついてる感”を生み出している。なにこれ偶然のカリスマ?
「よし、じゃあ今日はここまで!個別の訓練メニューは明日から作成する!解散っ!」
「「うおおおおおお!」」
どこで覚えたのか、全員バンザイで去っていった。
あいつら元気すぎない?俺、指先がもう痛いんだけど?
木陰に戻る俺。隣に立っていたリリアさんがにっこり笑って言う。
「リオン様、ものすごく“がんばってる風”が出てましたよ?」
「わかってたんだね……。」
「ええ。でも、見てましたよ。皆、ちゃんとあなたを信じてついていってます。」
……なるほど、そういうものか。無様でも、ポンコツでも、誰よりも“やろうとしてる”姿勢が、誰かの心を動かすこともあるのか。
よし、明日も全力で“努力してる風”を出してやるぜ。
リオン・フォン・エルトレード、2歳半。カリスマとは、演出力であることを悟った初冬の出来事である。
つづく。




