第5話:拾って育てて雇って、自分の戦力にするだけの簡単なお仕事です
「戦争孤児が入ってくるらしいぞ。」
屋敷の食卓で、父がぽろりとそう言った。
どうやら北のほうで小規模な戦争があり、親を失った子供たちが数名、難民として受け入れられるという。
養育費は国が一部持つものの、実質は引き取った家の責任。
扱いは労働者、もしくは、使用人見習いだ。
ふむ。
「……良くない?育てるチャンスじゃん。」
食事中にも関わらず、俺の脳内ではカチカチと計算が始まっていた。
この国、貴族の子供はまだまだ“上級国民”だけど、それに甘えてはいけない。
俺に魔力も才能もないなら、人材投資こそが将来を左右する。
育てる相手の素材?問題ない。雑草は肥料次第で化けるのだ。
そして――
「この子たちが、戦争で家も家族も失った子たちです。名前は……。」
リビングに並ぶのは、年齢バラバラ、服も靴もバラバラ、目つきもバラッバラなちびっ子たち。
5人。全員、何かを失った目をしている。
でも、まだ炎は消えてない。この火種を育てるのが、俺の役目だ。
「……リオン様、なにその笑み?」
「いや?俺の直属の部下が今ここに現れたなって思っただけで?」
「え?」
翌日。
俺はちびっ子5人を中庭に呼び出した。
「よろしい、君たちは今日から“俺付き”である。仕事は簡単!俺を護る、俺の代わりに走る、俺の代わりにメモを取る、俺の代わりに怒られる……そして!週に一度、お小遣いをもらう!」
「おこづかい!?」
5人の目が輝いた。
「条件は一つ。自分で強くなろうと努力すること。俺が一番偉いことは忘れるな。でも、お前らが強くなれば、俺も生き残れる。つまり、ウィンウィンってやつだ!」
「むずかしいけど、なんかすごい!」
「かしこい!」「おまえ、ほんとうに1歳か?」
「2歳だ!!」
最年長は7歳、最年少で俺と同い年くらいの4歳児。
バランスも性格もバラバラ。でもそこがいい。多様性は強みだ。
「で、名前なんだっけ?」
「俺はジル!」
「わたし、サーシャ……。」
「ボクはレオン!」「ミナ」「ダント!」
覚えた。全員戦争孤児、でも今日から俺の直属部下である。
後日、父と母に「リオンが孤児を全員スカウトして直属部隊とか名乗ってるけど?」と報告がいったらしい。
「まぁ、リオンのことだから」と苦笑いで許可された。
「……親がデカすぎると、やりたい放題できて怖いな……。」
リオン・フォン・エルトレード、2歳。自分付き直属部隊の初任給を“屋敷の経費”から引き出した初秋の出来事である。
つづく。




