第45話:教えは終わりではない。次は、“動かす”ための知を――リオン式MARK Ⅱ始動
アーグラ、暁の儀式。
王国による支援のもと、旧政府が解体され――
《自由学び共和国・アーグラ》が、新たに誕生した。
その憲法第一条は、こう刻まれていた。
《すべての国民は、学ぶ権利を有し、それを妨げるいかなる権力も否定される》
そして、その起草者のひとりとして、ひそかに名が記されていた。
リオン・フォン・エルトレード。
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王国では、祝賀と共に、新たな問いが浮上していた。
「……学び終えた後、どうするのか?」
読み、書き、考える力を手に入れた人々。
だがその先には、“仕事”が、“産業”が、“生きる技術”が必要だった。
リオンは、その問いに応えるように発表した。
《リオン式 MARK Ⅱ プロジェクト》
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それは、“教える”から“動かす”への進化。
基礎教育から実践支援への変換だった。
第一段階は、農業。
王国育成庁農技班と協力し、《簡易型田植え支援機》が開発される。
・木製フレーム+金属部品+手押し魔石動力
・組み立て式、教材とセット販売
・初心者でも“一週間で稼働可能”な構造
使いながら“学べる”、学びながら“作れる”――新しい農具だった。
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次に、魔術分野。
リオン式卒業生が魔導技術庁と連携し、《標準魔道書量産プロジェクト》が始動。
・“魔法文字の統一記号化”
・“発動構文の階層分類”
・“使用用途ごとのカスタム仕様”
こうして、“魔導技術”は知識階層の特権ではなく、庶民の“技術”へと変わっていった。
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リオンは静かに語った。
「教育は、“自転車の補助輪”だよ。」
「必要なのは、“こけないで走り出せる力”。それがついたなら、補助輪は外す。」
「MARK Ⅱは、走り出した人が、“どこまででも進めるように”するための装備だ。」
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アーグラでは、学び終えた若者たちが、工房を、農地を、研究所を開いていた。
王国でも、“教育から起業”への流れが生まれはじめていた。
子供たちは“働く大人”を見て憧れ、大人たちは“学んだ自分”で社会に還元していった。
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リオン・フォン・エルトレード、6歳。
“リオン式”は一時代を終え――
“リオン式 MARK Ⅱ”という、次の世界を開いた。
それは“育てる”から“動かす”へ。
知が、生きる力として燃え上がる――産業の夜明けだった。
つづく。




