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クロの物語  作者: 大和
第二部:Black Feather:
40/45

~Before the chapter2~

 歩き疲れた…そんな気持ちだった。

 幼い頃から常に、前に前に。

 歩き続けてきた。



 同学年の子達が校庭で遊んでいた時間、彼女はダンスのトレーニングをしていた。  

 友人たちが修学旅行に行っている時に、彼女はそれとは別の所で歌を歌っていた。

 バレンタインデー、クリスマス…。世が色めき立つ日に、彼女は仕事をしていた。

 

 

 年不相応…と一言で言えばそれまでだが、そんな簡単な話ではない。

 

「…え?今日も遊べないの?」

「つまんないのー…」


 

 結果として彼女は、たくさんの時間を犠牲にしてきた。

 ただそれは彼女自身の望む所であり、目指す夢にとって必要な特訓(レッスン)であった。


「あの子、修学旅行にまで来てないの…?」

「○○君可哀想だよねー。せっかく今日こそ告白するって意気込んでたのに…」



 その夢は叶えられた。

 そう、彼女は―


「あの子、義理チョコすら渡さないのかなー?」

「時間ないって言ってたしねー。何よりあの子は―」



 ―アイドルだった。




 少女は暗闇で、一人物思いにふける。

 すらっとした手足と、高めの身長が大人っぽさを感じさせるが、対照的に髪を左右の耳の上でまとめた、いわゆるツインテ―ルが可愛らしい。

 顔立ちの良さも含めて、男性に人気の出そうなルックスである。


 しかし、その表情は浮かない。

 目は虚ろで、床にしゃがみ込んだまま、どこか宙を見つめている。

 何か辛いことでも重なったのか、その様子は尋常でない。


「愛瑠、晩御飯出来たからおいで」

 ドアの向こうからそんな声が聞こえた。

 声の主はこの状態が分かっているのか、ドアを開けず外で返事を待つ。

 少し間をあけて、愛瑠と呼ばれたその少女は、

「分かった…」

 とだけ、返事をした。



 彼女の名は園川愛瑠。

 全国放送のテレビにも出演したことのある、有名アイドルユニットの一人。

 

 そう、まさに彼女はアイドル『だった』。 




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