第3話 接続
── 繋がっている。だが、まだ開いていない。
呼ばれたわけではない。
だが、
無視できるものでもない。
報告は短い。
「観測値に揺れあり」
それだけ。
補足はない。
断定には足りない。
だが、
放置もできない。
イレーネは向かう。
森の奥へ。
さらに内側へ。
整えられていない領域。
風は不規則だ。
流れきらない。
止まりきらない。
複数の方向が、
同時に存在している。
重なっている。
揃わないまま、
続いている。
踏み入れた瞬間、
それを受ける。
均されていない。
だが、
崩れてもいない。
その状態が、
そのままある。
進む。
迷いはない。
方向は、
身体が決める。
やがて、
空間が開ける。
木々が途切れる。
密度が変わる。
地面が露出する。
踏みしめる感触が、
一段変わる。
中心に、
泉。
水面は静止している。
遅れて、
静止している。
視線が、
わずかに遅れる。
見ているものと、
届くものが重ならない。
揺れない。
風も触れない。
干渉しない。
完全な静止。
それが、
そのままある。
イレーネは立つ。
距離を取る。
踏み込まない。
触れない。
ただ、
見る。
水面は滑らかだ。
歪みはない。
だが、
何も映さない。
空も、
木も、
映らない。
そこにあるだけだ。
切り離されている。
だが、
離れていない。
「……」
言葉は出ない。
そのとき。
背後に気配。
発生ではない。
そこにあるものが、
認識される。
振り返らない。
だが、
分かる。
同じ位置。
同じ距離。
完全には重ならない。
わずかにずれている。
イレーネは視線を動かす。
泉から外す。
その先。
人がいる。
立っている。
前と同じ姿勢。
同じ向き。
違うのは、
位置だけ。
「……任務か」
相手は、
わずかに間を置く。
「監視」
遅れて届く。
短い。
それだけ。
イレーネは視線を戻す。
泉へ。
言葉が残る。
消えない。
固定される。
「変化は」
同じように間がある。
「現時点ではなし」
遅れて返る。
揃わない。
その差だけが残る。
イレーネは見る。
拾う。
だが、
触れない。
選ばない。
泉は静かだ。
動かない。
相手も動かない。
変わらない。
三つが並ぶ。
重ならない。
だが、
崩れない。
風が揺れる。
外は動く。
水は動かない。
その差が、
そのまま残る。
広がらない。
消えない。
イレーネは動かない。
位置を変えない。
まだ、
何も始まっていない。
だが、
切れていない。
繋がっている。
――すでに、こちら側にある。
触れてはいない。
だが、
境は越えている。
開いてはいない。
それでも、
続いている。




