【2話】「湊にはバレたくない!」
翌日の昼休み。
私は自分の席でお弁当を広げながら、昨日の出来事を思い出していた。
——パチンで机が勝手に閉じたこと。
——パチンでカーテンが揺れたこと。
そして、それを湊に見られたこと。
「……はぁ」
思わずため息がこぼれる。
「なんでため息?」
いきなり耳元で声がして、私は心臓が飛び出しそうになった。
横を見ると、当の湊がこちらを見下ろしている。
「な、なに?」
「いや、昨日のこと。まだ言わないの?」
「……昨日のことって何?」
「しらばっくれる気か」
湊は椅子を引いて、私の机に肘をついた。
「机もカーテンも、お前がやったんだろ?」
「ち、ちがうもん!」
「嘘つくとき、目そらすクセ、直せよな」
「うっ……」
幼なじみ、恐るべし。子どもの頃から全部見抜かれてきた。
「まあ、今は追及しないけど」
「……本当に?」
「うん。ただ——」
湊は少し顔を近づけて、耳元でささやく。
「その秘密、俺が一番最初に知ってたいからな」
……なにそれ。心臓に悪い。
⸻
放課後。私は親友のかえでを捕まえ、購買の横でことの顛末を話した。
ポニーテールを揺らしながら、かえでは満面の笑みを浮かべる。
「やっば! それ、めちゃくちゃ面白いじゃん!」
「いや、面白くないから! 怖いから!」
「でもさ、動画撮ってバズらせようよ!」
「絶対イヤ!」
そんなやりとりをしていると、背後から低い声。
「やっぱお前か」
振り返ると——湊。
その目は、まるで「確信しました」と言わんばかり。
「昨日の机もカーテンも、お前だろ?」
「ち、ちがう!」
「目そらしてる」
ギクリ。
すると、かえでが「青春キタコレ!」とニヤニヤしている。やめて。
「……まあいいや」
湊はそう言って背を向けた——が、
「でも、いつか聞くからな」
その言葉だけ残して去っていった。
「……私、どうしたらいいの」
「いいじゃん、青春イベントだよ!」
かえでは嬉しそうだが、私はもう不安しかなかった。




