表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/21

【1話】「しょーもない魔法のはじまり」

はじめまして。私の名前は桐生ひかり、高校二年生。

 身長は平均より少し低めで、鏡を見るたびに「あと3センチ欲しいな」と思う。栗色のショートボブは朝起きると寝癖でぴょんぴょん跳ねるし、色白なせいで日焼け対策は必須。小柄なわりに指は細く長くて、それだけはちょっと自慢だ。


 趣味はスマホゲームと昼寝——と、最近始めた“指パッチンの練習”。

 別にカッコつけたいわけじゃない。なんとなくできたら楽しいかな、って思っただけ。

 でも、その“なんとなく”が、私の高校生活をとんでもない方向にぶっ飛ばすなんて、このときは夢にも思ってなかった…



 放課後の教室は、妙に静かだった。

 カーテン越しの西日が机の上をオレンジ色に染めている。私は椅子に腰かけ、手元に集中する。


「パチンッ……あ、やっぱ鳴らない」


 力を入れすぎてもダメだし、緩めてもダメ。

 こう、親指の腹を……えいっ!


 ——パチン!


 乾いた音が響いた瞬間——。

 ガタンッ!

 机の上の教科書が、勝手に閉じた。


「……えっ?」


 私、触ってない。

 風もない。なのに。


「……偶然……だよね?」


 でも、試したくなるのが人間の性。


「もう一回……」


 ——パチン!

 バサッ!


 今度は窓のカーテンが一斉に揺れた。

 ……窓、閉まってるよね!?


「ちょ、ちょっと待って。なにこれ……」


 背筋に冷たい汗が流れる。

 まさか、私……魔法とか——


「お前、何やってんの?」


 突然背後から声がして、心臓が飛び出しそうになった。


「わあああっ!?」


 振り返ると、黒髪短髪の長身男子——高瀬湊が立っていた。

 幼なじみで、席も隣。部活帰りらしく、ジャージ姿にタオルを肩にかけている。


「な、なに!? いきなり入ってこないでよ!」

「普通に入っただけだし……てか今、何かした?」

「な、なんにもしてない!」

「嘘だろ。今、カーテン揺れたぞ」


 うわ、完全に見られてる。


「べ、別に私のせいじゃないし!」

「ふーん。……まあいいけど」


 湊はそれ以上追及しなかったけど、その目は「俺にはバレてる」って言ってるみたいだ。


「な、なによ……」

「いや、特に。……なんか、お前らしいなって」


 は? どういう意味?

 問い詰める前に、湊は教室を出ていった。


 残された私は、机の前で固まったまま。


「……え、なにこれ。私、魔法でも出せるようになったの?」


 自分の指を見つめる。

 パチン、と鳴らしたときの感覚が、指先に残っている。


「……いやいやいや、あるわけないって」


 そう言い聞かせても、胸の鼓動は早まるばかり。


 私の普通の高校生活が、今日からちょっとだけおかしくなりそうな予感がした——。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ