表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/256

前略、宴会と悲鳴と

 その夜は宴会だった。

 遺跡の踏破と、隠れ住んでいた呪術師を捕まえたことを祝いって、酒場側が冒険者を集めて開いてくれたのだ。


「よう嬢ちゃん!あんたがリーダーか?とりあえず食いな!」


「ありがとう!知らない人!いただきまーす!」

 

 別にリーダーではないけど、依頼人のラルム君がそういったらしい。少し照れる。

 漫画でしか見たことのない骨付きの肉にかぶりつく。うん!美味しい!


 酒場を見渡す。今日、一緒に死線を乗り越えた仲間たちも、あちこちで楽しんでるみたい。


「それでさ!そこでギュンて飛んで、あたしの弾にさ!」


 リッカは他の冒険者たちに、今日のことを興奮気味に語っている。

 遺跡で見せた弱気な表情はもうどこにもない。


「えぇ……大変興味深い遺跡でした」


 ラルム君は魔術師仲間?同じようにローブを着た人たちと静かに飲み交わしてる。

 呪術師を縛ったあと遺跡の文字をゆっくりと読んでいた、なにか前に進めたらいいな。


 孤高なる暗黒騎士は……ここにはいない。あの後すぐに、子供たちの待つ場所へ帰ってしまった。

 寂しいけど寂しくない、だってまた会うって約束したからね。


「なにをふけっているんですか」


 この声、もはや安心感すらある。

 振り返ると、リリアンが皿一杯の料理と共にそこにいた。

 相変わらず、よく食べる。


「ちょっとね。出会いと別れについて」


 寂しい気持ちに気づかれないように、笑顔で。

 仕方ない、みんな冒険者だ。それぞれ欲しいものや、やりたいことがあって旅をしている、だから。


「寂しいなんて勝手だよね」


 本当はもうちょっと、みんなで冒険したい。

 でもあたしの独りよがりで誰かの足枷になってはいけない、やっぱり明日は前にしかないのだ。


「別にいいじゃないですか」


「え……」


 あまりに予想外の反応に驚く、てっきり厳しい言葉が飛んでくるものだと……


「仲良くなった人と分かれるのが寂しい、当たり前です。人は孤独に生きれるようにできてません」


 隣に座り、リリアンは言葉を紡ぐ。


「私たちは冒険者です。自分だけの冒険がしたくて世界を回ります、出会いも別れも日常茶飯事です」


 いつになく喋るリリアン。そして、と前置いて。


「その2つは矛盾しません。別れの度に寂しいと思ってもいいじゃないですか」


 あたしに顔を向けず、でも料理にも手をつけず、リリアンは続ける。


「だって、また会えるんですから。自分なりの道を歩き続ければ、明日は前にしかないんでしょう?」


 そうだ……そうだね!

 リリアンがそのの言葉を言うのは……なんだか照れくさい。それでも。


「ありがとう、リリアン。元気でたよ」


 あまり表情は変わらないけどなんだか満足げな声で、なによりです。優しくて温かい言葉だった。


「それと3つほど質問が」


「ん?なにかな?」


 3つもあるのか、でも励ましてもらったし、答えられる事なら答えよう。


「諦めない、諦めない。なにがあなたを、そこまでさせるのですか?」


 あぁ、それか……悪いけど、それに関しては話すつもりはない。

 昔の事は、元の世界の話は、あたしの人格形成に深く関わっているけど、ネオスティアに、その話しを持ち込むつもりはない。

 嘘をついてもバレるだろうから、言えないということを伝える。

 

「だからさ、主人公になりたいからってことで、納得してくれないかな?」


 もちろん、これも嘘じゃない。これまでの冒険があって本当にそう思う。

 やっぱり納得いかなそうだけど、諦めたように次の質問に移ってくれた。


「では2つ目、あれはなんですか?」


 んん?質問の意図がわからない。あれ、とは?


「あの『〜〜なら、あたしが〜〜』というセリフですよ。ノノさんにもいってましたよね?私は言われてませんよ」


 そりゃ言う機会がないからね。

 あれか、やっぱり聞いていた。ノノちゃんに勇気を、リッカやラルム君に夢を。


「深い意味はないよ、勢いで喋ってるからね」


 まぁ、昔に誰かの何かになろうと思った、そのように生きようと思った。それだけだ。


「そうですか。では最後の質問です」


 まだ納得のいってないようなリリアンは、あたしの腕を固めて……腕を固めて?


「ラルムさんにメイド服を着せようとしてましたね?こんなに完璧なメイドが近くにいるのに」


 ギリギリと腕に圧がかかる。これ、折れちゃわない?


「最高のメイドはリリアン様です。と言うまで離しません」


 ま、まずい……!リリアンは本気だ……!そういうところだぞ!!

 さっきまでの雰囲気はどこへやら、高まる圧に冷や汗が……!


「て、訂正する気はないよ!」


 こっちも折れる気はない!まだいける!

 あたしは諦めない!


「少し強めに締めましょう」


 ぎゃあぁぁぁぁぁああああっ!!!!!


 ガヤガヤと活気の溢れる宴会で、あたしの悲鳴は騒ぎの中に紛れていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ