↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
28/256

前略、出会いと別れと

「うぅ……酷い目にあった……」


「自業自得です」


 次の朝、昨日の事を思い出し愚痴るあたしに、その原因であるリリアンが厳しい言葉を。

 結局、昨日はリリアンに締め落とされてあまり楽しめなかった。

 

 まぁでも、あの騒動の中心にいて、みんなが労ってくれた。

 それだけでも、思い出に残る出来事だったと言えるだろう。


「次の目的地は『テンカ』です」


「あれ?次は港町って言わなかった?」


 昨日までは、そこから船に乗り、『青の領地』を目指すとリリアンは言っていた。


「あなたは、剣をそのままにしていくつもりですか?」


 なるほど、リリアンは折れた大剣のことを言ってくれてるみたい。

 確かに石像との戦いで折れてしまったあたしの大剣は、何度装備変更をしても戻ることはなかった。


「『テンカ』に行けば直せるの?」


「はい、あそこには鍛冶師がいますから」


 なるほど、壊れた武器は鍛冶師に。

 ネオスティアのルールらしい。


 しかし『テンカ』か、ルート的に行けないと思ってたけど、これならギンとの約束も果たせそうだ。


 聞けば鍛冶師は存在自体が珍しく、特定の街にしかいないらしい。当然ここ『ラックベル』にもいない。

 冒険者の街なのに、そのことが、鍛冶師がどれだけ希少な存在かを語っている。


「どんな街なのかなぁ」


「私も行ったことがないので詳しくはないですが、最近はいい噂を聞きませんね」


 ありゃ、それは怖いね。あの気のいいギン達がいる街だし、勘違いであってほしいけど……


「そろそろ出発?」


 その予定ですが、リリアンは宿の外を指して。


「まだ、お別れを済ませてないのでは?」


 別れが辛いから、面を向かってさよならするのはやめておこうと思ってた。

 あたしの頭に昨日のリリアンの言葉がよぎる。


「ありがとう、ちょっと行ってくるよ!」


 はい、静かに答えて、リリアンはあたしを見送ってくれた。


「待って!二人とも!」


「セツナ?」「セツナさん?」


 やっと追いついた、2人も出発するみたい。


「2人はどうするの?」


「あたしは他の街とか周ろうかなって、やりたいこと探したいし!」


 笑顔のリッカ。その笑顔に迷いはなかった。


「僕は学園に戻ります、皆さんのおかげで、『召喚術』の研究も進みそうです」


 ラルム君も、もう諦めるなんて言葉を連想できないくらい、晴れ晴れとした表情だった。


 答えはわかってる、でも聞かずにはいられない。

 だって人は孤独に生きれるようにできてない。

 寂しいと思ってもいいから。


「ねぇ、これから少し遠回りして『青の領地』まで行くんだけどさ。一緒に行かない?お別れは寂しいよ」


 もっと一緒にいたい、あの死線をくぐり抜けた仲間だ。

 あたしの言葉に、2人は顔を見合わせて、少し笑って。


「ありがと、セツナ!でもあたしは1人で行くよ。自分のやりたいこと、夢を見つけて、セツナみたいにそれを応援してあげたいからね!」


「僕も1人で行きます。もう諦められた学問なんて言いません、僕が言わせません。1人でいても1人で夢を追うわけじゃないですから」


 だよね、わかってた。


「そして、セツナさんみたいな主人公になりたいですから」


「主人公……そうだね、あたしにとってもセツナは主人公かも!」


 嬉しい言葉だ、なら次に合う時までにもっと格好良い主人公であろう。

 強くて、諦めない、格好良い主人公に。

 それから3人で少し話し込む、決まってしまった別れを惜しむように。


「ほら、リリアンちゃんが待ってるよ?」


 リッカの言葉に振り向けば、少し離れたところでリリアンが立っていた。

 ……うん、わかったよ。


「それじゃあ2人とも!またね!」


「またね!」「それではまた」


 背を向け、走り出す。寂しいけど寂しくない。それでもちょっと寂しくて。

 それを知られたくなかったから、少しだけ走る速度を上げることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。