LOG.69|どいつもこいつも|Traitor, never come back.
ミカとホテルで
イチャイチャするつもりが、
いつの間にか
2人で爆睡してしまっていた。
俺たちは、慌ててホテルを出た。
帰りの車内でも、
ミカは
少しだけウトウトしていた。
俺は気を利かせて、
ほとんど話しかけなかった。
そして、
ミカを
コインパーキングまで送り届けた。
シン
「ミカ、着いたよ」
ミカ
「ん…ふぁぁ」
「ありがと」
「ごめん、また寝ちゃった」
シン
「なぁミカ」
「あのさ……」
「我慢したから、次も会えるよね?」
すっかりミカをコントロールしたんだ。
どーせ会ってくれるはずだ。
ミカ
「え?」
「無理」
「会えないよ?」
喉が詰まった。
シン
「え?」
ミカ
【クソ野郎】
【最低】
どこで間違えたんだ?
前にも、
全く同じ捨て方をされた気がする。
変な夢でも見てたのか…?
変な夢を思い出して、動悸がしてきた。
心臓が、鳴いている。
そんな俺を無視して
降りる準備を淡々とするミカ。
ミカ
「よいしょ」
「あれ?」
「ピアスどこやったっけ、」
シン
「ね、ねぇ!ミカ!」
「なんで!?」
「なんで会えないの!?」
「だって俺、ガマンしたじゃん!」
「今度こそ…!」
「捨てないでくれ!」
ミカは笑う。
ミカ
「…あのさぁ」
「彼氏いるって言ったでしょ?」
「我慢できなかったら会わない。」
「って言っただけで、」
「我慢したら会ってあげる。」
「なんて一言も言ってないよ?」
「で、今度こそって何?」
「目を覚ましなよ」
一瞬、唇が優しく触れる。
ミカ
「ふふ…目が覚めた?」
「可哀想に…」
「ミカが離れるの不安なんだね?」
嬉しそうな、ミカ。
ミカ史上、
1番嬉しそうに見えた。
シン
「ミカ、やっと、」
「やっと、会え、」
ミカ
「可哀想ね、わんちゃん」
「今度こそ、サヨナラだよ」
身に覚えがある。
俺は確実に何回か捨てられている。
そして今回も…失敗。
ってことか?
両手で俺の頬を包むミカ。
ミカは息を荒くして、
かなり興奮しながら、
淡々と喋りだした。
ミカ
「ぜーったい忘れないでね?」
「ミカのキスも、ハグも、セックスも。」
「他の女と会うたびに思い出して?」
「ミカを、一生トラウマにして?」
「でもミカはすぐ忘れるからね?」
「アンタのこと明日には忘れてる」
人の心を壊すのが
何よりも快感そうな表情だった。
そしてまた、
ほんの一瞬、唇が触れる。
ミカ
「じゃ、元気でね。」
絶望してる俺の頭を撫で、
ひょいっと車から降り、
満足そうに てててっと帰るミカ。
その姿は、
愛おしくて、残酷、だった。
俺は…
1時間ほどパーキングにいた。
動けなかった。
ミカ
【…シン】
【ミカは傍にいるからね】
【何があっても…】
ありがとな、ミカ。
帰らなきゃ。
チクショー。
最高に気分悪いぜ。
誰でもいいから愚痴りたい…。
…リュウト呼ぶか。
ピリリリリリリ
ピリリリリリリ
…出ろよ!!
あのバカ、
またゲームやってやがるな。
ったく。
クソニートが。
リュウトも電話にでないことだし、
…恐る恐る、
スマホで
ミカの連絡関係を確認してみたら、
本当に、ミカは俺を切った。
番号は着拒。
LINEは消去。
個人SNSは全て繋がらない。
マスターに聞こうかと、
一瞬よぎったが、
関係を隠していたし、
ストーカー扱いされる未来が
手に取るように見えたから、
何も言えなかった。
俺はアイコスをくわえ、
大きくため息と共に煙を吐いた。
ふと、
車内から
フォレストの看板を眺めた。
フォレストの看板を見ると、
鼓動が一気に早くなる。
ミカの首を絞めた感触が、
鮮明に よみがえる。
手がミカの喉元を求めて、
握力が こもる。
ミカの、首を、絞めたい。
早く、また会いたい。
ーーー
家についた。
部屋の光景を見て、
心臓が止まりそうになった。
散々荒らされていた。
空き巣かと思ったが、
部屋の真ん中に手紙があった。
リュウトの字だった。
『マジでごめん』
『前の職場で借りた金返してない』
『ちょっともらう』
『全部おわったら帰るね』
リュウトのスマホも置きっぱだった。
帰って…くるな!!
ふざけんな…!!
ドカァン!
俺はつい、壁に穴を開けた。
拳から血が流れる。
冷たく、つたっているのを感じる。
200万相当の
腕時計やらネックレスやら
封筒に貯金してた現金やら…
根こそぎ持っていきやがった。
ぜってぇ許さねぇ。
と…思ったが。
通報するエネルギーすら、
俺にはもう残ってなかったし、
なにより、
もうリュウトと関わりたくなかった。
チクショー。
なんで…
俺ばっかり…!
”最高の人生”のはずが…!
なんで…!
荒らされた部屋が
滲んで見えなくなっていく。
部屋の音も遠くなり、
聞こえなくなっていく。
もう嫌だ。
やり直したい。
全部、やり直したい。
人を憎んだ数より、
人を幸せにした数がほんの少し多い。
そんな人生で、いいんだ。
それこそ”最高の人生”なんだ。
進むために、やり直す。
何度だってやり直す。
必ず幸せになってやる。




