LOG.55|ほら、帰っておいで?|I promised Mika…
デス君の出所は5年後。
だから俺は、
5年後に街へ戻り、復讐する。
本来はそれを
実行するか否か迷っていた。
でも……
もうすっかり
そんな気持ちは無かった。
つまり、迷ってもない。
普通に、ダルい。
しなくても困らない。
別に、生きていけるし。
ーーー
てか、ぶっちゃけ…
帰る場所もない。
元の街へも帰れない。
地元へも帰れない。
実家なんて、存在しない。
どこにも居場所は、無い。
サヤカさんも…
きっとキャバクラを辞めてるし
今更会ってもな…と。
2号機、3号機も
当然連絡はとれない。
スマホが割られて、
番号が消されちまったのもあるが、
自然消滅で平和だし…
別れ方は
こんなもんでいいのかもな。
何より、リュウト。
何回か、お見舞いに行ったが
毎日行けたわけじゃなかった。
俺も新しい環境で
あまりにも忙しかったので
お見舞いの間隔は
次第に落ちてしまっていた。
すると…
突然、いなくなっていた。
目は…覚ましてなかった。
まさか…とは思ったが、
俺には聞く勇気もなかった。
確か…2年くらい前に、
警察が来て
色々と聞かれた気がする。
正直……
何を聞かれたかは覚えてない。
で…
病室が無くなっていた時点で、
俺は黙って病院を出て、
その後は何も調べていない。
答えを看護師に聞くのが、
怖くて怖くて仕方なかったんだ。
…まぁ、
ニートだから、
多分、どっかで遊んでんだろ。
リュウトのヤツめ、
相変わらずバカだな。
どこで遊んでんだか…。
そう、思う、ことに、した。
…だから俺は、
変わらず、
現場で陰口を叩かれ、
ほぼ廃墟の1Kの部屋に住み、
静かに、独り、暮らす。
その選択をした。
別に間違ってないと思う。
誰にも迷惑かけてない。
でも、
独りになっちゃダメな気がする。
誰かと、
そんな約束をした覚えがある。
独りになっちゃダメ。って。
何かあったら、帰ってこい。って。
誰だっけ?
親じゃないけど、
親のようで、
恋人じゃないけど、
恋人のようで、
俺の全てを包んでくれる。
俺が、
こんなくだらない世の中で、
唯一、見つけた、生きる意味。
黒い、宝石。
そんな人、だった気がする。
ーーー
…でもな?
神様なんて、いねーんだよ。
だって…
もし神様がいたら、
こんなことになってねぇだろ?
もし、
いたらきっと…
あはは!
なに、暗くなってんのよ!
ほら、わんって言って?
わんちゃん、頑張ったね。
ちゃんと、可愛がってあげるから。
ちゃんと、助けてあげるから。
全部、直してあげるから。
全部、アタシのせいにしていいから。
ほら、帰っておいで?
…なんて言うに違いない。
…で!
見た目は
フィリピンハーフで
目がツンッと上がっていて
女スパイみたいな美人で…!
性格は
ナルシで自己中で
歪んでいて甘えん坊!
いつも助けてくれる!
俺をダメにしてくれる!
そしたら…!
俺のほうも…職業変えて…!
街の皆に…
もっと身近に…
必要とされる職業…
そうだな…
整骨院とか、医者とかさ…!
住宅街で……
地域密着型でさ……!
うんうん…!
良さそう…!
幸せっぽい…!
多分…
この条件なら…
…あれ?
さっきまで現場にいたのに…
気づかぬうちに白い部屋にいた。
天井も床も、何もかも白い。
なんとなく…
ほんの少しだけ見覚えがある気がする。
何か大事なことを思い出しそうな…
そんな気が…
少し歩くと、何か見つけた。
…廃墟か?
随分年期が入った建物が並んでるなぁ…。
池もあるが…ゴミが浮いている。
汚ねえな…。
いて!
何か蹴っ飛ばした…!
…パソコン!?
なんなんだ、この部屋…。
どっから出るんだ…。
いや…出なくていいか。
なんか、妙に落ち着くし。
実家のような安心感というか…。
パキッ
何かの音がした。
一気に緊張して、血液が駆け巡る。
…オッケー。
やってやる。
人か…獣か…
なかなかのサイズの音だったな…
念の為、
近くにあった錆びた釣竿を掴む。
襲ってきたらぶん殴ってやる…。
よしリュウトには、この武器を…
あ、リュウトいねーんだった。
…まぁ俺だけでもイケるだろ。
タッタッタッタッ
後ろだ!
よっしゃ釣竿で、ぶん殴っ、
ガバッ
ミカ
「おかえり~!」
せ、背中に…!
謎の美女が…!
俺の背中に美女が乗ってきた!
サヤカさんより綺麗だぞコイツ…!
ミカ
「おそいよぉ~!」
「ずぅ~っと!」
「待ってたんだからね!」
シン
「そうか」
「とりあえず降りてくれ」
美女を優しくほどいた。
俺は美人には優しいんだ。
シン
「お前、死ぬほど可愛いな」
「どこの店のキャバ嬢だ?」
ミカ
「ミカはキャバ嬢じゃなぁい!」
シン
「ミカ?」
ミカ
「そうだよ!」
「忘れてたんでしょ!」
「でも忘れてた間、現実で頑張ったね!」
「わんちゃん、偉い偉い!」
コイツ…
フィリピンハーフで
目がツンッと上がっていて
女スパイみたいな…美人だ。
まさしく、黒い、宝石。
シン
「…そうか、お前か。」
「俺はお前と、約束をした」
「…多分。」
ミカ
「お!ちゃんと覚えてる?」
ドヤ顔で俺を指さすミカ。
顔可愛すぎて意味わかんねーなコイツ。
ミカ
「独りになっちゃダメ!」
「そう約束したんだよ?」
独りに…なっちゃダメ。
そうだ。そうだよな。
ミカ
「もう、帰っておいで?」
「ずっと遊ぼうよ?」
「今何がしたいの?」
「ミカに教えて?」
シン
「…分からない」
ミカ
「何が分からないの?」
「今までは満ち溢れてたじゃない!」
「デケェ家!デケェ車!」
「シャンパン!本指名!」
「逆らうヤツは、ぶっ飛ばす!」
「みたいなさ!」
一生懸命、手を広げて話すミカ。
ずっと可愛い。
ドタイプ過ぎて、気が狂いそうだ。
シン
「…そうだな」
「らしくなかったかもな」
「まだ、復活できる…のか?」
「俺はまだ、間に合うのか?」
ミカ
「うん!間に合うよ!」
「でも…復活して元気になったら…」
「また行っちゃうんでしょ?」
「また独りかぁ…暇だなぁ…」
心が痛くなった。
こんな廃墟で、
ツルとかコケが生えまくった場所で、
ずっと俺を、待っててくれたんだ。
シン
「…ごめ、」
ミカ
「でもね!」
「ミカは嬉しいよ!」
「わんちゃんが現実を頑張ってるとさ!」
「安心してるよ!」
「だから行ってきな!」
「次は、どうするの?」
シン
「…そうか。」
「…うーん」
「どうすっかな…」
「医者とか整骨院とか…かな」
「身近な人から沢山感謝されたい」
「もう、私利私欲は十分堪能した。」
「カルマの精算をする」
「俺は、まだやれる」
「俺の人生は、”最高の人生”なんだ。」
「いや、厳密には…」
「今度こそ、”最高の人生”にしてみせる。」
ミカ
「お?」
シン
「こんなとこで終わってられねぇ」
「次こそ完壁にこなしてやる」
ミカ
「おぉ…うんうん!」
「なんか…オスの顔になったね。」
「ここに来る前はふにゃふにゃだったのに。」
「そっちのほうがカッコイイよ!」
ゆっくり俺の両頬を撫でるミカ。
ミカ
「ミカは何があっても味方だよ」
「わんちゃん、頑張ってね」
「次はミカも会いにいくね?」
「やっぱり独りじゃダメだったでしよ?」
すっごい母性に溢れた顔…!
…口説きてぇ!!
シン
「ああ、次は一緒にきてくれ」
「”最高の人生”になるまで横にいてくれ!」
「でさ、お前彼氏い、」
ガバッ
ミカが優しくキスをした。
舌が絡む。
脳みそに電流が走った。
ミカ
「ふふ…」
「エッロいでしょ?」
シン
「ミカ、マジで惚れた。」
「俺ずっとここにいる!」
「俺と結婚し、」
ドン
ザパーン!
胸を押されて、池に落とされた。
すると池の中に強い流れがあって、
全然陸に上がらせてくれない。
溺れ死にそうだ。
ザババババ
ポンッ!
流れに飲まれるまま、
俺は池から滝に繋がり、
滝の上から飛び出した。
標高何メートルあるか分からない。
地面が近づいてくる…!




