↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不倫の神様  作者: 天狗
PR
5/69

LOG.5|美人に生まれた|Oyster









港に着いた瞬間、


潮の匂いと、

魚の焼ける香りが混ざった、

独特の海の空気が広がっていた。




車から降りて、

海風を浴びた瞬間、

ミカの髪がひと筋だけ光って揺れた。




初めての場所なのに、


風景のほうが、

ミカに合わせて後ろへ下がっていく。





ミカは

まるでこの港の

主役みたいにそこに馴染んだ。






ミカが来てから、

港の稼働が、

一気に止まった感覚があった。







最初の牡蠣の屋台で、






屋台のおっちゃん

「お嬢ちゃん、美人だなぁ!」

「今1番 いい牡蠣サービスだ!」






ミカ

「え〜!ありがと〜♡」

「よかった〜!美人に生まれて♡」








隣の店でも、





魚屋のおっちゃん

「可愛いねぇ!ほれ!サービス!」






ミカ

「わ〜い♡そうなんです~!」

「アタシ可愛いんです〜!」







おっちゃん達、鼻の下デロデロ。


ミカは歩くだけで、

物価を下げる女だった。






でも…そんなミカ様も、


牡蠣を食った瞬間だけ、

子供みたいに無邪気になった。






ミカ

「やば……うまっ……!」





目がキラキラだ。


それにしても…


この、

ミカって名前の生き物は…


何故こんなに、

愛おしく作られたのか…。




ミカ、

永遠に俺ん家で、

牡蠣食ってていいよ。


俺が働くから…!






なんて思っていると…







ミカ

「ん!」




1匹くれるミカ。




シン

「いらん、凄くキモイ」

「俺、牡蠣食えない」





ミカ

「ん~!?」




牡蠣を口に入れたまま、

驚いたリアクションするミカ。





ごくん






ミカ

「ぷは!美味しい~!」

「こんなに美味しいのに~!?」

「もったいなぁ~い!」

「じゃ全部食べちゃおーっと!」

「ふーんだ!」




…いちいち可愛いな。




なんだか、

とっても楽しそうなミカ様。





楽しそうなミカを見るのが、嬉しい。






ミカ

「よし、次はあっち!」








ミカは俺の袖を

ちょこんと掴みつつ歩く。



港のざわざわが次々と、

ミカの背景になっていった。








ーーー









牡蠣も食べ終わって、

屋台をいくつか回り、

俺たちは車に戻ろうと歩き出した。







シン

「よし、ぼちぼち帰るかぁ~」








その時だった。











ミカ

「……やだ。」












シン

「え?」








ミカ

「帰りたくない…」

「シン、海行きたい。」

「海が見たい。」

「今日、まだ終わりたくない。」








港の、

ざわざわした空気の中で、


まっすぐ、届く、響く、声だった。








ささやくような、

小さい声のはずなのに、

港の音が遠くなった気がした。











子供がデパートで、

親の袖を掴むみたいに、

小さく俺の腕を引く。







ミカ

「ねぇ、海行こ?」







下を向いて、

口を尖らせるミカ。






ミカ

「近くで波の音聞きたい。」

「……お願い。」










その言い方があまりに自然で、

わがままというより、


本音が溢れた瞬間、に聞こえた。









シン

「……分かったよ。行こう。」








ミカ

「やった…!」

「海だ、海だ!」





ミカは

子供みたいに小さく跳ねた。






……ったく。


調子いいヤツだ。








そうして俺たちは、

港から少し離れた海へ向かった。







そして俺は海で、

ミカの本心と向き合うことになる。





この日の海は、

ただの青じゃなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。