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「どこいったんだか……」
りとに頼まれて探しているが、一向に見つからない。
冗談抜きで探し始めてから既に一時間は経過しているぞ……。
でも、あの感じを見るに、二人で話し合って私を動かそうとしているわけではないだろうなあ、と。
「はぁ……」
「お家でもそう」とか言っていたあの子はどこにいったのか。
運動不足で疲れて、公園のベンチに座って休もうとしたら「偶然」と変なことに。
「あんたねえ……せめてりとに言ってから出ていきなさいよ」
そうすれば勉強大好き君のあんな顔を見なくて済んだのに。
あれは気になる、だからこうして出て探していたのだ。
「どうしてもイベントに参加したくて起きたらすぐに出た」
「今日まで知らなかったの?」
「ん、ゆっくりしている場合ではなかった」
それならせめて「連絡しなさいよ」とぶつけたら「スマホ忘れた」と自由なもこだった。
「ま、無事ならよかったわ、早くりとに顔を見せて――くっついてどうしたのよ?」
「途中からゆまと過ごせばよかったと思った」
急に消えたと思ったら急にそんなことを……。
多分、参加できていなかったらそのことに意識を持っていかれていただろうから考えるだけ無駄だ。
「あとはみこにこうされていたから」
「みこは正面からだったけどね」
「……正面からは恥ずかしい」
え、どうした。
もこなら正面から抱きしめて「ゆまは僕の」と言うところだろう。
一旦、やめさせて額に手を当ててみても、
「あんたは体温が高いからこれはあくまで普通の範囲ね」
風邪ではないと分かった。
でも、ただそれだけでいまのもこにとっては違うのか顔を赤くして必死に私から見られないように? していて……。
簡単に言うと私はその可愛さに負けて正面から抱きしめていた。
「……本当は私だってこういうことをしたかったのよ」
「……なんで我慢してた?」
「そりゃ、りよやみこから取り上げちゃいけないと思ったから……でも、結局それはただ逃げていただけでしかないの」
って、勢いでなにしてんだ私は……。
恥ずかしくなってそのまま持ち上げて隈部家へ。
探すために出ているのはりともそうだから見つかったことと家にいることを連絡。
「もこ!」
「お兄ちゃんごめん」
すぐに謝れるのは偉い……と褒めるのは甘いだろうか?
「いや、無事ならいいんだ……はいいけど、なんでそんなに顔が赤いの? 風邪?」
「ゆまに告白された」
「おお!」
ま、間違ってもいないか。
また改めて変な感じで前に進めようとするよりは楽だ。
「なんだ、それがしたくて外にいたんだね?」
「違う、イベントに参加してた」
「そ、そうなんだ――とにかく、りよさんにもお礼を言っておかないと」
そういえばそうだった、が、りよには家で待ってもらっていたからまだマシか。
呼び出すために家に戻ると「こんにちは」といつの間にかみこも増えていた。
「どこか嬉しそうですね、隈部さんから告白でもされたんですか?」
「もこを見つけることができたからよ。それと告白の方はされたというか……した? のかもしれない」
「なんですかその曖昧な感じは……」
私だって流石にあれで終わらせるつもりはないぞ。
「まあ、ということは関係が変わったんですよね? おめでとうございます」
「うん、ありがとう」
何故か壁に張り付いていたりよも連れて再度隈部家へ。
今度はりよがもこを持ち上げてから「お家なら私の」と言い出した。
これだけで判断すればもこを独占したいように見える。
「お家でも僕の」
「私は……別に先輩とは外で話せればいいです」
「僕も同じかな、少しだけでも相手をしてもらえればそれで十分だよ」
本当かよとツッコまれてしまうかもしれないが、私だって本当なら家とか外とかで普通に話せるだけでよかった。
なのになにかが間違ってこうなっている。
やべーやつなのにいいのか……? ということがまた気になり始める。
「そういうのはいい」
「また分かったの?」
「ん、だけどここだとりよが興奮しそうだから言わない」
「そっか、それならあんたを信じてそのまま甘えるわ」
ま、まあ、もこもたまにやべーやつになるときがあるから気にしすぎるだけ無駄か。
人間ならどこかにそんな一面があると片付けてしまえばいい。
「んー少しお腹が空いたからなにか作ろうかな」
「「それならお手伝いします」」
「ありがとう、それなら一緒にやろうか」
これは空気を読まれているのか……?
いやでも、マジであのままで終わりにはできないから言うか。
「もこのことが好きよ」
「知ってる」
「はは、そうなのね」
反応は……これも気にしない方がいいだろう。
ちゃんとできた、ならそれでいい。
「別に僕はゆまが僕のものになればしっかりとした告白かどうかはどうでもよかった」
「で、でも、大事じゃない? こういうことをしっかりしておけばこれからも――」
「それは今後の僕達次第だから」
そうだとしても……ここで大人な発言をされても困るのだ。
「そもそも、我慢してたことが間違い」
「や、私が我慢していなかったら頻繁に抱きしめられたり、頭を撫でられたり、ベタベタ触れられていたかもしれないのよ?」
「僕はゆまが好きなんだから大歓迎」
「好きでも限度というものがあるでしょ?」
「どうせゆまは触ろうとしても少ししか触れない」
いやだからそれも抑えているだけだって。
欲望全開でいたらすぐに嫌われ、去られてしまう。
好きでも「流石にこれ以上は……」となるはずなのだ。
それに、前々から「あ、この子私が好きだわ」となっていたわけでもないしね。
「これからもちゃんと口にしていかないと駄目ですよ、そうでもなければ先輩は分かってくれません」
うん、勝手に分かった気にはなりたくないからちゃんと言ってほしい。
「みこもね」
「な、なんですか急に……」
「最初から僕になんか興味なかったのにあくまでそのつもりでいようとしたから」
「べ、別に先輩になんて興味ありませんから!」
きたー!
これよこれっ、みこはこうでなくては駄目なのだ!
「私としてはその方が助かりますね、そうすればお家では私のものに……」
「ゆまは物じゃない」
「もこさんが言うのはおかしいです!」
んーりよはいつもの感じが好きかな。
妹と言うよりもそっちもやはり後輩の子という感じで。
「できたよ」
「お疲れ様」
「はは、ゆまさんもね」
りとはもこが見つかってしまえばこんなものだ。
いつでも一定で一緒にいて疲れない。
「このお皿は僕のもの」
「そ、それならこのお皿は私のです!」
「落ち着いて、それにちゃんとみんなの分、お皿に分けてあるからね」
「食べましょう」
いい匂いだ。
もこのことを口にする際「なにか食べさせておけばなんとかなる」という考えでいたものの、こう美味しそうな食べ物が目の前にあれば自然とこうなるということが分かった。
つまり、このときばかりはみんな変わらないわけで、珍しく差がないことに嬉しさを感じながら食べさせてもらったのだった。




