やっと出会えた
もしかしたら人違いである可能性もある。なんて考えていた。
けれども本人を前にしたら、その思いも吹き飛ぶ。
間違いない。ルドルフの母キャロライン本人だ。
彼女はこの世の不幸を一身に背負ったような顔でやってきた。
けれども私達を見て驚く。
相手が男性でなく、女性だったからだろう。
名前はサラ・バーンズ――偽名だった。
ここの支配人らしき男性が、先ほど案内役の男性から聞いた情報を告げてくれた。
「あなたがあちらのお方の亡くなった母君にそっくりだそうで」
「まあ、そうだったの」
それを聞いて腑に落ちたようだ。
共に奥の部屋へと進む。
そこは大きな寝台があるばかりのシンプルな部屋。
想定していた通り、マッサージをするための空間とは思えない。
「こちらの部屋は防音となっておりますので、どうかお好きにお寛ぎください」
そう言って、支配人らしき男性はいなくなる。
他人が言う防音は信用ならないので、壁に手を突いてジェムに合図を出す。
するとジェムは壁に張り付いて薄く伸び、壁、天井、床に薄い膜を張った。
ジェム特製の、完全防音ルームの完成である。
船に潜入するさい、できるかどうか聞いたら、できるというので何度か練習していたのだ。
ヴィルにジェムの防音魔法を展開したことを、視線で告げた。
するとこくりと頷く。
キャロラインは私達に協力してくれるだろうか。
それとも、完全にツィルド伯爵側の人間なのか。
その辺も探る必要がある。
キャロラインは私達に紅茶を淹れてくれた。
ほかほか湯気が上がる紅茶を、鑑定魔法で確認する。
睡眠薬入り、と表示されていた。
ヴィルも鑑定魔法が付与された指輪で確認したようで、互いに示し合う。
睡眠薬入りの紅茶で何をするつもりなのか。
相手を眠らせて、やり過ごそうと考えているのか。
目的がまったくわからない。
ヴィルが紅茶を飲む振りをすると、キャロラインは安堵するような表情を見せていた。
ひとまず、探りを入れよう。
ヴィルから話を聞く振りをして、キャロラインに質問を投げかける。
「あまりにもお嬢様の母君にそっくりだそうで、驚いていらっしゃるようです。その、出身をお聞きしても」
「……ラウライフよ」
「はて、初めて聞く地名ですねえ」
「北の果てにある、何もなくつまらない田舎町だから」
何もなく、つまらなくて悪かったわね!!
と言いたくなるも、ぐっと堪える。
行き先のないルドルフとキャロラインを受け入れた父が聞いたら、さぞかしがっかりするだろう。
「あなた方はどちらの出身?」
「わたくし共は、ルームーン国から来ました」
それを聞いたキャロラインは、目を極限まで見開いた。




