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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
七部・四章 新たな任務

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船上パーティーへ

 夜はフォーマル・ナイトと呼ばれる、格式が高いパーティーが開催されるようだ。

 怪しい人物がいないか探るために、私達も参加するという。

 ヴィルが用意し、レヴィアタン侯爵夫人が寸法直しをしてくれたドレスを纏う。

 ドレスを着るのは、レヴィアタン侯爵夫人が手伝ってくれた。

 以前も降誕祭の晩餐会に参加するときなど、こうして手伝ってもらったような記憶があるものの、上位貴族の奥方にこのようなことをさせて申し訳なくなる。


「こんなことまでしていただき、その、感謝します」

「ふふ、お気になさらず。昔、こういうのを毎日していたわ~って懐かしく思っていたところでしてよ」


 レヴィアタン侯爵夫人は王妃殿下の元お針子である。

 ドレスを着せることなんてお手の物なのだろうが……。


「実を言えば、娘にこうしてドレスを着せることを夢見ていましたの」

「そうだったのですか?」

「ええ。娘は無理でも、息子達のお嫁さんにドレスを着せたかったのだけれど、いつまで経っても結婚しなくて」


 双子という存在は二人だけの世界があるらしく、もしかしたら結婚するときは同時かもしれない、なんてレヴィアタン侯爵夫人は話していた。


「二人が同じ女性を好きにならないといいのですが」

「ですね」


 今日、私にドレスを着せることができて、大満足だと話していた。


「こういうのは、誰もさせてくれないから」


 一度、侍女に下げ渡したドレスを着る手伝いをさせてくれないか、と頼んだことがあったらしい。


「きっぱりお断りされてしまって」


 私が侍女の立場だったら、同じようにご遠慮していただろう。

 今回もそうしたかったのだが、ドレスのボタンが背後にあるタイプのものだったので、一人では着られなかったのだ。

 ジェムに頼めばなんとか着ることもできるだろうが、あの子は気まぐれなので期待してはいけない。

 今も、窓に張り付いて真っ暗になった海を眺めているように見える。

 一応、パーティーに行くか聞いてみた。


「ジェム、これから船上パーティーに参加するけれど、一緒に行く?」


 振り向いたものの、再度窓に張り付く。

 どうやら参加するつもりはないらしい。


「疲れたのかもしれませんわ」

「そうかもしれません」


 慣れない船旅だが、三日間頑張ってほしい。

 化粧を施し、髪を結ってもらう。

 パーティーに挑む貴族令嬢の完成だ。


 そうこうしている間に、ヴィルとレヴィアタン侯爵が迎えにやってきた。

 二人とも、燕尾服姿がビシッと決まっている。


「ルシー、行こうか」

「はい」


 ヴィルが差しだした手に、指先をそっと重ねる。

 パーティーへ挑むこととなった。


 船上パーティーは船内でもっとも広いと言われている、ダンスフロアで開催される。

 すでに参加者が集まっていて、楽団がワルツの曲を演奏していた。


 悪目立ちしないよう、一曲踊るという。

 心臓をバクバクさせながら、円舞に加わった。

 ヴィルのエスコートが上手いからか、思いのほか上手く踊れる。

 ただ、くるくる回転し続けるので、目が回りそうだった。

 普段よりもくらくらするのは、ヴィルがかっこいいから――なわけない。

 おそらく船上だから、感覚がずれているのだろう。

 しばらく何も食べないほうがいい。そんなことを考えている間に、ワルツの演奏が終わった。

 続いての曲はテンポが速い〝ヴィニーズ・ワルツ〟だという。これ以上踊ったら立っていられなくなりそうなので、ヴィルと共に壁際に移動することとなった。


「あの、あちらにいる方々は?」


 見目麗しい男性陣が、ずらりと壁際に並んでいた。

 それを品定めするかのように、集まる人だかりもできている。


「あれは〝アンバサダー・ホスト〟と言って、ダンスの相手をする男性陣だ」

「そんな役割を持つ人達がいるのですね」


 アンバサダー・ホストがいるので、一人で参加しても楽しめるという。

 さまざまなサービスがあるものだ、としみじみ思ってしまった。


 

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