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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
七部・四章 新たな任務

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お買い物を!

 テーブルには三日間のスケジュールが書かれてある紙が置かれていた。


「出港までまだ三時間くらいあるようですね」

「乗客は千人くらいいるそうなので、それくらいかかるのでしょうね」


 乗船人数は合計で二千人ほど。乗客と同じくらいの乗員がいるそうだ。


「一等室が二十名、二等室が二百名、残りが三等室ですって」

「一等室はそんなに少ないんですね」

「そのようですわね」


 出航までまだまだ時間がありそうだ。


「でしたら、先にお買い物に行きますか?」

「いいですわね!」


 案内を見たら、すでに営業を開始しているらしい。

 すぐにヴィルやレヴィアタン侯爵に言いに行くと、ついてきてくれるという。


「もう調査しようとしていたとは、仕事熱心だな」

「ははは、まあ、はあ」


 レヴィアタン侯爵に褒められてしまったので、思わずレヴィアタン侯爵夫人と顔を見合わせる。

 パジャマパーティーのお菓子を買いに行くのが目的だなんて、言えるわけもなかった。

 ちなみに、ヘルシャフト号で出店しているのは、ごくごくまっとうな商会らしい。

 富豪相手に商売できるまたとない機会だと思うのだが、どうしてなのか。

 理由について、ヴィルが教えてくれた。


「すべてを悪で染めると、逆に怪しまれてしまうからな」

「なるほど、そういうわけだったのですね」


 そんなわけで、商店で売っている品については、そこまで警戒は必要ないという。


「しかし、もしもということがあるゆえ、皆の者も慎重にするように」


 レヴィアタン侯爵の注意を受けつつ、商店が並ぶフロアへ転移したのだった。

 商店といっても、前世で言うフェリーの売店のようなイメージを浮かべていたのだがとんでもない。

 なんだかいい香りがする通路に、ラグジュアリーなお店がたくさん並んでいた。

 ドレスに宝飾品、靴に帽子など、高級品を扱うお店ばかりである。

 その中で、ショコラトリーを発見した。


「ハンナ、あのお店でチョコレートを売っているようです。買いましょう!」

「ルシー様、承知しました!」


 まるでオアシスを発見したようだと思っていたが――。

 宝石のように美しく作られたチョコレート、一粒につき銀貨一枚。

 思わず「ヒイ!!」と悲鳴を上げそうになるも、寸前で呑み込む。 


「いらっしゃいませ!」


 ヴィルもチョコレートに興味があるのか、身を乗り出して見つめていた。


「ご試食なさいますか?」


 そう言って、ショーケースから銀貨一枚で販売しているトリュフをそのまま私へ差しだしてくる。

 またしても「ヒイ!!」と悲鳴をあげそうになる。

 銀貨一枚のチョコレートをほいほい試食で差しだすなんて。

 他の人が食べるかもしれんと振り向いたが、レヴィアタン侯爵夫妻は遠巻きに見ていた。

 ヴィルは私に食べるように言ってくる。

 遠慮なくいただくとしよう。

 震える手で受け取って頬張った。

 信じがたいくらいおいしいチョコレートだった。

 もうこれで満足なのだが、試食しておいて何も買わないというわけにはいかないのだろう。


「ルシー、どうだった?」


 ヴィルがチョコレートのように甘い声で聞いてくる。

 ただでさえ口の中が甘ったるいのに、ヴィルまで甘いなんて。


「はい、おいしゅうございました」

「そうか。ならば、すべて二粒ずつ買いたい。包んでくれ」

「ありがとうございます!」


 ショーケースのチョコレートは二十種類くらいあるだろうか。

 それを、レヴィアタン侯爵夫人の分と合わせて二粒ずつ買ってくれるなんて。


「一等室のラウンジに魔法で届けておいてほしい」

「承知いたしました」


 そんなサービスがあるとは。なんて便利なのか、と改めて思ってしまった。

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